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神谷サンちの猫―Kamiyasanchi・no・Neco―  作者: 風魔 和之
第Ⅲ匹 猫に小判
33/50

#8

“―!”


絨毯へ叩きつけられた其らは非常に無力な物体と化した。唯一、注がれるのは仄の興味。無臭の好奇心に包まれ降り立ち、主人のくるぶし付近で失速する・目を引いたのは

様子見で、それでもどこか無警戒な存在。なぜかゾクゾクする。ちょっかいをかけたくなるんだ


転がる。転がる。

夢中になってると、ベッドの下へ―そいつは逃走した。

仄は暗闇さえいとわず、滑り込んでいった。追いかけようと、腹這いで深く潜る。影に反応し切れ味よい瞳。煌めいてる


“仄―”


訪れた主人の呼ぶ声。。

だんだん居心地よく、天井はやたら低いけど、さっぱりした暗やみ、自分の丸めた背中を伸ばし、区画整備された光の向こう。主人のくるぶし、やってくる。意外なほど近くで燻っていたソイツは、意思を持った巨大な手によって回収された


ヒカリに出るとき―

頭をぶつけるほどの低い限界はなくなり

代わって届かない高さだけがぽつんと広がる。彼奴(あいつ)を救う努力空しく、ボク自身、回収される。無力なほど、じっとしてしまう。机の上まで接近すると、手向けるように開放される。景観は主人の胸板とおなじ目線。優越感だけ惹き付けるけど、足許の領域は、意外と狭い


牙城(ぱそこん)”の周りを取り囲んだ書類の撒き散らしように、先の丸まった鉛筆が固まっている。消しゴムが、そこらじゅうに残した足跡。主人は牙城(パソコン)をそっと開き、謎めかしい瞳でオモムロにボクへ語りだしてきた。苦笑いしてる。万策尽きたのだろうか。小説家の孤高ぶりにボクは机から主人の膝へ飛びうつる。柔らかすぎず、ほどよく固い、優しさにみちあふれる空間。


執筆中の小説の構想(こと)、仄に告げた。


最初は筋書きに怪訝なボクさえ、

だんだん非現実の扉、みえてくる。


幕は何食わぬ顔で開けた。その見知らぬ向こう側に


のめり込んで行く。


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