#4
さりげない美しさ。午後―熟した陽射しを受け、葉の衣は輝きつづけている。漠然と広がる緑、二匹の瞳は相対する
黒猫が先に動いた。
…ロン、
(…)
…今までどこにいた?
(…‥。)
年上だから、無下にその瞳からの威圧、避けられない。
〈どこにいたんだよ。〉
パチケンの目線を一瞬、喉もとに感じる
(伏し目がちの林たちは、ボクらしかいない陸地に興味津々なのか―噂話で持ちきりだ)
気づけばボクは、ここに至るまでの生き方を喋り始めている
藪道のやりとりは果てない「時間」を思い出させる。
パチケンは中盤でボクの話を遮った
〈あいつらが待ってる。行こう〉
他の仲間がいるという街に戻る。バッタについてゆき、通り抜けた記憶、ここから―遡る、窓のない灰色の建物が砂利道の両端に並び、それぞれ個性あるけど背丈は短い。がんばれば、届きそうな最上階。何か文字が掘られている。よくみれば、その他も人間界の言葉で溢れていた。萎れた巨きい花が建物の前、筒に飾られている。
ソラのした、冷たい沢山の色艶、空虚なこの街に 突然 パチケンは声を挙げる。鳥たちは羽ばたく―喝采―待ちぼうけの隣同士。背後からそろりそろり姿をあらわした―
一匹のぶち猫。
じっと、見られ
《あっ》という間に沸きおこる感情。
眼が引っくり返りそうになった。何かの音がして振りかえると、すぐ近くの建物の上、乗っかった茶色い雄猫。ボクは、めいいっぱい、叫んだ。
みんな…みんな‥
白黒の不可思議な紋様のぶち猫ウーピンと、しましま模様がまるで、ちっこい寅のようなチュンさん。ウーピンはみんなより大きな体…元気やったか?
髭を気にしながら、貫禄ある目鼻立ち
〈ロン!〉急に飛び降りてー声の主何事もなく、ゆっくり近づいて来る
…久しぶり!なにそれ首輪?まじまじ見てくるだけで〈そっか。よかったなあ〉チュンさんだけはすりよってくれた。
隣のパチケンの視線は尖ったまま。昔から変わらないその端整な横顔
ウーピン・眼を細める。人間様はええか?うらやましいなあ~エエもんでも食わしてもらったか―‥
ボクは照れながら、頸を横に振るだけだった
周りに巡る多種多様な雰囲気たち
発せられる自分の名前の響き―
久しぶりに聴いた
《思い出す》
切なくて・忘れかけていた真実。




