恐怖の洋館 ー円卓の怨念編⑨ー
「この階段は使えない。回るぞ!」
「まさか、私たちは嵌められかけていたのか!?」
「そうだ。違和感に気が付いたのは原田が隠れていたと言ったときからだ。あのシスコンが怪我を理由に隠れてるなんてありえないと思ってな」
そこで剛力はしかし続けた。
「確信に変わったのはあいつの話で蜘蛛野郎の話が出た時だ」
「なに?」
「あ、そうか、こんなに明るい廊下を光弱点のあいつが通るわけないもんな」
「意外に冴えてるな野原。そう、その話を聞いたとき、明らかに話が嘘だということに気が付いた。それに相手のほうが足が速いだろうに、階段を上るなんて言う自殺行為を原田がするわけないとも思ってな」
まさか剛力がこんなことに気が付くとは思わなかった。
私もまだまだ甘いらしい。
「あの階段ではおそらく待ち伏せがあったんだと思う。だから……」
「避けて通ると」
「回り込んで全員ぶっ飛ばす」
「やはり脳筋は変わらないか」
反対側の階段を降り、向かい側を覗くとそこには複数の化け物が待ち伏せをしていた。
「……普通にやったらやられることを学習したか」
敵さんも剛力の前には卑怯な手に染まる以外手がなかったのだろう。化け物とはいえ不憫である。
「お前らは先に行け。ここは俺が食い止める」
「え、無視すればいいじゃん」
「あいつらがピンチだ」
「俺らもお前がいないと厳しいんだけど」
「野原、お前があいつらを守るんだ」
「つうかやらなくてもいい敵を殺るなんてただの虐殺じゃね?」
野原がまともなことを言っている。それほどに今の剛力は奇想天外なことを言っている。
「なら強行突破だ。俺に続け」
「いやいや、目の前に一階行きの階段があるんですけど」
「敵は本能寺にある」
「いやいや、ここ洋館だから。それに焼打ちにしちゃったらあいつらも死んじゃうから! それに明智光秀もちゃんとわけ合ってやってるから!」
「背水の陣だと思って」
「いやいや、背水の陣なのはどちらかといえば目の前の敵さんだから。俺たち追いつめられるどころか追いつめてるから!」
「……剛力、あとでいくらでもやっていいから今は二人を」
私はとりあえず剛力を諌めることにした。
「……仕方がないか。I`ll be back」
「映画のネタをやめろ」
「I shall return」
「アメリカ人に怒られろ」
こうして私たちは一階に下りた。
「真理!」
「お、おにぃ、逃げて!」
「俺はお前を置いて逃げるなら、奴らのエサになる!」
「おにぃ!」
真理と原田は追いつめられていた。
彼らには剛力の様な怪人的パワーはない。剛力に勝てないと悟った化け物たちはそこで今は別行動をしている二人を追い詰めることにしたのだ。
そしてその結果真理は足を負傷し、化け物に囲まれるという万事休すの状況になっていた。
偽原田は剛力を返り討ちにするためではなく、時間稼ぎの意味もあったのだった。
「来いよ化け物、武器なんか捨ててかかって来い!」
原田は腹をくくった。命を懸けてでも、妹を守るために。
しかし、化け物が襲い掛かろうとした瞬間、奴がたどり着いた。
「んだよ、こいつらも脆いな」
声のほう、身長二メートル体重百キロ以上の化け物(人間)が化け物の首をへし折っていた。
化け物たちが逃げ出した。
「え゛え゛!? 逃げ出した!?」
「に゛か゛さ゛ん!」
今日の成果
化け物にトラウマを植え付けることに成功
二人を結果的に救出
ついに円卓の怨念編も最終段階に入ります。
あとI shall returnはマッカーサー元帥を調べればわかりますよ。興味がある方はどうぞ。




