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神谷サンちの猫―Kamiyasanchi・no・Neco―  作者: 風魔 和之
第Ⅰ匹 猫の目
4/50

#3

朝。眠りから覚め、浅い日の光に満ちる部屋。


晩御飯も途中で、風呂、歯磨きもほったらかした気持ち悪さ、群を抜いてる。寝起き。爆破した髪の毛。今、自分が生きてると思えるこの実感。それは、また彼を眠くする


「……。」

とりあえず、歯を磨きにいこう。そしたら何かが変わるはず。速度を落として洗面台へ向かう短い距離。


冷たい水を浴びて―鏡は現実と向かい合せる。。


思えば、この”排尿障害“をもっと早く医者にいっておけば


「―」


年のせいだろう。

そう思って、市販の薬まで手を出して、まぎらわせていたっけ、たっぷり付けた歯みがき粉の噎せるようなミント味。シャコシャコしながら…


過去を遡る。ふと思い出していた。



“デビュー当時。”



きらびやかな記者会見―

上座から見渡した、あの広大な緊張感は、今でも鮮明に覚えている。フラッシュにたかれ、瞳の輝きは増長する


自信にみちた顔が紙面を踊った。


連日報道された、

芥川賞受賞の快挙―


大手書籍販売店は手のひら返したように宣伝を始めた


どんと構えて『蜃気楼』は上昇気流のなか、飛翔するように〈揉〉まれてゆく

脱サラし―数々の豪遊が始まったのもこのころだ。

テレビ出演がきっかけで各界の著名人との付き合いに、溺れた。。


〈親と疎通になったのも同じころだ〉


「………。」


まるで放蕩息子


昔の栄光で今まで食いつないできたが、預金も底が見えてきた。数は現実として重くのし掛かる


………


「歯磨き」はまだ終わらない


真希との出会い。

とあるファッション雑誌の読者モデルだった…元々は


開花するきっかけはフジテレビ系列のドラマに800人のオーディションを勝ち抜き、“芹沢かよ”として月9デビューしたこと。数年後、彼女はTBS系列のドラマに初主演を果たす。


《べぇっッ―白濁の唾を吐き出す》


めを真っ赤にして、ポカンと空いた「唇」の男―鏡の水あかのついた世界は、妖しい艶めき、シワだらけの自分…なんども途切れながら、ようやく終え、リビングに戻る


収納棚の上にポンとおかれた観葉植物。目が合う。枯れた姿を自分と重ね合わせる、まだ生き続けようと立ち尽くす姿を、どうしても捨てきれない自分がいる


枯れてもなお、水をあげる神谷(じぶん)がいた。


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