#10
十字架を担ぎ、共に歩いてくれる存在…牧師は滔々と諭す
静かな笑みを浮かべた。神の試練ではないか―罪の意識などない。ただ、ラスベガスの夜で生きているうち、彼は見えなくなっていたんだろう…。
未明の路地。
通りすぎようとした怪人に、暴漢たちは牙を剥いた―翌朝、病院に搬送され、それがマフィアの仕業ではないかと記事は煽る。重傷を負ったルーカスに人々は身の危険を知り、騒ぎたてる。表舞台から怪人の名は姿を消した。意識が闇をさ迷うなか、唯一、ヴィクトリアだけは献身的な愛情により、寄り添っていた。見えない十字架の存在。彼は次第に畏れ始めてゆく。己と向き合い、贖罪の物語が幕開くまで。
ルーカスは気づく。今までの自分は客観的に虚しい―嫌いだと。
ヴィクトリアとともにルーカスを支えた存在ー町の失業者たちは彼のギャンブルに対する目的さえ大きく変えた。そしてまた一人、運命を左右する者が現れる。怪人ルーカスの本性について知っていると豪語する老女クル。爬虫類の如き鮮烈な左眼をもち、右目の視力はとうに喪っていた。クルによって、その宿命に引きずり込まれてゆく
老女はいう。自分は何者だったのか―記憶は欲しくないか?人生を賭けたギャンブルに、ルーカスは挑戦するしかなかった。
嘲笑、否定、バッシング。老女に追い込まれる展開になり、後半、接戦まで持ち込んだが制することは出来なかったー。敗北者の烙印を押されたルーカスに世間の関心は冷ややかなものだ。無一文となり、勝ち続ける使命から解放されたが、ヴィクトリアは父親の策謀で引き離され、ルーカスにとって大いなる愛さえ失ってしまう。
渇いた心、それは潤いを求めて、更に渇くのだ
“……”
―と、ここで主人の唇は止まり、何ども手を加えた。
思わせ振りな指先‥キーボードを叩く音―非現実の扉は呆気なく突き放した。無機質な音は途絶えたり、再生したり…織り成す波紋がまるで人気のない道のりに佇んでる、そんな気分へ誘う
机によじ登ること、ボクはそれで欲求を解消しようとした。主人は察知して解放してくれた。
繰り返される、そんなたわいのない日々の出来事
《―。》
はりさけぶ床に引っ込めた頭
主人は地鳴りの震源地をわしづかみにした。眼はちっぽけな個体と向き合う。いつも一緒で、相対するときは、主人の首を必ず同じ角度にさせる‥いわゆる“すまほ”という奴だ。取り戻したはずの静寂はよりいっそう研ぎ澄まされる。見上げる先に言葉なんてこれっぽっちもない。曇り空が広がっている。水気を含みすぎて今にも降りだしそうだ
最近、やたらメール、電話しては浮かない顔して…多分、あれは女だ。主人と向き合う形で、目線の高さの位置に飾られてる写真がある。あの若い女、ぼんやり眺めていることがたまにある
悩んでいる種はその人間の女?
なにもかも“でんし”の時代だとチュンさんは言っていた。それなのに、だ。アナログな写真は部屋の中で浮いてるけど、主人にとってかけがえのないものだって、放たれる匂いでわかるんだ。“すまほ”や“ばそこん”にない、その瞳の意思は何か違う。
でもボクは無性に気分が悪い。倦怠感が胸を渦巻き、ぐるぐる締め付けてくる。ボクの生き方にはなんの関係もないのに。この鼻が探りにかかる理由、まだわからない。
【エネルギーをすいとる寄生虫】




