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両天秤(七)

 話を詳しく聞いていく内に、このなぞなぞの答えが薄ぼんやりとだが分かり始めて来た。

 まず最初に、一君が言っていたように鞄自体は大きいようだ。その大きな鞄をどうして変なと言ったかというと、彼が親指と人差し指で示した約一センチ程の大きさは鞄の大きさではなく、厚さだったからだ。つまり、かなり大きな鞄で更に薄い物を入れる為のものという事になる。


「大きくて薄い物を入れる専用の鞄って事なのか?」

 呟きながら考えてみるが、簡単にはそれに当てはまりそうな物が浮かんで来ない。

 チラッと正面に座る一君の方へと視線を向けると、そろそろこの話にも飽きたのかテーブルの上に置いてあった片付ける前のコーヒーカップにスプーンを入れてくるくると回しながら遊んでいる。

 言葉遣いや行儀が良くてもやっぱり子どもなんだなと少し安心していると、

「絵だ――」

 思い付いてしまった。

 一君の動き、彼の回していたスプーンとそれが入っていたカップから頭が勝手に水彩絵の具を連想してくれた。一体どんなスイッチが入ったらこういう風に繋がるんだろう。

 でも、僕がここに来てから出会った人の中に、今回の正解に近い事をやっていた人がいる。そんな彼、百瀬さんと知り合って仲良くなったからこそ、あのなぞなぞの答えが出て来たって事もあるんじゃないだろうか。


「一君を助けてくれたお兄さんは、きっと絵を描いてる人だよ」

 詳しく何て呼ばれている鞄なのかは咄嗟に出て来ないけど、多分書いた絵を入れて運ぶ為の鞄なんだろう。

 僕の言葉を聞いて拍手をして一君も盛り上がってくれている。

 しかし、僕と同じくらいの年齢で絵を描く、例えば美大生位の年齢なら間違いなく僕と同じくらいだろうし、そんな人が一体どれくらいいるのか想像もつかない。

 だから、

「僕の知りあいの人にね、絵を描く人がいるんだけど、その人にちょっと話を聞いてみようかな?って思ってるんだけど、どうだろう?」

「はい、ぜひお願いします!」

 元気の良い返事を貰ったところで一君の手を引いて店の外へと出る。そして、彼を軽く引っ張るようにして道路を進んで行く。

 目指すは――目指すは――

 そこで大事なことを思い出した。百瀬さんがビルの屋上に絵を完成させてから、僕はまだ一回も彼に会えていない事を。


「と、とりあえず困った時のハンバーガーショップ、困った時の康介君だな。」

 大丈夫だと自分に言い聞かせるようにして、一君と手を改めて繋ぎ直すと、通い慣れた道を通ってあの歩道橋、そしてビルへと向かった。

17.01.31 文字修正

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