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扉(二)

 少しだけ焦げ付いた目玉焼きと小さなサラダとトーストを順番にかじりながら、度々窓の方へと視線を移してみるが、この雨は今日の内に止むことは無さそうだ。朝、目が覚めた時よりも音が大きくなっている気がする。

「コーヒーはいらねえのか?」

 目の前で僕と同じようにトーストをかじる千広さんが右手に持ったカップをこちらに見せつけるようにしながら尋ねて来る。

 口の中に入った状態では上手く喋れないので、手で結構ですと合図をして、しっかりと口を空にして、

「きっとこの後、コーヒー飲むと思うんで朝は止めときます」

「あんまり飲むと夜眠れなくなるか?」

 千広さんは、僕の事をまるで子供でも見るのかのように笑いながら言う。

「体質にもよるらしいが、日本人にはカフェインってのはあんまり効かないらしいぞ」

 更に続けた。

 別に僕はそこを気にしているから断った訳では無いのだが、

「そうだとしても、千広さんは少し飲み過ぎな気がしますけど?」

 僕の言葉を聞いた彼は、そのコーヒーを一口飲むと、

「酒もタバコもやらないんだから、これくらいはな?」

「ヘビーコーヒードリンカーですね?正しいかは知らないですけど」

 千広さんは鼻で笑って、

「またの名をカフェイン中毒ってな?」

 自分で言ってまた笑った。

 いつにも増してよく笑う千広さん。今日は機嫌が良いのかもしれない。


 その後、いつも通り店の掃除をして店番をしていたが、天気も良くない為にお客さんは全くやって来る気配が無かった。天気関係無くお客さんが来ないというのもいつも通りなのだけれど。

 そんな状態だった為、千広さんに言われてお昼を回った頃には、入り口に掛けられているOPENの看板をひっくり返し、店仕舞いをしてしまった。まだ雨は降り続いている。


 それからしばらくして米蔵さんと紗千が来店した。二人とも特に変わった様子は無く、それは千広さんも同じなのだが、自分だけ変な風に肩に力が入ってしまっているようで少しだけ恥ずかしかった。

「今日、お前の席はそこだからな?」

 千広さんに言われたのは、普段お客さんが座っている椅子だった。

「お客さんって事になるんですか?」

「そういう訳じゃないが、俺と爺に話があるんだろ?」

「……確かに」

 僕と紗千は、コーヒーカップの置かれたレジテーブルを挟んで、千広さんと米蔵さんに向かい合うように座る。


「昨日、お前さんらは話し合って自分たちの意見をまとめて来たんじゃろ?それをちょっと聞かせてくれや」

 米蔵さんが静かに口を開いた。

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