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一人の寄生虫が人類を滅ぼすまで

作者: uzR
掲載日:2026/05/03

私は寄生虫である。

多く取り憑いた人々は語り部を装う。

その話の中で印象を残した時もある。

いまも、人間の個性とやらはよくわからないが、人の残したゆえに、私は一生巻き込まれるのだろう。

 視界が変わった矢先に、口の中が気持ち悪くて、少し吐いた。

視界は歪み、頭の中が半分溶けて、もう半分では腐りそうな匂いがする。

この体は長く持たないだろう。

すぐに感じられた。

次にすることと言えば、手元にある酒瓶を一つ、丸ごと飲むくらいだった。

気分爽快、とはかけ離れている。

そうだ、自分は直接アルコールに侵されることはない。

自ら養分を必要としないこの体は、宿主からの供給に一切応えない。

あるのは意識だけだ。

 山の中にあるこの小屋の中で目を覚ますと、この男が掠れたいびきを上げて寝ていたので、体を使った。

怠惰な男の匂いだ。

頭の中に入ると、いつも怠惰と、酒の匂いが充満した空気に包まれる。

実際の酒の匂いというよりかは、念のようなものだが。

空になった酒瓶を脇に置き、すぐ横にあった小屋の扉に手をかけて、ゆっくりと開く。

ぎいと放つドアは、死にかけのようだ。

妙にしんとしている。

山でしかも夜に、この男は何をしにきたのだろうか?酒でも飲みにきたのか?

随分と物好きな奴もいるものだとも、一人になりたい奴も意外と多いという経験則も頭に浮かぶ。

近くに何かあるだろうか。

終始暗くて何も見えない、特にこの体は目を使うのが不得意なようだ。

 うーんと、この後は確か、朝になるまでに大きな何か動物の死体を見つけたのだったか?

そしたら男が反射的にそれを踏みつけてしまったから、汚らしい足が邪魔で仕方がなかった。

そうだ、そのあとは、街へ降りる途中で、あまりに寿命が近づいていそうだったから、そのまま川へ落ちて死んだのだったろうか。

 他に印象的なのは、、、そうだ、酒の匂いがしなかったあの日、初めて空気の価値を知った気がした。

いつもに比べ背が小さかった。

そして空気が違った。

そのおかげで、初めは体に入っているのかよくわからないくらいだった。

怠惰の匂いは相変わらずであったが、これは人に共通しているのだろうか。

平成の、夏?

どこかで誰かがそんなことを、、、?

、、、。

 空気とは人に命を与えるものだと初めて感じられた。

怠惰ではあったが、それは堕落ではなかった。そのあとは普通だった。

もういやになるくらいいろいろ知った。

教育なんてもううんざりだ。

 次は、、、そうだ、結構前の話。

縄文時代、と呼ばれている。

怠惰、というより野生の匂いがすごかった。

未来の人たちが言っていたことは大体あってた。

機関やまとまりなんて薄っぺらいし、

あと、きのみとか食ってたんだったかな。

今の人間が食べなさそうなものも、食べれなさそうなものもあった。

味覚とかもう覚えてないけど、中には美味しいのもあった。

あれ以降2度と食べてないけど。

あとはまあ、楽だったかな。

極悪犯罪者の顔をなん度も見ずに済んだし、人間関係とか今よりずっと楽だ。

あと、周りが馬鹿すぎて困るくらいだったから、自分で新しい発見をするのが楽しかったかな。ただ、今より厳しい労働環境だったが。

今の奴じゃ耐えられないだろうな。

 そうだ、人生最大の恐ろしい体験もした。

自分が犯罪者だと知ったのは、死んでから随分経ってからだった。別に殺しの手伝いをしたわけではないが、すぐに死んだからな。

その前にどんな行動してたかなんて詳しくは知らない。

酒と、怠惰の匂い。

けど、怠惰に混じって、何か別のものを感じた。

他の言葉で表すなら、憔悴に近いか、いや、そこから殺意のどっかに当てはまるだろう。

何度も見たから、自分の顔として見たことがないのに、一番思い出せる顔だ。

初めて見たのはその2つくらい前の人間の時。

最後に見たのはその30こくらい後の人間だ。

1、2つくらいの前の人間の時が一番みた。

一つあとはすごく問い詰められた。

死体の人間、そして極悪犯罪の犯人とも関わりがあったらしい。

そりゃあな、服に血がついてたんだ。

犯人の。

まだ子供だったのに、何をしでかしたのか、しかし考えてもその子供には何もしていないことしかわからなかった。

あれ、なんか記憶が思い起こされたような。

子供って、そのあと何もなかったんだったかな?

結構長く生きて、最後は、普通に死んだか?

、、、誰だっけ?

まあいいか。

 そう、世界中が大騒ぎだったあの事件も忘れちゃいけない。

世界滅亡レベルの話だ。なんでも、自分が世界を救うために立ち上がったヒーローだったんだからな。

途中から人が変わったことは、きっと誰にもバレちゃいないさ。

結論から言えば、失敗したんだ。

だからその前のやつの姿は誰も見てないさ。

そう、あの男の顔を見たのはこの時が最後だったかな。

勇敢に大失敗したヒーローの顔は、誰にも覚えられなかった。

あの大犯罪者の顔は、あんなに長く言い伝えられてたってのに。

少数の生き残りの間では、過去も、未来のことも残らなかった。

あの日、誰が悪かったのか。

ん?

、、、あっ。

、、、そっか、私たちか。

 あの日世界中が待ち望んでいたのは、隕石の破壊もしくは軌道の修正であった。

縄文人の作ったと言われる世界最大の機密データ、その一部が記された書物が存在した。

それは、現代の人なら解き明かせる、と研究は最近になって始まった。

結果、内容は非常に奇妙なものだった。

根拠とともに、人類滅亡の危機について記されていた。

人類史上最大の危機だ、そう思った科学者たちは、その肝心な対策方法の書かれたページを探したが、見つからなかった。

幸い、その書物は特別な素材から作られていたため、どれがその書物であるかは一目見ればまるで明白であった。

しかし、見つかったそれは復元不可能なまでに損傷した残骸だった。

 持ち出した犯人を突き止めようと初めに動いていたのは、一人の男だった。その男は浮浪者で、酒飲みで、まるで怠惰な男だった。

だが、研究者たちがこの書物の残りを探すことに賞金をかけたために、男はこの一大事件に終止符を打ってやると自身を鼓舞した。

誰よりも早くとばっちりな推理で当てられた山の奥、彼が人生を壊すきっかけとなった人物のいる地へ赴き、すぐにそいつを書物を盗んだ犯人として殺害した。

生憎男は目が悪く、場所は全く異なるところであったが、賞金のかかった書物をたまたま掘り当てた人間を殺害し、奪うことに成功していた。

その後男は体調を崩したあと、すぐに川へ飛び込み全身血だらけになって死んだ。

 一人の少年が男を見つけ、書物を見つけた。

勉学に励んでいた少年は、書物の内容を理解し、そしてこの秘密を誰にも知られまいとし、自らの小さなメモのみを残して、川へ放った。

結果、人類は、人類滅亡の危機から逃れる術を失った。

あの時復讐に燃えた人、自分の人生を怠惰に過ごして失った人、そしてその元凶をずっと前から作った人、それが原因で全ては失敗に終わった。

 全て、自分のことだ。

シェルターに残ったわずかな食料は、もう尽きかけようとしている。

隕石からの衝撃に耐え、意識ないまま運良くシェルターにまで逃げ回ったこの体で、この場所で、もうこれ以上人間のお話は進まないだろう。

なら、過去を見せてやろうじゃないか。

きっと、シェルターの外は、今よりずっと見てきたものが残っているはずだ。

見せてやろう、この私が、あの、怠惰な人間たちに、最後の感謝の印として。

 一週間ほどして、シェルターの最高責任の管理権限を持った人物に乗り移った。

そして”私”は、”自分”で、ハッチを握り締め、ゆっくりと、外の世界への扉を開いた。

〜終わり〜

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