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第1匹 猫の目
誰もいない
公園。
埋没していく太陽
“……。”
心なしか・もの悲しそうに移るオレンジ色の情景
知らない街の向こう側。
光と影のシンパシー
不思議なコンクリート遊具の上で丸まった一匹の仄暗い猫
……、
暮れ泥む小さな背中。
(脱原発)と掲げられた新聞紙が路頭に迷う
寂れた鉄製のゴミ箱
しゃなり・しゃなりと、慣れた手つきで降り立つ―
歩を進め、向かう先は細道の昏い世界
すううと、潜り込んでいった
精いっぱい光輝いたあと、飛び立つカラスが喉をならすとき、不安な闇は
たちまち夜へと姿かえてしまう。
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それはまだ、総理大臣が小泉さんの頃‥
『蜃気楼』という一冊の本が誕生した。
彼はその本を手に彗星の如く・現れた
純文学の新人作家に贈られる最高権威『芥川賞』を授賞、鮮烈なデビューを果たす。
神谷龍之介―Kamiya・ryunosuke―
4十五歳
小説家。
第二作目『クロニクル』
発表後、映画化もされ日本のジャーナリズムを席巻した。
一斉風靡した女優と結婚。
公私共に順風満帆だった。
〈しかし〉半年後その妻と死別
深い悲しみは、神谷の筆を休めた
現在…神谷は独身。子供なし
郊外のマンションで、日々淡々と過ごしている
今ではひと回り以上年下の一般人と付き合っている―そのことさえ
お茶の間には届かない、まさしく‥過去の人だ
そんな神谷に転機が訪れる
“え?”
「…‥骨転移してますね」
おそらく 1年以内の生存率は、50%でしょう
【……え】
2012年3月。 腰痛で医者にかかり、面と向かって 余命半年を宣告されていた