夜に歩く理由
「スケルトンが毎晩、住宅街に、ですか……」
「皆さん困ってるみたいなんです!アルドさん、この依頼、どうですか?」
依頼を取ってきたエルナさんは張り切っているよう。
最近は副リーダーの自覚が出てきたのか、こういう細かい所で頑張ってくれていて……
嬉しい限りです。兄のような気持ちでそう思いました。
「スケルトン……水属性の私には、少し分が悪い相手ですが……相手が分かっているなら、準備で何とかなるでしょう。」
松明とか、火炎瓶とか……
「皆で囲んでたいまつで燃やせば何とかなりますか?」
……エルナさん……好戦的になってしまって……悲しみ。
パーティの皆には、私たち2人が良いと思ったら認可のハンコを貰ってきて良いとこの間言われたので、スムーズになりました……
信頼されてるって、嬉しいですね。
エルナさんと2人でハンコをもらいます……
これで、初めて私たちだけで決めた依頼になるのです。緊張します。
「頑張りましょうね!」
「ええ、もちろんです。」
「おっ、スケルトン退治か!この間はすぐ復活されて手も足も出なかったからな!」
「今度こそ私の盾でぶん殴ってバラバラにしちゃうんだから!」
「住民の睡眠を脅かすのは悪!」
「……対策は?」
皆さん意見はバラバラですが、スケルトン退治にはノリノリです。
「対策にはいくつか松明を。でも早くつけすぎて、消えてしまっては意味がないので、スケルトンを見つけてからつけること!いいですね?」
「久しぶりにバトルだ……!腕が鳴る!」
「ジオってばいつも腕鳴ってない?」
「そういう言い回しなんだよ!ミア!」
私たちは笑いました。
そして住宅街。私たちは話を聞いて回ります。
「それがね……毎晩、北のお家の辺りをウロウロしてるのよぉ」
「あそこの奥さん、少し前に旦那さんを亡くしてるから心配でねぇ」
「君もジムに入会しないか?」
「この家の目の前を通っていくのよ……怖いわねぇ。」
……なんか変な情報もありましたが、何とかスケルトンの出る場所を特定できました……
……この時点で、なんか嫌な予感はしていたんですけどね……
まさかって思っていたんですよ……
そして夜。
私たちは中央のほうから来るというスケルトンを待ち構えます。
いつも来る時間はまちまち……そろそろ私も眠くなってきた頃……
ズルリ……ズルリ……
不気味な、音が聞こえました。
見えた!スケルトンだ!
私が松明をつけようとした、その時。
「…………待て。スケルトンじゃない。」
ネロさんが私たちを止めました。
「あれは……リッチだ。」
リッチ!?私たちは皆硬直しました。
高くてもレベルは3の私たち……戦って勝てる相手ではない!
空気が重い。……存在感が、重い!
逃げるべきか……いや、逃げなければ死ぬ!
リッチはずるり、ずるりと歩を進めます。
あれ?もしかして、あの場所……?
その時、リッチと目が合いました。
ぞわり、と、背中に汗が噴き出します。
が、この、既視感は……?
「そこに隠れてるのは誰じゃ?出てこんかい!」
この声……!?
「じ、ジェイムズさん!?」
以前墓場で出会った、動けないリッチのジェイムズさんだ!
「なぜわしの名前を……?おや、あの時の冒険者さんたちじゃあないかね!」
「ジェイムズ爺さん!?」
「動けないんじゃなかったの!?」
皆ばらばらと隠れた場所から出てきました。
一気に重い空気が霧散しました……ああ、怖かった……。情けなくも、そう思った。
ジェイムズさんはにやりと笑い、
「こんな夜中に若いもんが……いかんぞ?エッチなお店とかに行くんじゃろ?」
「不潔です!!!」
エルナさんが叫びます。ジェイムズさんは前のようにカラカラと笑いました。
「すまんすまん!しばらく動けなかったもんで、退屈でのう!ついからかってしもうたわい!」
あまりの前との変わらなさに私たちはガクッとしました……
このスケルトン騒動、場所からしてもしかしてとは思っていましたが、ジェイムズさんの仕業だったんですね……
「奥さんが心配だったんですね?」
住宅街にある、綺麗な花の咲き誇っている手入れのされた小さな家は、ジェイムズさんの奥さん、ステラさんの家だ。
前に手紙を届けたから知っている。
「そうそう……動けるようになったらな、ステラが心配で仕方がなくて……つい毎晩来てしもうた。」
「それで住宅街騒がせてたら仕方ないぜ、爺さん。」
「皆が寝不足なのは、正義ではないぞ?」
「おおっと済まん、もしかして……退治依頼とか、出とったのかのう?」
「そのとおりなんです……ジェイムズさん、このことは……」
エルナさんが言いにくそうにジェイムズさんを見ています。
「わかっとるよお嬢さん。儂は別にステラに迷惑をかけたいわけじゃないんじゃ。おとなしく、墓参りを待つことにするよ……」
ジェイムズさんは寂しそうです。
「で、でしたら私が!ワンちゃんのお散歩ついでに!お墓参りにいきますから!依頼中は、無理かもしれないですけど……」
エルナさん、まだ犬の散歩依頼続けてたんだ……
そうしてジェイムズさんは、最後にステラさんの顔を見て、ゆっくりと墓地へ帰っていきました……
「……知り合いのお墓に、花も供えないなんて……失礼でしたね。私も時々行きましょうか……」
一人の寂しさは、私にも少し分かるから。
「お、じゃあ俺も暇な時にでも行くか。」
「ジオのお供えはどうせ食べ物ばっかりでしょ!私がお花を選んであげるから、一緒に行きましょ!」
「そうだな……義理を欠いたのは、正義ではなかった。」
「………………」
結局、全員時々ジェイムズさんのお墓に行くことになったようだ。
ジェイムズさんのお墓はきっと前よりずっと賑やかになるだろう……
「というわけで、ギルドの報奨金です。6等分しますね。」
「おう!さっそくこの金でジェイムズ爺さんの墓に花でも買ってくか!」
「ジオのセンスは当てにならないからねー!私も行くよ!」
「わ、私も……今日はワンちゃんのお散歩バイトの日なんです!」
「……焼き菓子を、持っていく」
「ネロが行くなら俺も行こう!アルドは?」
全員が私を見ます。
「もちろん……一緒に行きますよ!」
6等分でお金を出し合った花束は、白く清楚で、どこかステラさんを思い出すような花束になりました……




