#3
朝。眠りから覚め、浅い日の光に満ちる部屋。
晩御飯も途中で、風呂、歯磨きもほったらかした気持ち悪さ、群を抜いてる。寝起き。爆破した髪の毛。今、自分が生きてると思えるこの実感。それは、また彼を眠くする
「……。」
とりあえず、歯を磨きにいこう。そしたら何かが変わるはず。速度を落として洗面台へ向かう短い距離。
冷たい水を浴びて―鏡は現実と向かい合せる。。
思えば、この”排尿障害“をもっと早く医者にいっておけば
「―」
年のせいだろう。
そう思って、市販の薬まで手を出して、まぎらわせていたっけ、たっぷり付けた歯みがき粉の噎せるようなミント味。シャコシャコしながら…
過去を遡る。ふと思い出していた。
“デビュー当時。”
きらびやかな記者会見―
上座から見渡した、あの広大な緊張感は、今でも鮮明に覚えている。フラッシュにたかれ、瞳の輝きは増長する
自信にみちた顔が紙面を踊った。
連日報道された、
芥川賞受賞の快挙―
大手書籍販売店は手のひら返したように宣伝を始めた
どんと構えて『蜃気楼』は上昇気流のなか、飛翔するように〈揉〉まれてゆく
脱サラし―数々の豪遊が始まったのもこのころだ。
テレビ出演がきっかけで各界の著名人との付き合いに、溺れた。。
〈親と疎通になったのも同じころだ〉
「………。」
まるで放蕩息子
昔の栄光で今まで食いつないできたが、預金も底が見えてきた。数は現実として重くのし掛かる
………
「歯磨き」はまだ終わらない
真希との出会い。
とあるファッション雑誌の読者モデルだった…元々は
開花するきっかけはフジテレビ系列のドラマに800人のオーディションを勝ち抜き、“芹沢かよ”として月9デビューしたこと。数年後、彼女はTBS系列のドラマに初主演を果たす。
《べぇっッ―白濁の唾を吐き出す》
めを真っ赤にして、ポカンと空いた「唇」の男―鏡の水あかのついた世界は、妖しい艶めき、シワだらけの自分…なんども途切れながら、ようやく終え、リビングに戻る
収納棚の上にポンとおかれた観葉植物。目が合う。枯れた姿を自分と重ね合わせる、まだ生き続けようと立ち尽くす姿を、どうしても捨てきれない自分がいる
枯れてもなお、水をあげる神谷がいた。




