第五章 涙
ぼくらは一分程度で三角公園に着いた。さすがに雪が残っているだけあってまだ息が白い。三角公園とはその名の通り三角形の形をしている。そこにはブランコと、木で作られた可愛らしい机とイスしかない。何の変哲もないところ…。ぼくはこの公園が好きだ。だってこの公園に来る人は数えるほどしかいないから…。
「あそこに座ろうか」
ぼくは例の木の机を指さす。
「私ブランコが良いなぁ。」
そいつは呟く。ぼくの苛つきはピークに達しそうだ。このわがまま女め…。さっきと感じが違うじゃないか。
ぼくらはブランコに乗った。ぼくはこのブランコも好きだ。だって空を見ながらこぐと空を飛んでるような気持ちになれるから。ぼくらは五分くらいお互い黙ったままブランコをこいでいた…
「ねぇ…」
そいつが先に沈黙を破った。
「何?」
完璧な笑顔で返すぼく。
「あんた…なんでそんな無理して笑うの?」
「…」
ぼくは意外な言葉に驚いて声がでなかった。焦った。ぼくの完璧な仮面が見破られてしまった…。どうしよう…まず落ち着いて平常心を保たなきゃ…。じゃなきゃまたあの時みたいになってしまう…。
「無理してなんかいないよ」
ぼくはできるだけ平常心を装った。
「うそだ。」
そいつは言い返してきた。 苛つく…。
「嘘じゃない。」
「絶対にうそ。」
「嘘じゃないってば。」
…
ぼくらは変な言い合いを始めていた。ぼくは焦りと共に苛立ちもつのらせていった…。そしてぼくの苛立ちは遂にピークをむかえる。
「違うって言ってんだろ!!うるさいんだよ!このわがまま女!最悪だ!」
ぼくは息が荒くなった。キレたことなんてほとんどなかったから…。
はっ!しまった…。
そう思ったときにはもう遅い。ぼくの仮面は完璧に全てはがれて落ちていた…。あの時の場面がぼくの中によみがえる。
最悪だよ…。ぼくは後悔した。
「そう…。それが聞きかったの。」
ぼくは驚いて晶を見た。晶は偽りのない笑顔でぼくにほほえんでいた。太陽の光がちょうど晶の髪に当たっていた。淡い茶色の長い髪が風になびいてた…。ぼくの眼から一粒の涙がこぼれた。
「ちょっ…なんで泣くのさ。」
ぼくの中で蓋がまた開き始めた。ガタガタと音を立てて。でもぼくはそれを押さえ込もうとはしなかった。
「うるさいなぁ。分かんないけど出るもんは出るんだよ。」
言葉ががさつになる。
「ふーん。そうなの。じゃあ今の内出しとけば?」
晶は何事もなかったかのようにまたほほえんだ。
「そうしようかな。」
ぼくはそう言いながらなぜか笑った。晶も優しくほほえむ。二人の間になんとなく暖かい空気が流れた。
あの時君の手が少し震えてた。ぼくはそれに気づかないふりをした。
ねぇ…もし気づいていたこと伝えてたら
君は今も笑ってた?