恐怖の洋館 ー円卓の怨念編⑪の2ー
そろそろクライマックスです。
『イレの姫が住む国で、ある迷信が生まれた。
王家の人間の、処女の血はその肉体に永遠をもたらす。
そんなありもしない虚言をあろうことか王は信じた。
そして十三人の騎士に命じた。
娘の血をここに持って来いと。
そして最後まで反抗したヨーリアは切り捨てられた。
姫はすぐさま捕まり、幽閉されて血を抜かれるだけの生活を送ることとなった。
彼女はやがて自殺した。
王や家臣、騎士はその亡骸をめぐり戦争を始めた。
そしてその国は狂った歴史を閉じた。
亡骸は心あるものたちが回収した。
しかし、王家の執念は怨念と化し、姫の亡骸を渦巻いていた。
彼らは命を失っても尚、永遠を求めていたのだった。
そして酔狂な人の手から手と渡り、遺体は今この地下に安置されている。
しかし怨念はこの屋敷に取り付きデイビットを呪った。
この記録を読む者がいればお願いしたい。
呪われた姫を、開放してほしい。 里川京太郎』
「……そうか」
「ひどい!」
「狂ってやがる!」
私たちは怒りでむかむかしていた。こんな狂った人のために殺された者たちが不憫でならなかった。
「……やるぞお前ら」
そんな時だった。剛力が笑っていた。
「忌々しい怨念に囚われた姫様を、俺たち五人が解放するんだよ! ヨーリアができなかったことを、俺たちが成すんだよ!」
私は、この時ほど剛力が大きく見えたことはなかった。一番怒ってそうなやつが、一番の笑顔で解放するなんて言ってるのだ。そんな顔を見てしまったら、やらないわけにはいかなくなる。
「やろう」
「もちろん」
「私も!」
「俺がリーダーだぞ! 俺が仕切る!」
野原はみんなを見渡した。
「やるぞ。ここまで来たら全部終わらせて帰る!」
『おお!』
「で、この壁が怪しいと」
「ああ、見てくれ」
剛力は私が記録を読んでる間は周りを見ていたらしい。
壁には「辛」「呪い」「折」と書いてあった。
「全部マイナスな言葉、まるでイレ姫のことを書いたみたい」
そう真理ちゃんは言った。
「これは、最後のなぞ解きになりそうだな」
「ノーヒントかよ」
野原がぼやいた。
「いや、答えはもうわかってるんだ」
ああ、私ももうわかってる。
「これは、里川さんが残したメッセージだ」
「メッセージ?」
「ああ、そうだ」
剛力は壁に触れた。
ここに来るまで、剛力は主人公であるまじき行為をしてきた。
敵は殴るし壁は壊す。襲われたかと思ったら返り討ちにして逆に血祭りにあげる始末。
そんな彼が、今はすごく主人公に見えた。
「この辛という字、俺の好きなゲームで知ったんだが、一線足すと「幸」になるんだ。辛さを越えた先に幸せがある。呪いは「お」を足すとおまじないになるんだ。そして折は、人は折れると神に「祈る」らしい。つまり祈りだ」
剛力は壁の文字を書き換えていく。
「きっと里川さんは、せめて言葉遊びの中だけでもイレ姫を助けたかったんだろうな」
書き換え終えたとき、隣の壁が開いた。
「さぁ、ご対面だ。姫様」




