両天秤(六)
いつの間にか二人だけになってしまったレジテーブルで、何か手掛かりは無いかと必死で一君に話を聞いてるが、なかなかこれといった物が出て来ない。
「どんな顔か聞いたところでそれを再現できる画力なんて無いし、唯一手掛かりになりそうなのは一君から見てお兄さんと呼べる年齢位の男の人だって事くらいか」
僕は一君に視線を向けたまま、
「ねえ、そのお兄さんってのは僕と比べて年上な感じかな?それとも年下な感じなのかな?」
彼は目を何度も瞬きさせながら考え、
「同じくらい?」
首を傾げて言う。
僕がこういうのも変かもしれないけど、結構若い人なんだな。まあ、お兄さんって言われてるくらいだから当たり前と言えば当たり前なんだけど。でも、明らかにおじいちゃんにしか見えないような人にまでお兄さんって言う人もいるだろうからな。とりあえず、一君がそういうタイプの人じゃないって分かった事だけでも収穫だと思わないといけないな。そんな事を考えていると、
「あ!」
と、何かを思い出したように一君が叫び、
「助けてくれたお兄さん、変なカバン持ってました」
変な鞄と言われても、この世の中には様々な鞄がある訳で、手に持つタイプで言っても、お金持ちのおじさんがよく持っているイメージのあるサイドバッグやクラッチバッグ、それに少し鞄と言えるか分からないけれど、女性が持ち歩くポーチなんかも鞄と言えるんじゃないか?
だから、思ったことをそのまま伝える。
「その変な鞄って言うのは手に持って運ぶタイプのやつかな?」
一君は首を横に振り、
「そのお兄さんは肩に掛けてました」
という事は、リュックサックみたいに背負うタイプとは違うのか?いや、背負ってはいるけど正確に表現するなら肩に掛けてるって言い方も正しくないか?
「肩に掛けるってのこう?」
僕は椅子から立ち上がり、右肩だけに紐を引っ掛けるジェスチャーを示して見せる。
一君は、大きく頷いてくれた。
つまり、肩掛け鞄の類だ。
僕が買い物に行くときに使っているトートバッグみたいな物は良く見かけるけど、それを見て変な鞄と一君が思うだろうか。
他には胸の所に斜めに掛けるショルダーバッグがあるけど、あれは胸の大きな女性が使う事で効果を発揮するだけで、別に変な鞄だとは思わない。
何か鞄以外の事で変だと感じる事があれば、それは鞄自体のデザインやプリントされた絵とかじゃないかと思い、
「その鞄ってのは何か変な絵が描いてあったのかな?」
僕の希望をあっさり砕くように一君は黙ったまま首を振った。しかし、すぐさま口を開き、
「そのカバンはすごく大きかったんです。でもこれくらいなの」
そう言って右手の人差し指と親指で一センチくらいの隙間を作っていた。
え?急になぞなぞ始まっちゃった?
17.01.31 内容修正




