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神谷サンちの猫―Kamiyasanchi・no・Neco―  作者: 風魔 和之
第Ⅱ匹 猫は三年の恩を三日で忘れる
18/50

#4

さりげない美しさ。午後―熟した陽射しを受け、葉の衣は輝きつづけている。漠然と広がる緑、二匹の瞳は相対(あいたい)する


黒猫が先に動いた。


…ロン、

(…)

…今までどこにいた?

(…‥。)


年上だから、無下にその瞳からの威圧、避けられない。


〈どこにいたんだよ。〉

パチケンの目線を一瞬、喉もとに感じる


(伏し目がちの林たちは、ボクらしかいない陸地に興味津々なのか―噂話で持ちきりだ)


気づけばボクは、ここに至るまでの生き方を喋り始めている

藪道のやりとりは果てない「時間」を思い出させる。

パチケンは中盤でボクの話を遮った


〈あいつらが待ってる。行こう〉


他の仲間がいるという街に戻る。バッタについてゆき、通り抜けた記憶、ここから―遡る、窓のない灰色の建物が砂利道の両端に並び、それぞれ個性あるけど背丈は短い。がんばれば、届きそうな最上階。何か文字が掘られている。よくみれば、その()も人間界の言葉で溢れていた。萎れた(おお)きい花が建物の前、筒に飾られている。

ソラのした、冷たい沢山(たくさん)の色艶、空虚なこの街に 突然 パチケンは声を挙げる。鳥たちは羽ばたく―喝采―待ちぼうけの隣同士。背後からそろりそろり姿をあらわした―


一匹のぶち猫。


じっと、見られ

《あっ》という間に沸きおこる感情。


眼が引っくり返りそうになった。何かの音がして振りかえると、すぐ近くの建物の上、乗っかった茶色い雄猫。ボクは、めいいっぱい、叫んだ。


みんな…みんな‥


白黒の不可思議な紋様のぶち猫ウーピンと、しましま模様がまるで、ちっこい寅のようなチュンさん。ウーピンはみんなより(おっ)きな体…元気やったか?

髭を気にしながら、貫禄ある目鼻立ち


〈ロン!〉急に飛び降りてー声の主何事もなく、ゆっくり近づいて来る


…久しぶり!なにそれ首輪?まじまじ見てくるだけで〈そっか。よかったなあ〉チュンさんだけはすりよってくれた。


隣のパチケンの視線は尖ったまま。昔から変わらないその端整な横顔


ウーピン・眼を細める。人間様はええか?うらやましいなあ~エエもんでも食わしてもらったか―‥


ボクは照れながら、頸を横に振るだけだった

周りに巡る多種多様な雰囲気たち

発せられる自分の名前の響き―

久しぶりに聴いた


《思い出す》


切なくて・忘れかけていた真実。


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