#4
「―はぁ。」
ドアから静寂は拓かれた。
暗がりの向こうには、単純すぎる平穏。閉じられたベージュのカーテン。顔を出す深い闇
【今日】コンビニのバイト辞めてきた。。
手を洗って炊飯の準備して―
全裸になった神谷は浴室へと駆け込んだ。
乾いた汗を流し終えたら、夕食に取りかかる。土鍋取りだし、冷蔵庫からいくつか食材を選定する。スマホ片手に、映し出されたレシピとにらめっこしながら、下ごしらえしていく指先。
蒸したじゃがいもとニンジンの中心に、食べ頃な鶏肉が占領している、円い世界。白菜をこれでもかというぐらい敷き詰めて、また電子レンジの扉、しめる。
600ワットで1分くらい。しばらくゆとりある時間。冷蔵庫の上、照りつけるレンジの中をじっと見ていた
あとは吹き零れないか…よく見て…
「―」
……
テレビの中に閉じ込められた。
芥川賞のあと、俺はそんな奴だった。切なさと嬉しさが同居していたとき、真希は目の前に現れた。。忽然と。華はいつか散る。絶対散る。限りある命がその人を美しく、時に強くさせていたのかもしれない。
時を彩る 新人女優の顔が、一躍、世間に馳せた あの頃
芥川賞作家、神谷の第二作『クロニクル』の助演女優に「芹沢かよ」が選ばれたことをプロデューサーから伝えられた。
数年後、完成披露試写会で特別ゲストとして出席した折、彼女に出会う
瞳が美しかった。なにより
第一印象として焼き付いた。
こぼれる笑みを見せて、そのたび愚かな自分は忙しない視線。点と点がぶつかるとき、何度も目をそらした。容赦なくじっと・みつめてくる・仕草―これが彼女と僕の大きな“差”。触れては穢れてしまう頬に、ミステリアスなその瞳。すらりと世の中をわたり抜いた身体に、ひらり垣間見える胸の奥。男心の欲と罪を包み込む・たおやかな太股
壇上ではどの出演者より、なぜかココロヲわしづかみにして離さない。
《―》
インターホンが鳴った
赤く点滅する。
受話器の“共同玄関”の文字