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告白(一)

 いつものようにコーヒーの香りが残るこの店だが、今日は珍しく僕が一人で店番をしている。

 レジテーブルの周りをほうきで軽く掃きながら、

「本当にこの店はお客さんが来ないんだな」

 ふと呟いてしまう。


 店主が、お昼ご飯を食べるなり急いでどこかに出掛けてしまってもう既に二時間近くが経っている。その間、店を訪ねて来た人は誰一人いない。

 午前中に一通りの掃除は終わっているのだが、ただ座っているだけでは眠たくなってしまうので、何となくほうきを手に取り、そして本日二度目の掃き掃除をしてしまっている。


 それにしても千広さんは一体どこへ出掛けたのか?

 ほうきを動かしていた手を止めて考えてみるが、普段の彼の行動が一般人とはちょっと違うというか、特殊な部類に入る人間なので、全く予想が出来ない。もしかしたら突然思い立って髪を切りに行ってるのかもしれないし、映画が見たくなったとか、色々と考えてみるが、正解なんて出るもんじゃない。止めとこう。

 そんなタイミングで店の入り口が開き、

「こ、こんにちは」

 僕からの距離ではなかなか簡単に聞き取れない程のか細い声が響いた。

 この店にたまたまお客さんが居なかったからこそ聞き取れたが、これが普通のお店のような状況だったらまず不可能だっただろう。


 僕はほうきをレジテーブルへと立て掛けると、入り口へと駆け足で寄る。すると、そこには僕よりも十センチほど背の低い可愛らしい女の子が立っていた。彼女の声もそうだったが、表情や仕草もまるで怯えているようである。

「いらっしゃいませ」

 安心感を与えてあげようと精一杯の笑顔で迎えるが、あまり効果は無かったようで向こうからの返事は無い。少し、ほんの少しだけカチンと来たが、ここは僕が大人になろう。なにせ相手はお客様。しかも自分よりも年下であろう少女なのだから。

「このお店は骨董品店と八百万仲介紹介相談所の二つの仕事をしてるんですけど、今日はどちらにご用でしょうか?」

 ダメだ。

「今、店主マスターは外出中で居ないんですけど、僕で良ければ話し聞きますよ?」

 まばたきという反応以外何も返って来ない。

「まあ、骨董品に関しては何も分からないんですけどね」

 苦笑いをして頭を掻いてみるが、やっぱり反応が無い。やりづらい。

 どうしたものかと考えたが、入り口で喋っていても仕方ないので、

「もし良かったら、中にどうぞ。良ければコーヒーも入れますよ?」

 そこで初めて彼女は首をコクンと垂らし、

「お邪魔します」

 と、言って店の中へと足を踏み入れた。

17.02.02 サブタイトル修正

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