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海へ(六)

 僕たちが来た道もそこそこ大きな道だと思っていたけれど、ぶつかってT字路になっている幹線道路の方が圧倒的に車の量が多く、道幅も広かった。そこを渡る為には目の前にある赤に変わったばかりであろう信号機を通っていかなければならない。

 信号待ちをしながら、

「本当に海あったんだね」

 僕は思わずそんな事を呟いていた。

 自分自身でも分かっている。ここに下りて来る間に嫌という程、海を目にしている訳だから、紗千からしたら『一体何を言ってんだ?』と、思われるかもしれない。でも、改めて目の前までやって来ると、そんな事しか口から出なかったのだ。


 海沿いを走る道路というのは当然、左右のどちらかは海になっているので、交差点という物が無い。

 ここもそうだが、道が合流している場所は大体T字路になるので、海沿いを走っている道路が優先になる。という事は、その道を渡ろうとしている横断歩道に取り付けられている信号も当然、長くなる。

 僕のバカみたいな感想に紗千が何も言って来ないのも時間を長く感じさせる要因の一つだったかもしれない。


 先に自転車を降りていた紗千の顔を覗き込もうと、僕も自転車を降りて彼女の右隣へと並ぶ。

「紗千?」

 彼女はハッとした表情をして、

「あ、ごめん。どうかした?」

 なんて、言って来るが、それはそのまま僕の台詞だと思う。もしかしたら、僕と同じように海を目の前にして感動していたのかもしれないが、さっきの発言をせっかく紗千が聞いていなかったのだから、今更蒸し返すことも無いだろうと、その事には触れず、

「ボーっとしてたみたいだけど、どうしたの?」

「ううん、ごめん。なんか、ボーっとしちゃって。ちょっと疲れちゃったのかな?」

 苦笑いを浮かべる彼女の顔は、そんなにも深刻そうな感じはしなかったが、

「どこか休めそうなお店とかあれば、入ろうか?近くにあれば良いんだけど」

 ここから一番近くにありそうなお店と言えば、やっぱり海の家だろう。

 今、いつ頃の季節なのかは分からないけれど、夏真っ盛りで無い事は分かる。そんな時期に海の家がやっている訳は無い。そうなると、お店をわざわざ探さないといけないのだが、疲れたと言っている女の子を連れてあまりウロウロしたくはない。


「ううん、大丈夫だよ。せっかく海に来たんだしさ!」

 わざと明るく言うが、

「二人乗りで海に来るのが目的だったんだから、もう目的は達成したでしょ?俺も自転車ずっと漕いでて疲れたからさ、どこか喫茶店みたいなとこ探して入ろう。もう少し大丈夫?」

 強気な僕に押されたのか、彼女は小さな頭を少しだけ下げて頷いた。

17.04.02 誤字修正

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