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神谷サンちの猫―Kamiyasanchi・no・Neco―  作者: 風魔 和之
第Ⅰ匹 猫の目
3/50

♯2

(ただいま)

心の中で呟いて、無言で帰宅すると目覚めたように点灯する玄関照明。(お帰りなさい―。)まるでそんな風に口ずさんでいるのか。限りある光で迎える、自宅の匂い。急いで廊下のスイッチを押す。


ほんのり冷たいフローリングで履き替えた草履、突き進む。


【夜。】1Kの独特の生活感


駆け出しの大学時代に逆戻りした今がある。母との会話から時間は無駄に過ぎ、海なんか見ようと思い立って、夜空の海岸へ向かったっけ


【……。】


今朝から何もかもが凍りついた空間。着替えもせず、温かそうなベッドにダイブする―。


(…)


いつから、間違えたんかな


…俺ん中の、人生。


(真希(まき)。)


天国か極楽か知らんけど


お前がいる世界なら、まだなんとか


安心して‥。。


優しくも切ない。微笑んだ女性の残り香を思い出す。


《―》


瞼が半落ちする、ちょうどその手前。

眠りにつく予感を、ポケットはさえずる。むくっと起き上がる―微かに反応したスマホを取り出し、見上げた天井の色。


“結衣―、”


彼女からだ‥LINEのメッセージが表示されている。意味もないコンタクト。。神谷は充電器に差し込んでいた。ピースしている人型(ひとがた)のスタンプ。しばらく二人だけの空間。


考えなくていい。自然のやりとり。いつまでも、いつになっても、夜は繋がっているみたいで、いいオッサンの夢中してやってるこんなこと


“みて!桜すごく綺麗(きれ)くない?”


彼女から―桜のスナップが届けられる。稚拙な黄色―中心部の雄しべ。そこから純朴な白が健気に開く。

重なりあい、

集まり会えば、揺らめき、儚い、花びらたち


力強く伸びる木の腕


いくつもの写真に、融合する気持ち

彼女に告白することを迷う。。なんども。さりげなく決意してみても、やっぱり言葉に出来なかった。結衣は明日仕事にいくと思う。俺は明日、コンビニのバイトをやめようかと思う。それさえいえず、コンビニ弁当を(あった)めたものに箸がいく。


やりとりは午前一時まで及んだ。意識がふとした瞬間、暗い深層部に吸い込まれていった



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