第九章 月明かり
ぼくはブランコに近づいた。少し怖かったからゆっくりと…。
そこには…誰も居なかった。ぼくの目の錯覚だったらしい…ぼくは安心したようなそうでもないような気持ちになった。心のどこかで何かを期待してたのかもしれない…
「はぁ…」
ぼくはブランコに腰掛けてため息をついた。そして空を見上げた。星がとても綺麗で輝いていて涙がでそうになった。なんだか世界中にぼく1人しかいないみたい…
そんなことを思っていた…。
「ハックシュっ」
突然どこからか、くしゃみが聞こえた。ぼくは、そのくしゃみがした方へ振り向いた。例の可愛らしい木の机の後ろから長い髪の一部が少しだけ見えた。その髪は風と絡まり合って遊んでいた。
「だれっ!?」
ぼくは驚いていて、見慣れているはずのその髪が誰の物なのか分からなかった。
「ちぇっ…見つかっちゃった」
茶色い髪、月明かりに照らされてより白く見える肌。極めつけには大きな瞳
「晶…」
そう、そこには晶がいた。
「よっ!なんでこんな時間にここにいるの?」
いつもと変わらない様子の晶。晶は笑いながらぼくの方に近づいてきた。
「それはこっちの台詞だよ!晶こそなんでここにいるの?」
ぼくは夕方の苛立ちのことなどすっかり忘れてしまった。それくらい驚いてしまった。でもそれ以上に何故か胸が高鳴った…。
「うーん…まぁいろいろあってね」
苦笑しながら晶はそう言った。
「和磨はなんで?」また問われたのでぼくは夕方の出来事を思い出した。
「何故かここに来たくてたまらなかったから…そんなことより…」
ぼくは口ごもる。
「そんなことより?…何?」
晶はキョトンとしている。
「今日は…怒ってしまってごめん!晶は何も悪くないのに…本当に悪かった。」
ぼくは晶の顔を見れずに俯いて謝った。晶はどんな表情をしているのだろう…嫌いにならないで…
「気にしてないよ…」っ…?ぼくは顔を上げた。
「和磨は私を泣かさせた人だもん!少しくらい…へ…いき…」
言いながら涙が出ている晶。あわてて手で目をこすって、平気だよっ!っという顔をした。ぼくは胸が痛んだ…。
「平気じゃないじゃん…そんなに傷つけてたなんて…ぼくはどうしたら…」
ぼくはうろたえた。
「違うの…」
「えっ?」
「傷ついて泣いてるんじゃないの…」
「じゃあ…何で?」
「嬉しくて…」
…?良く分かんない…晶は何が嬉しいんだ?こんな奴前にして…あぁ自分で言っといて情けない。
「和磨が…和磨が私のこと嫌じゃないみたいで…それが嬉しくて…」
そういうとしゃがみ込んでまた泣き出してしまった。ぼくはそう言った晶を見て肩が軽くなった気がした。
「晶…顔上げてよ」
「えっ?」
顔を上げた晶の目が真っ赤に充血していた。
「晶はぼくのこと嫌いじゃないの?」
「そっそんなはずないじゃん!」晶はとんでもないと言わんばかりの顔で言った。
ふう…
「ぼくも…晶に嫌われいないか心配だったんだ…でも良かった。そうじゃないみたい」
ぼくは笑いながらしゃがみ込んで、晶と目線を合わせた。涙で濡れた頬をぼくはコートの袖でぬぐってやった。
「あはっ」
「あははっ」
自然とこぼれる笑み。ぼくらは月明かりの下で笑い合った。
そして僕らは暗闇の中、手をつないで僕らのアパートへ帰った。
ねぇ…あの時ぼくはきっと君に会いたくて…会いたくてたまらなくて…あそこへ行ったんだよ。
君はどんな気持ちでここに来たの?
読んで下さっている皆様大変長らくお待たせしてしまい、申し訳ありませんでしたm(__)m次回は少し急展開するつもりです(^^;)もし時間があればで宜しいのですが、できれば目を通してやって下さいm(__)m