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神谷サンちの猫―Kamiyasanchi・no・Neco―  作者: 風魔 和之
第Ⅰ匹 猫の目
7/50

#6

穢くて・醜い部分を優しく包み込む光と影


時に激しく―(こうべ)を垂らす女


〈―。〉

“はあ…ハア‥”


〈―。〉

たわわな胸の先は降りつもり、重なるたび、さらりとなぞる髪の優しさ。なんどもなんども滑らかな舌で無抵抗な部分を転がされると

心鷲掴みするような刺激は、枕にぎりしめ、下に、下へ注がれる。女の掴んだものに糸引く唾―唇が離れるのを見届ける目と、太ももは・ようやく力みから解放された


「ごめん。」

〈‥ン、なに?〉

「次、、俺も責めていい?」


〈うん。いいよ〉

身を預けるような仕草―女は仰向けになった。変貌する恥ずかしげな色がシーツの背景に溶け込んでいく


自由であればあるほど甘い果実。柔らかい肉体に吸い付く口、爪が跡形残さず、脇腹通い―首に至るとき、拒絶反応をみせた。荒立つ呼吸。それでもなお、テリトリーを犯そうとしつづけた自分の性欲。互いの手を取り合って、絡めた。敏感な部位を避けては、煮詰めるように…焦らした。


《突然の着信―ケータイの旋律が二人を現実に引き》戻した―。


…ごめん。

「いや、いいよ…」

それでも着メロは詠いつづける。カバンに歩み寄り、ケータイを開いた。

〈―あ。…はい〉


パタンと閉じられたあの手つきを見つめた。


「どうしたん」

〈…15分前だって。〉

箱ティッシュを引き寄せる女―。


萎えそうになった

けど、

飾り気のない彼女の素を見れて、良かった


さざ波を立て始めるシーツ。押し寄せる現実を前に二人の体温なんども折り重なり、女の行為が加速する。のけぞり、あがく瞳に時々“結衣”が映り込んできた


溢れるように―。。快楽だけが漏れていった


〈あれ‥飛ばないんや‥〉


終わった、天井を見上げた

つららに、思い、変わる。


〈―ちょっと、風呂入ってくるわ〉

…うん。


滴り堕ちる狂詩曲(ラプソディー)


〈さむー‥〉風呂上がりの体が目の前に姿現すと


気持ちよかった。ありがとう―そう言い遺して神谷は。。俯いた

「‥大丈夫やった?オレ、あんま上手(うま)ないし…」


平然と彼女は装い

〈全身リップ、いいと思うで。ぎゃくにオレめっちゃ上手いって言ってる奴に限って、速くやったら女の子イクって思ってんねん。まあ濡れてからなら、いいけど。ほんま最悪やで〉


身につけた服のよそよそしさで肌が隠れた。

子供騙しのように過ぎ去る刻一刻。会計のとき

〈80分17000円やけど…〉

2万でおつりないらしい、絨毯に並べた諭吉は弐枚。

上下、逆さま。

「3000円チップでいい?」

〈え?〉

「…いや、ややこしかったら、やめとくけど」

〈別にいいけど…いいの?〉

「これで、お子さんと上手いの食いに行って。足しにならんと思うけど…」


独り善がりって、心地よい。早くから母を亡くし母親代わりで男たち支えて、料理はできないものがないと自負する女。


閉じる扉と反比例して、わずかな隙間で満面の笑みを残していく彼女。色んな顔を持つ蠱惑な蛾は飛び立っていった。手をふって送り出す。それでも生きてる。羨ましかった。


あした、自分が滅亡するとしたら

最後に何をやりたかったのだろう。


「…。」


何やってんだオレ…。


“結衣…ごめん”


ゴメン。。「―」



背筋。手の甲。耳の中

ココロから発信される―ざわつくトリハダたち

上からの薄っぺらい照明に打たれ、出ていったあとの余韻を施錠する音。廊下・独りあとにして過去から居間へと辿り着く


全てを見届けた観葉植物

力なく横たわっていた


電子レンジの土鍋。〈あ―〉忘れたことに気づいたあともまだ・ほんのり(あった)かい。

夕焼け色の光が積もる頃、さいど振り出しに戻った。チンした手料理を恐る恐る口にする

。。俺にはもう。(なん)も残ってねえよ。なあ…


不味かった。ここ一番くそまずい


「…―」


かみしめる、なんて居心地の悪い


今。



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