#3
都会の田圃一面に凌駕する花。
蜂は踊る路傍の空。
浮き雲てんてん‥スローに流れゆく。精いっぱい、伸びる青々とした茂みをかきわけ、出てきた知らない街。風は大地に伝わり、名前さえ知らない川を渡る気がした
その街は袖が半分しかない人で溢れていた
平々凡々に車が通りすぎて、仄暗い猫は、歩道の白線を歩いていた。いったい、どれくらい歩いただろう
《蝉の大合唱は終わった―》
いや、まだ始まったばかり。緑の観客席が鮮やかに喜んでいる。もういいよ―。気が遠くなる
(飲んだくれの蚊はふらふら横切ってった)
現実へ戻る境目。一人と1匹の犬が鼻をきかせ、前からやってきた。シカトしてやった、主人と思われる人間によく似た無愛想なヤツだ。
緑は薄れ―電線を青空へ蔓延らせた住宅街、現る
《汗ばむ太陽》
そんなことおかまいなく、斜に構える建物たち。余所行きがおで脇道を歩いた。つんとする路地裏を通ると柵があり、すり抜けたら、驚いたのは雑草たち、新しい足跡残して、未開拓の細道かいくぐる。振り返らば人間たちの住処、鬱蒼とした中で、小さく見える
今、目の前にあるのは土臭い斜面と終わらない、旅。無我夢中で突き進むと、平坦な道に表情和らぐ。固い感触。アスファルトに出た。木漏日を浴びた石段。狭まる視界の先に忽然と現るもの
時なき奥行に誘われた・まずは一歩。浅はかな二歩、やっぱり引き換えそうと思った三歩。もうここまで登ると、理由なんてわからない。十歩目。なんだかんだ愚痴をこぼしつつ、いつのまにか辿り着いていた
ここに頂上がある。
古いけど。足腰の強そうな「城門」。口を豪快に開け、見下ろしてくる、どこかの国へ迷い込んだのか。でも来るもの拒むことなく静に受け入れてくれた、ほんとはイイヤツなんだ。国じゅう砕け散った砂たちで溢れている。繊細な波紋を湛え、その一部始終止まっているかのよう。息をすることさえ忘れ、しばし眺めていた
ため息飲んだ
夢破れたように、輝くもの
蝉たちが讃える日射しの向こう―
眩しくて細めた眸、しゃしゃあ煩い―髭が垂れ落ちた猫は尻餅ついてる
もしかすると答えはあるのかもしれない
思い立った、「お城」は人間がいっぱい居そうだから避け、見つけた街角。人通りはない。身軽なバッタが跳ねて前をゆく。ボクを横目で見て、顔色ひとつ変えず、去り行く後ろ姿。住民なのか…興味本意で、ついてったら、寂れた街を出てしまい、ざわめく林の唄、藪だらけの道と出会った。木の葉の影ゆらめいてる。怪しいけど、人の跡絶えた神秘な世界につられてしまった
《ロン!》
雑木林の喧騒を透き通る鳴き声
耳をピンと立て
繁みから現れたのは一匹の黒猫。
《…お前、無事だったのか》
領域保ちながら
険しい顔する雄猫は、刀のような鋭い眼をしている
仄暗い猫は、ようやく気づいた
……パチケン?
その声と姿に
どうやら、ボクは もういちど出会うことが許された




