#6
穢くて・醜い部分を優しく包み込む光と影
時に激しく―頭を垂らす女
〈―。〉
“はあ…ハア‥”
〈―。〉
たわわな胸の先は降りつもり、重なるたび、さらりとなぞる髪の優しさ。なんどもなんども滑らかな舌で無抵抗な部分を転がされると
心鷲掴みするような刺激は、枕にぎりしめ、下に、下へ注がれる。女の掴んだものに糸引く唾―唇が離れるのを見届ける目と、太ももは・ようやく力みから解放された
「ごめん。」
〈‥ン、なに?〉
「次、、俺も責めていい?」
〈うん。いいよ〉
身を預けるような仕草―女は仰向けになった。変貌する恥ずかしげな色がシーツの背景に溶け込んでいく
自由であればあるほど甘い果実。柔らかい肉体に吸い付く口、爪が跡形残さず、脇腹通い―首に至るとき、拒絶反応をみせた。荒立つ呼吸。それでもなお、テリトリーを犯そうとしつづけた自分の性欲。互いの手を取り合って、絡めた。敏感な部位を避けては、煮詰めるように…焦らした。
《突然の着信―ケータイの旋律が二人を現実に引き》戻した―。
…ごめん。
「いや、いいよ…」
それでも着メロは詠いつづける。カバンに歩み寄り、ケータイを開いた。
〈―あ。…はい〉
パタンと閉じられたあの手つきを見つめた。
「どうしたん」
〈…15分前だって。〉
箱ティッシュを引き寄せる女―。
萎えそうになった
けど、
飾り気のない彼女の素を見れて、良かった
さざ波を立て始めるシーツ。押し寄せる現実を前に二人の体温なんども折り重なり、女の行為が加速する。のけぞり、あがく瞳に時々“結衣”が映り込んできた
溢れるように―。。快楽だけが漏れていった
〈あれ‥飛ばないんや‥〉
終わった、天井を見上げた
つららに、思い、変わる。
〈―ちょっと、風呂入ってくるわ〉
…うん。
滴り堕ちる狂詩曲。
〈さむー‥〉風呂上がりの体が目の前に姿現すと
気持ちよかった。ありがとう―そう言い遺して神谷は。。俯いた
「‥大丈夫やった?オレ、あんま上手ないし…」
平然と彼女は装い
〈全身リップ、いいと思うで。ぎゃくにオレめっちゃ上手いって言ってる奴に限って、速くやったら女の子イクって思ってんねん。まあ濡れてからなら、いいけど。ほんま最悪やで〉
身につけた服のよそよそしさで肌が隠れた。
子供騙しのように過ぎ去る刻一刻。会計のとき
〈80分17000円やけど…〉
2万でおつりないらしい、絨毯に並べた諭吉は弐枚。
上下、逆さま。
「3000円チップでいい?」
〈え?〉
「…いや、ややこしかったら、やめとくけど」
〈別にいいけど…いいの?〉
「これで、お子さんと上手いの食いに行って。足しにならんと思うけど…」
独り善がりって、心地よい。早くから母を亡くし母親代わりで男たち支えて、料理はできないものがないと自負する女。
閉じる扉と反比例して、わずかな隙間で満面の笑みを残していく彼女。色んな顔を持つ蠱惑な蛾は飛び立っていった。手をふって送り出す。それでも生きてる。羨ましかった。
あした、自分が滅亡するとしたら
最後に何をやりたかったのだろう。
「…。」
何やってんだオレ…。
“結衣…ごめん”
ゴメン。。「―」
背筋。手の甲。耳の中
ココロから発信される―ざわつくトリハダたち
上からの薄っぺらい照明に打たれ、出ていったあとの余韻を施錠する音。廊下・独りあとにして過去から居間へと辿り着く
全てを見届けた観葉植物
力なく横たわっていた
電子レンジの土鍋。〈あ―〉忘れたことに気づいたあともまだ・ほんのり温かい。
夕焼け色の光が積もる頃、さいど振り出しに戻った。チンした手料理を恐る恐る口にする
。。俺にはもう。何も残ってねえよ。なあ…
不味かった。ここ一番くそまずい
「…―」
かみしめる、なんて居心地の悪い
今。