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告白(二)

 レジテーブルとセットで置いてあるお客さん用の椅子も彼女にとっては少しだけ高いようで少々座りづらそうに席に着く。

 僕は急いで裏にある台所へと向かいコーヒーカップを用意する。彼女のへの謳い文句としてコーヒーを出すという事は言ってしまったので、これを忘れる訳にはいかない。いつもより少しミルクと砂糖を多めにお盆に乗せているのが、年上のやさしさってやつだろうか?

「お待たせしました。もし良かったら、ミルクと砂糖も使って下さいね」

 入り口で見せたものと同じ笑顔を彼女に向けて言うが、やっぱりリアクションは宜しくない。


 一息ついて、僕も自分の椅子に腰を下ろし、コーヒーを飲みながら彼女を観察してみる。

 慣れない手つきでミルクの容器を手に持ち、慎重にカップへと落とす。次に同じような手つきで砂糖の容器の蓋を開けると、中に入っている小さなティースプーンで半分ほど砂糖をすくって再びカップに入れる。

 彼女の視線は真剣そのものでコーヒーを飲むということ自体に慣れていないその様を笑う事は出来ない。

 とは、言っても僕だってこの店に来た日にはあまり飲む機会の無かったコーヒーを美味いのかどうか分からずにすすっていた訳だから、笑うのは失礼だ。

 でも、侮辱と言う意味では無く、正確には微笑ましいという方の笑うになると思うんだけど、それでも笑われた方にとってはあまり良い気分はしないだろうから、僕は笑わない。


 カップをゆっくり口に持って行く彼女を見ながら、

「もし良ろしければ話を聞きたいんですけど、どうでしょう?」

 若干、余裕のある話し方は、もしかしたら千広さんの影響というか、物まねが入ってしまっているかもしれない。


 僕の言葉が届いたのか、それともコーヒーの熱さで身体がビクッと反応したのかは分からないが、彼女はカップを置いて、僕の方へとしっかり視線を向ける。

 肩まで伸びた黒い髪に真ん丸な目。薄い唇が少し大人びた印象を持たせる。


「実は、知り合いに話を聞いて貰ったら、相談するならここが良いって言われて」

 彼女がこの店に訪れて初めて僕と会話のキャッチボールが成功したんじゃないだろうか?投げたは良いが、一向に返って来なかったボールがやっと僕の元に収まった。そんな気分だ。

「はい。何かのお手伝いとかでお仕事になるような事だと店主と相談してから受けるかどうかって話になっちゃうんですけど、もし聞き手が僕で良ければ話ならいくらでも聞きますよ」

 出来るだけ笑顔、相手に圧を与えない距離感で話を進める。


 カップを置いたまま止まっていた手をレジテーブルの向こうへと引っ込め、軽く手を握ったり合わせたりしながら彼女がぽつりぽつりと呟いてくれた。

「あ、あの、実は――」

 急に頬を赤らめている事以外は特に不自然な所は無いが、

「やっぱりダメです」

 キャッチボールは出来ている気はするが、何だか違う球技のボールを使われているようだ。

 彼女が突如赤面した理由も、相談内容を伝えられない事も僕には一切分からない。彼女が言えないと言うのならば相談には乗れないし、千広さんが居ても居なくてもお仕事としては成り立たない。


「あ、大丈夫ですよ。落ち着いてからでも、そんなに人がたくさん来る店じゃないですし、焦らずにゆっくりで良いですよ?自分のタイミングで話してください」

 久しぶりにこんなにも気を遣って言葉を選んで喋っているような気がする。相手が年下だからだろうか。

「もし、上手く喋れないなら、何か雑談でもして気を紛れさせても良いですし、あとは自己紹介とかあなたの事を聞かせてくれても大丈夫ですよ。もし何かお手伝いしなくちゃいけない時はそういう情報も大事になりますからね」


 息をついて笑顔を作るが、本当に疲れる。

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