道連れ(一)
夕焼けの鮮やかな赤だった空から徐々に夜の闇が顔を出し、一番星が我先にと自己主張を始めている。
同じように街灯にも光が灯る街の中をゆっくりと足を進めながら、今現在自宅になっている骨董品店を目指す。
今日一日であまりにも色々な事が起こり過ぎたので、頭の中での整理が全く追い付いていない。
まず、康介君がバイトを辞めていて、一君を助けたのが百瀬さんで、その百瀬さんはこれから絵を描く旅に出る。これだけの事が本当に一日で起こって良いのだろうか。例えるなら朝昼晩と三食ステーキが出て来るくらいの衝撃だ。食べてもいないのに心なしか胃がムカムカして来た気がする。これもきっと吃驚し過ぎたせいだろう。
店の前までやって来ると中から明かりが漏れている事に驚く。
いつもならば、夕方前になると千広さんが「客なんかもう来ないから閉めちまえ」なんて言って早々に店仕舞いをしてしまうのに。
もしかすると、僕の帰宅が遅いから心配して店の明かりを点けて待っていてくれてるんじゃ。などと期待したが全くもって筋違いという話だった。
「ただいま、戻りましたー」
力無く言って店へと入る。当然僕への言葉など返ってくる訳が無かった。何故なら、千広さんはレジテーブルを挟んで向かいに座る女性と熱心に話をしているからだ。
僕が店の中央まで行ったところで、
「おう、遅かったな?」
やっと僕に気が付いた。出迎えを期待した事が何だか恥ずかしくなってくる。
そんな思いから溜め息交じりに、
「遅かったなじゃないですよ。もう色々あってへとへとです。お客さんいるとこ悪いですけど、ちょっと休ませて貰って良いですか?」
言うが、
「いやダメだ。次の仕事が今、ここに」
はっきり断られてしまった。
千広さんは言いながらレジテーブルを指差しているが、あれは一体どういう意味なんだろう。
仕方なくいつもの場所、椅子に腰を下ろす。そこで気が付いたのだが僕より少し年上くらいだろうか、簡単に説明するとめちゃくちゃ美人の女性がレジテーブルを挟んで斜め前に座っていた。
「あ、どうも。いらっしゃいませ」
「こんばんは。えっと、君が真吾君かな?」
急に名前を呼ばれドキっとした。
まあ、十中八九千広さんが勝手に教えたんだろうけど、それにしても僕の名前がこの人の依頼に一体どんな関係があるんだろう。そんな事より、まずは返事をしなくては、
「はい、斎藤真吾と言います」
軽く会釈をすると、彼女も同じように頭を下げて、
「市川三久と言います」
微笑んでくれる。その愛くるしい笑顔に見惚れていると、
「よし、挨拶は済んだな?」
千広さんが割り込んで、
「市川さんの依頼は旅行に行きたいって話らしい、真吾、お前付いてってあげなさい」
旅行と聞いて叫ばずにはいられなかった。
「今日は一体なんて日なんだよっ!!」
17.02.02 加筆修正




