#8
“―!”
絨毯へ叩きつけられた其らは非常に無力な物体と化した。唯一、注がれるのは仄の興味。無臭の好奇心に包まれ降り立ち、主人のくるぶし付近で失速する・目を引いたのは
様子見で、それでもどこか無警戒な存在。なぜかゾクゾクする。ちょっかいをかけたくなるんだ
転がる。転がる。
夢中になってると、ベッドの下へ―そいつは逃走した。
仄は暗闇さえいとわず、滑り込んでいった。追いかけようと、腹這いで深く潜る。影に反応し切れ味よい瞳。煌めいてる
“仄―”
訪れた主人の呼ぶ声。。
だんだん居心地よく、天井はやたら低いけど、さっぱりした暗やみ、自分の丸めた背中を伸ばし、区画整備された光の向こう。主人のくるぶし、やってくる。意外なほど近くで燻っていたソイツは、意思を持った巨大な手によって回収された
ヒカリに出るとき―
頭をぶつけるほどの低い限界はなくなり
代わって届かない高さだけがぽつんと広がる。彼奴を救う努力空しく、ボク自身、回収される。無力なほど、じっとしてしまう。机の上まで接近すると、手向けるように開放される。景観は主人の胸板とおなじ目線。優越感だけ惹き付けるけど、足許の領域は、意外と狭い
“牙城”の周りを取り囲んだ書類の撒き散らしように、先の丸まった鉛筆が固まっている。消しゴムが、そこらじゅうに残した足跡。主人は牙城をそっと開き、謎めかしい瞳でオモムロにボクへ語りだしてきた。苦笑いしてる。万策尽きたのだろうか。小説家の孤高ぶりにボクは机から主人の膝へ飛びうつる。柔らかすぎず、ほどよく固い、優しさにみちあふれる空間。
執筆中の小説の構想、仄に告げた。
最初は筋書きに怪訝なボクさえ、
だんだん非現実の扉、みえてくる。
幕は何食わぬ顔で開けた。その見知らぬ向こう側に
のめり込んで行く。




