#6
伝う音、人工的な社会を孤立無援に遮断し、煌めきは今もなお、上空から押し寄せる
うねる川の上流を目指して嵐のような雨に道は蒸発していく。ぬかるんだ地面、ただ真っ白で動揺を背に走ってる、カーブミラーを境に交わるところ、脇道への迷宮。逃げ込めばビルの裏側、陰湿な壁、飛び散る気持ち。暗がりは川のようにつづく。浅くて淡い光の向こう岸へ辿り着けば、欄干に沿って人の流れを伝い、下ってゆく。視線を掻い潜るようにボクの身体は泥まみれでも構わない―橋から遠ざかる猫は跳び跳ねた。
次の三叉路、突き当たりまで、見えた場末の喫茶店、クローズの看板。屋根の下、垂れさがる水の連続。物で蔓延るアスファルト、急いで横断すれば、建物の僅かに許された隙間から、眺められる。静かな街の息吹。早歩きの人間と目が合う。抜け出して、道路の穴ぼこに足をとられるそいつの横顔、立ち去る背中、逆方向へ駆ける猫、今さら濡れたり、しんどいなんて、もう関係あらへんと、そういう気概でおった、耳をたて疾走する。街中に季語をふんだん散りばめる都会。廻りには、こんな境遇の猫はたった一匹だけだろう、激しくうつろいゆく景色を切り込みながら、滑走する、駅前の中央広場へと心が急かした
“―。”
甲乙のない平凡な軒並が続き、葉から落ちる滴り、遮断された長い道のり。覚束無い足取りで商店街の脇、並走するガラスに映る僕をかたどる君、肉薄の切れ味を増す瞳。シャッター通り、傘を閉じて歩き出す人目、気にせず堂々と自転車の集う森の入り口へ辿り着く。いつしか、溜まり場と化した茂み、囲まれる雑踏の間「自転車駐車場」の文字が見上げる先に掲げられている
こころ迷走しながら抜け出せばもう、茂みは後方で、去りゆくボクを静観し、途中、理髪店前の一本の柱に身をかくしてしまう、となりの整骨院。活気ある魚屋との隙間にそれる。代わる代わる店先から漂う独自の匂い、尖らせた集中力は丸みを帯び、商店街がどんどん離れていく
―。
(濡れる途の上を、発展のない視界が拡がる…淡々と中央広場の人気のなさを物陰から傍観している猫。はるか彼方で輝く銀色のビルの群れ。見続ける出入口一帯。草葉の中を待つ瞳、来る、ぜったいくる…願うのは何の根拠もないイチルノ希み、まだ待ち続けるのか、柔らかい絶望が―流れる水を道連れに、側溝へと浚っていった。)
毛先から滴るもの、来た道を戻る、うらぶれた路地裏。彷徨う小道は、やがてニッケルという団地と交わり、焼肉屋さんを越えたら、横目に、だだっ広く継続する道。急に苦しくなった。襟を立てる人間たちの有象無象、商店街に帰ってきた。目的なく前進する、アーケードから外れ、壁づたいに身を潜める仄暗い猫、しがない景色の断片で寂れた風情だけがおいでと招き入れようとする。険しい顔になる猫は何かを見出していた




