2 会いました、神に
あのー、ここどこですか?
いきなり身体に異変を感じたと思ったら、水の上に立っているという事態。
何で俺沈まないの?
水の中に何かが仕込まれていて、その上に乗っかっているわけではないよね。水を踏み締めているっていう感覚が、足の裏にある。
まぁ、この件に関しては考えても無駄か。
次の変化したこと。それは、視覚の回復。これは嬉しい。イェーイ!聴覚、視覚回復しました!段々と五感が戻ってきている。
って、今はそれよりも大事なことがある。
ここはどこだ?
まず、水の上に立っている時点で、地球ではないことは確定。
そうなると異世界なわけだが、ここで疑問。何で異世界にいるの?死んだから?転生ですか?あ、はい多分そうです。
……まじかー、転生か。え?あんま驚いてないって?何を言っている。無茶苦茶驚いてるぞ。でも、あの闇の中に三日間過ごしている内に、「ここ地球じゃないんじゃね?」とは、薄々感じていた。
だから、異世界に来たかもしれないっていう覚悟はしていた。
まぁ、実際に当たるとは思っていなかったが。
では、少々実感。歩けるかなー?おっ!歩けません!金縛りにあったみたいです。
何でだよー?!おい、俺を金縛りにした奴!見てるならお願いだから解いてくれー!
「お主は金縛りにあっとらんぞ」
え?声?俺の他にもここで金縛りに遭ってる人がいるのか?
じゃ助けに行くぞー!って、俺動けんわ!
「だから、金縛りではない」
おっーとっと。姿の見えない人物曰く、俺は金縛りに遭ってないそうです。
じゃ、何で動けないんだだよ!
「儂が動けなくしているかじゃよ」
何様やねんあんた!行動の自由を奪うと憲法違反だぞ!
「神じゃ」
はい?神?
「そうじゃ」
……う、嘘はいけないなー。
「嘘ではない。儂は神じゃ」
その声に少しの威圧感が混ざっているのを感じ取る。
これはまじのパターンだと本能で感じ取る。
とりあえず謝るか。すみませんでした。図にのりました、許して下さい。
「よいよい、儂はこの程度では怒りわせん」
寛大なお心に感謝申し上げる!
で、神様が何のようですかね?
「?それは、儂のセリフじゃ、いきなり『神様頼んますよ』と、呼び出したのはそっちじゃろ」
……あ、確かにそう言ったは。え?じゃあ俺いつでも神様呼び出さんの?俺最強じゃん。
「無論、むやみやたらに呼び出せば裁きを下すのは分かっておるな?」
また、その声に威圧感が混ざる。後、若干の覇気なんかも混ざっているように感じた。
あ、はいすみません。
ところで、神様。ここはどこですか?
「ここは、儂が創り出した仮想空間じゃ」
仮想空間?何じゃそれ?
「うーむ、まぁ、魂と魂を共鳴させ合える場所かのー。簡単に言えば」
もっと簡単にできたりしませんかね?
実は俺文系なんすよ、だから魂とか言われてもピンとこないというか、なんというか。
……理系文系関係ねーわ。
「これ以上簡単にするか。うーむ、中々に難題じゃな」
あ、すみません。分からないまま突き進みます。
「そうか。で、他に聞きたいことはあるかね?」
えー、聞きたいこといっぱいあるんだよなー。
とりま、俺は転生したんですかね?
「そうじゃ、お主は地球から転生してきたのじゃ」
おー、やっぱりか。因みに何に?
「剣じゃ」
賢者?嬉しいわ。
「勘違いしないように言っておくと、武器だぞ」
何だ剣か。え、剣?え?人じゃないやん!
「そうじゃ、お主の魂は異世界に『剣』という肉体を作り、そこに魂を移したのじゃ」
え?何で、剣にしたの?
「そんなの儂に聞くな」
ですよねー。
んで、神様。剣だと自由気ままに動けないですよね?
「ああ、剣というのは通常使い手が現れてこそ力を発揮できるものじゃ。じゃから、使い手が現れるまで待つしかない」
おー、そうなんすか。で、使い手って現れるんすか?
「そうじゃのー、ここは迷宮の奥深くの隠し部屋じゃから、今後百年近くは現れないと思った方がいいかのー」
そうすか。は?百年?俺死んでるよ?
「剣じゃから壊れない限り死にわせん」
えー、後百年この闇の中で待つのかよ、最悪じゃん。
神様そこを何とかなったりしませんかね?
「ふむ。まぁ、自由に動けるようにする術ならあるぞ」
お、まじすか。何すか?
「『剣人化』と呼ばれるものじゃ」
『賢人化』?俺の賢さがアップする最高の技じゃないか。
なら、俺できますよ。
「茶番はよせ。剣が人に変化すると書いて、『剣人化』じゃ」
ですよねー。
それ、剣特有の技だから剣ならできるもんじゃないんですか?
「剣が皆、お主のように意識を持っているとは限らんし、意識を持っていたとしても、人間に適応しなければいけないという関門もある」
あー、確かに。でも俺、意識ある元人間だから問題なさそうじゃね?
「そうじゃな。お主は適性がありそうじゃ。じゃ、一回やってみらどうじゃ」
え、え、待って。そんなに抵抗なしに言われると逆に心配になるって。
神様、俺が『剣人化』できるって分からないんすか?
「分からん」
えー。まじか、まぁ心配をしても何も事態は進まないか。
「『剣人化』をするなら、一旦この空間を退出させるがどうする?」
じゃ、お願いします。あ、注意事項ありますか。
「ふむ。『剣人化』をする場合はもの凄い痛みが伴うが、それに耐えなければいかんぞ」
了解です。
じゃ、一回退出させるぞ。
すると、また視界が闇で埋め尽くされる。
じゃ、やって見ますか。
『剣人化』!
すると、俺の周りに光が漂ってきた。
って、痛ーい!何この痛み?!やばい、想像以上だぞ。
あ、ああ……。まずい、意識が……。
でも、意地でも、意識を保たなきゃ……な。
そうだ、こういうときは関係のないことを考えるんだ。
気を紛らわせろ、紛らわせろ!
でも……もう限界だ……。
そう思った時、痛みが引いていった。
お、もしかして、成功ですか。
立ってる!見える!聞こえる!
久しぶりの二足歩行の感覚に感動しながら、その他の器官に影響がないか確かめていく。
まぁ、押し並べて伊藤拓実と同じなんじゃない?顔とかは分からないから一旦押し並べてにしとく。
さて、無事に剣人化を果たしたことだし、これから何をするかなー。
と、ここで、後ろからむず痒い感覚がしたので振り返って見ると、そこには狼に酷似した生物がいた。
なぜ酷似という言葉を使ったかというと、口から冷気を吹き出しているからだ。
この時点で酷似という言葉も適任じゃなくね?もどきの方が合ってるよ。
っと、そんなこと言ってる場合じゃない。
さっきから殺気がこちらに向いてて怖いんだよ。 断じて駄洒落ではないことを誓おう。本当に殺気が向いてるんだ。
一言。怖!
やめて、俺何もしてない。いやいや、いきなり剣が人になったんだから驚くのは当たり前だろ。
いやー、こいつかな、剣の時に俺に冷気をぶつけたの。
うん、恐らくこいつだな。なら、合法的に殺す権利を得たな。
ふふふ。全く合法的じゃねー。
まぁ、関係ない、関係ない。
とりあえず、身体のテストも含めて戦ってみるか。
そう思い、獣の方に向かって歩み出した。




