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神谷サンちの猫―Kamiyasanchi・no・Neco―  作者: 風魔 和之
第Ⅰ匹 猫の目
6/50

#5

女―小さな声。「…“コール・ド・ガール”です。。」電子レンジが終わりを告げる。


ドアへ急ぐ心をチャイムは柔らかく鳴りひびき、せかす。解錠すると


目をあわせないで。

現れた独りの若い女性


〈こんばんは~…〉

「‥あ。こんばんは‥どうぞ」


スレンダーでかわいい―

素直に・そう思った。自分の歳に比べ、幼すぎるその顔立ち。ヒールから解き放たれた素足。フローリングに重なる


「―スリッパ使われますか?」

〈あ。はい‥。〉


少しごわついた茶色い髪。マスカラで補強された睫毛、虚無的(ニヒル)な瞳に、黒を基調とした服はバランスよく似合っていた。


靴で余白がない玄関。短い廊下の脇に並んだ焼酎のペットボトル。ミキサー。絨毯がいびつに引かれた居間。その中心に真っ白なちゃぶ台。隣にベッド。奥にはスタンドライト。右手の壁に沿って棚が並んで生活観を演出している。


そして、閉じられたベージュのカーテン。


橙色と緑の座布団があるけれど、女は絨毯にどんと腰をおとした。タバコの薫り、服から臭う

ベッドに座ろうとする神谷。女から後ろ向きで話しかけられる


〈何分ですか?〉

「…え。80分で。」

キモチは立ち止まりながらも、ベッドに到達していた


おもむろに鞄からケータイ取り出す


〈80分でーす、はーい…。〉


何気なくテレビをつける神谷の手。


〈あ。ワンピースやってる。これ車んなかで途中まで観てたんですよー〉

「そうなんやあ‥映画っぽいね。ちょっと待ってて。」


神谷は目の前で未開封のコーヒースティックとお菓子を袋から取りだし、


「いる?」


女は言葉足らずに

それでも・静かな微笑みを見せた


(ごとごと―お湯が湧いてコップにほとばしる熱々のカフェオレ。)


手渡しても、しばらく口をつけないでいたが、湯気立つコップの縁にゆっくり唇・密着させた。袖からは指がそっと顔をだしてる。テレビ見ながら、ぶつ切りの会話をしたふたり。夫なし。彼女は子持ちだった。21歳で子供は2歳


ケータイから着信音。出ない。彼氏から―だそうだ

付き合っている人がいて、お互い干渉しない関係らしい。


〈―この世界で働く子って、“うつ”になる子がおおくて…薬漬けが多いねんて‥(ウチ)は昼間、別の仕事してるんやけど、してない子はこれしかないから、ウチ何やってるんだろって、なるんやって。〉

あたしはしてないけどね―コーヒーのみながら、気がつけば30分ぐらい話していた。


〈風呂入った?〉

「うん。。一応、先入ったよ」

〈あ。そう、じゃあ入ってくるわ〉


神谷も立ち上がり、風呂場へと向かう。案内するまでもないけど、一応付き添った


シャワーが奏でる、一秒・イチビョウ。廊下に通ずる扉に背をむけ、耳はぴたり…止んだ音で振り向いてしまう。まだ、開かない。扉は拓かれた。


バスタオル巻いて姿を露呈した。


〈さむっ!―風呂、きれいやね。A型?〉

「Bやで。」

〈まじで。ウチ、きれいなお風呂じゃないと入られへんねん。汚い人多くてさー…〉


隅っこに立て掛けられた鏡を見つめ


〈なんか脚ふとない?ヤバい。家に全身鏡ないから、わからんかった。〉

重たい口を開いた「…そうか?」

〈うん。ぜったい、そうや〉髪をまとめ―結わえる〈寒いなあ‥ベッド入ろ〉


布団にくるまる。

苦い薫りは彼女の肉体から姿消していた。


〈さむくない?〉

始まりの暗示(あいず)だと認識した「せやな。」。


スタンドライトは冷めた目で眺めているからベッドの下、スイッチを押した。天井の眩しすぎる明かりを消すと温かい眼差しに切り替わり、幻想的な空間―醸し出す。


〈脱いで‥〉


言われたまま、身ぐるみはがし、仰向けになる…


ぶつぶつ唇動かしていると、

いきなり吸い付かれた


黙った神谷。


身体を授けるように見上げる


笑っていた女。


〈‥責める方がいい?責められる方がいい?〉



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