恐怖の洋館 ー円卓の怨念編⑦ー
剛力無双回
開いた壁の向こう、何かがうごめいている。
「……胸が熱くなるな」
ぼそっと呟いた剛力に私は何か嫌な予感を感じた。
「なんだそれ」
「鉄パイプ」
剛力は無理やり壊して開けたドアの前に立っていた。何か嫌な予感がしてならない。
「かなり久しぶりの様な気がするな。こうしてパイプを手に敵地に殴り込みなんて。不良の集まりを病院送りにした時以来だな」
私もうわさで聞いた程度ではあったが、ただ一人で不良数十人を相手に全員病院送りにするという頭のおかしいことをやった人がいるとは聞いたことがあったが、彼だったのか。
暗闇に包まれた部屋では絶えず何かがうごめいている。
それも一つ二つではない、かなりの数がいると思われる。
「待て剛力、ここは普通のホラーゲームならば何かしらアイテムを使ってどうにかする展開だぞ」
「よし、ならその方法を見つけてからボコボコにしよう」
「どうしてそうなったし」
剛力の顔はどういうわけかイキイキとしていた。どれだけ暴れたいのか……。
「さて、突破方法を考えよう」
「……まぁいいか」
「では、作戦会議をしたいと思います。題は『物理的攻略を前提とした上で敵勢力の弱点を探す』だ」
剛力が不憫な名前の会議を持ち出してきた。
「……それさ、別に弱点探らなくてもよくね?」
野原が真っ当な突っ込みを入れた。
「それじゃあ阿武野が満足せんだろ」
「たとえ弱点見つけても結果的に物理的クリアーするならいみねぇジャン」
「とりあえず文句の無いようにやっとけばいいんだよ」
私は現時点でも納得していない。
「相手の弱点だが、頭を潰せば動かなくなるな」
「いや、そんな物理的弱点を知りたいわけではないのですがそれは……」
どんなに冴えようが、やはり剛力は脳筋であった。
「……そういえば、原田と真理はどこ行ったのかな」
「というか、疑問だったんだがお前はどうして生き残ってるんだ?」
「阿武野、さすがにその聞き方はひどくないですかねぇ」
野原は別に剛力みたいにキチガイじみたパワーもなければ私のようにホラーゲームに詳しいわけでもない。とてもここまで生き残れるとは思えない。
「いやな、もしかしたら効くかなと思って懐中電灯を使ったら、案外大丈夫だった」
「弱点は光のようだな」
こんなにあっさりとしていていいのだろうか?
少なくとも物語的には美味しい展開とは言えないのではないだろうか?
「よし、行こうか」
とんでもなく嫌な予感がする。
中にいた化け物は蜘蛛の体におっさんの頭といかにもな格好をしていた。
「弱点その一、頭部を失うことこれ絶命!」
無情に振るわれるパイプがおっさんの頭を無残に砕く。
後ろに回り込もうがすでに分かっていたかのような動きで剛力は後ろの奴の頭もぶん殴った。
見れば逃げ出してるやつもいた。哀れ。
ちなみに私たちは入り口をライトで塞いでいた。
弱点その二、奴らは光を嫌う。
逃げ場のない戦場で一方的残虐が行われてるような状態だった。
イキイキした表情の剛力からはあの奇形の化け物よりももっと禍々しい狂気を感じる。
「パイプなんかいらねぇ! やっぱこの手でぶっ飛ばす!」
仕舞には武器をぶん投げて拳で戦うスタイル。
「……お前は漫画の主人公か」
果たして、ホラーで主人公がお化け以上に残虐非道冷酷無比鬼畜生な行動してよいものなのだろうか? いやない。
第一、化け物相手に拳で渡り合うとかホラーの主人公どころか最近の漫画ですら見ねぇから。
「逃げんじゃねぇ! 俺と戦え!」
かさかさと最後まで逃げ続ける化け物。心なしかこっちを見てる気もしてきた。
「徹底的、絶対的圧倒的に、完全に、一匹残らず、皮も肉も血も骨も内臓もどこがどこだかわからないくらいに、粉々に粉砕し粉微塵にしてやるぜぇ!」
「言ってることが主人公じゃない!?」
「いや、それどころか人の子かどうかを疑うレベルだよ」
あれだけいた化け物が見る見るうちに無残な残骸の山を築き上げている。
「帰らぬ二人の仇だ!」
「いやまだ死んでないから! 勝手に殺さないであげて!」
「あ、剣が二本おいてある」
今回の成果
剣をすべて確保
次の段階に行くことができるようになった
後は二人の仲間を見つければよし
今まではそこそこ物理を避けていたつもりでしたが、今回は徹底的をコンセプトに頑張ってみました。