#2
響き渡る。
騒々しさを見上げた瞳。取り込み中の主人の様子を容易に想像できる。その覇気のない声、二階から誰もいない階段を通りこして、耳へと入り込む。
「え?…いやそう言われても…家には無いで…一応探してみるわ~…え?“iPhoneを探す”?」
朝っぱら。片手間に電話しながら、いつもより早くボクを二階へと引き上げた。閉ざされる銀の扉。というのも、今日はこれから、みんな出払うんだ。知ってる。これは調査済みなんだ。このまま予定どおり決行されれば、犯行は昼前ぐらいから訪れるだろう。柵の向こうで微かに細長い針の小刻が聴こえ、太くて短い針は10の文字を示している。すると住み処の門番が開かれ、現れた主人の右手には受け皿と左手から、ぶら下がる美味しそうな匂い。
仄暗い猫は肩を縮ませながら、ひとまず浅く、瞼閉じていた。また開いて、今日こそは写真の女の正体を突き止めにいく。1日限定の交流になるだろう。そう決意して、また、夢心地に戻る。
階段の踏み板はやがて静まり、やおら長閑な部屋。
対象者である女を思うほどにどうして接触しようか悩む。足元で肌触りのよき柔らかな同居者、寄り添い、ボクの体が無性にその優しさを求めてしまう。体を突っ込み、くるまれながら悶々とする。冷たい吸水を行い、臓器が動き始めるのを感じる。……さて。
とりあえず塀のなか、皿に用意されたものへ
口はダイブする「―。」
快晴の中央広場
宙に浮かぶ文字盤。指し示すのは時の在処。背中が見えてきた短針の姿を長針はただ追いかけ、11番目の地点を駆け抜けていた。
スカイブルーの背景に白亜の文字。そんな看板を見かけたら、時代に見捨てられた風情が今日の空と似ている。どこまでも広がる草原の匂い―自由気ままな希望を感じさせる一方、ひときわ遊離なオブジェ。放置されるようにボクは佇み、誰も教えてくれない空しさをその存在が語りかけてくれるようだ。
野生の血も騒いでくる
にわかに叫びでもしたら、心はもう止められない―どうしよう。。
ねんごろに
気持ちをかきたてるのは
甘くふくよかな緑だった
かちあう本能と理性。
また歩めば歩くほど揺れる荷物、噛みしめたボクに訪れた浅い欠伸。いったん足元へ落とし、爪を嘗めたら変に納得したような顔して…又、くわえなおす。三本ほど木がたっているところを道なりに左へ折れて、歩いていった。然れど、光が瞬く間に。
跳ね返された視線―交差する脚の線という線。立ち止まる目をほそめた先に映る余所行きの巨人たち。影に覆われ、風、少し薫り、通過するのを見送れば
都会への入り口はやがて静まり、固いアスファルトの上、取り残された点と線。押し黙る仄は、そのまま変わらず折り返して、きた道と向かい合わせる。何かを背に感じて、再び空へと振り返った。
この突然はいったん、ピリオドが打たれる。




