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海へ(二)

 約束通り自転車のお金はしっかりと二人で折半し、

「このまま乗って行って良いですか?」

 と、店員さんに相談して、お店の前がスタート位置になった。

 僕はサドルに腰を下ろし、左ペダルに足を乗っけると、自分の体重が乗った自転車の重さを右足でしっかりと支える。

「よし、紗千も乗って」

 僕に促されて荷台に乗った紗千は自然と僕の腰辺りを掴むので、身体がビクッと反応してしまった。

 それを見てクスクスと彼女は笑うが、ここで照れ隠しで何かを言い返すと運転している最中に絶対良からぬ事をしてくると思ったので、軽く流して、

「で、このまま真っ直ぐ進んで良いの?」

 僕たちの自転車は駅前からいつもの歩道橋方面を向いている。つまり、僕が朝歩いて来た道を戻る形になる。

「うん、とりあえずこのまま真っ直ぐ」

 紗千の声を背中で聞いて僕は左足に力を入れてペダルを漕ぎ出す。一気に加速して右足もペダルに乗っけて更に速度を上げて行く。想像していた以上に辛さを感じないというのが最初の感想だった。後ろで、

「風が気持ち良いー」

 と、テンション高めに言っている彼女の影響もあるかもしれない。


 車ほどでは無いにしろ、さすがに徒歩よりはずっと速い。

 いつもは十分近くも歩いて到着していたあの歩道橋をもう通り過ぎようとしている。ハンドルを握りながら視線を上げてビルの上にある看板を確認するが、やっぱり白地に黒の文字で広告募集中と書かれているだけだった。

 ファストフードとコンビニの目の前の交差点で始めて信号に引っ掛かり、ブレーキを握りしめた僕たちの自転車はゆっくりと速度を落としていく。

「運転大丈夫そうだね?」

 後ろからそう声を掛けられ、

「二人乗りは初めてで不安だったんだけどね?それよりも自転車に乗るのが久しぶりだったからさ、そっちの方が心配だったんだけど、意外と大丈夫だった」

 首を回し後ろの方へと視線を向ける。ほぼ密着した状態なので当然なのだが、距離が近い。

 僕は何事も無かったかのように再び正面へと視線を向けると、

「なんだー、真吾が弱音を上げたら私が代わりに運転してあげようと思ったのになー」

 余程二人乗りが楽しいのか、弾んだ声で言っている。

 僕は赤く光る信号機を見つめながら、紗千が待ち合わせ場所にやって来た時の事を思い出していた。

 彼女は細めのジーパンを履いていたが、その下は花のワンポイントが付いた底が厚めのサンダルだったような気がする。

「そのサンダルで自転車運転するのは大変でしょ?」

 青になった信号を見て、再び漕ぎ出しながら言った。


17.03.30 誤字修正

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