恐怖の洋館 ー円卓の怨念編⑪の1ー
続きは今日中に
「これでどうだ!」
自信満々に剛力は宣言した。
ユダの席は特定できた。硬貨もテーブルに置いた。
しかし、何も起きない。
「……俺の推理に欠陥が? 何が足りない」
「落ち着け剛力、恐らく足りないのではなく、多いのだろう」
「なに?」
私はそう言って人形に持たせていた剣を手に取った。
「つまりこうすればよいのかと」
私は人形の首を飛ばした。
「阿武野、説明を」
「絵本には騎士は殺されたと書いてあった。つまり、このユダの人形は首がいらない」
「……」
少し悔しそうな顔を剛力はした。
すると、何か地響きのような音が響いてきた。
「部屋の外だな」
原田が急いで確認に行き、戻ってきた。
「さっきまで行き止まりだったところに、階段ができてる」
「ビンゴ」
「硬貨はいらなかったのかな?」
「たぶんそれはこれが十二使徒とユダの裏切りをモチーフにしてることを暗に伝えるためのものなのかもな」
野原が真っ当なことを言った。
「野原に言われると少しへこむな」
「ねぇねぇ俺の扱いひどくない?」
「行こうみんな。答えはこの先にある」
「あれ? 俺はもしかして無視されたの?」
私たちは真相渦巻く地下へと足を踏み入れた。
「懐中電灯の調子が悪いな」
「それなくなったらこの狭い通路であの化け物と乱闘になりそうだな」
「剛力、あまり冗談には聞こえないな」
しばらく歩くと気の扉が見えてきた。
私はドアノブに手をかけた。
「……開かない」
「このドア鍵穴ないよ」
真理ちゃんの言った通り鍵穴はなかった。
「ドアが歪んでるのでは?」
「ああ」
「お前ら退きな」
そんな時、案の定剛力が前に出た。
そして予想通りドアを蹴り壊した。
「カビ臭い部屋」
「埃もすごい」
みんなもう既に慣れたみたいだった。
「……おい」
そこで剛力はひどく鋭い声を出した。
「どうした」
「あれ、骨じゃないか?」
剛力が懐中電灯で照らした先にはイスにもたれかかる骸骨がポツンと座っていた。
「ヒッ!」
真理ちゃんが悲鳴を小さく上げた。
「ここにいたのか。デイビッド・アルキル」
「?」
原田は不思議そうな顔をした。
「ああ、お前いなかったよな。俺が合流してすぐに資料室に行ってな。そこで見つけたんだよ、ここの行方不明の主の名前」
「こんなところで、孤独に死んだか」
真理ちゃんは目を背けていた。それもそうだろう、かなりこの状況はショッキングであるのだ。
剛力は骸骨に近づき、机の上の本を手に取った。
「……『私は手の動かないデイビットの代わりにこの記録を残す』」
私は剛力のほうを思わず見た。
剛力は英語はできない。つまり彼は日本語を読んでることになる。
「『私はこの屋敷の代理主、里川京太郎。デイビットとは古い付き合いだ』……、里川京太郎さんか、この屋敷を買い取ったのは」
「もしかしたら、デイビットさんは手が動かなくなったため、屋敷財産を里川さんに託して、この部屋にこもった。すべてはその記録を残すために!」
「そのようだ。阿武野、お前がこの記録を読んでくれ」
「……」
私は渡された資料に目を通した。
所々に英語が使われていた。
恐らく、ここは聞き取れたが意味が分からなかったために里川さんがそのまま書いたのだろう。
「読み終わったら噛み砕いて説明してくれ。俺は活字が苦手でな」
「ああ」
……………………。
数時間が経過した。
私は動揺を隠せなかった。
怒りもあり憤りもあり、何より困惑した。
「……剛力、今から話すことを聞いて、君はどうする?」
「お前の顔を見ればわかる。その時代にいたら登場人物全員ぶん殴る」
「うん。みんな、聞いてほしい。デイビットさんが人生をかけて調べた、イレ姫を巡った狂った物語を。そしてその事の顛末を」




