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ガイア戦記 ― 歪められた世界の選択  作者: マロン
第三章 疑念の世界

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第三章 第四節 第六話 侵入の痕跡

封鎖された工房の奥は、

静まり返っていた。


炉は冷え、

鉄の匂いだけが残っている。


ここは、

かつて英雄が使っていた工房。


魔王と戦い、

共に世界を救ったドワーフの英雄。


その後、

禁忌を封じた場所。


古炉守が、

低く言った。


「ここに入れるのは、

本来は我らだけだ」


声は、

わずかに重かった。


火守も、

何も言わない。


鋼守も、

腕を組んだまま動かない。


ライナスは、

周囲を見渡した。


広い空間だった。


中央に、

大きな作業台。


周囲には、

古い工具。


そして。


床に、

残された痕跡。


「……」


ライナスは、

ゆっくりと歩み寄る。


石の床に、

薄く残る擦れ跡。


新しい。


古い埃が、

そこだけ乱れている。


ネレウスが、

静かに言った。


「最近だ」


「入った者がいる」


古炉守の目が、

わずかに揺れた。


「……そのはずはない」


だが、

否定しきれていない。


リシアが、

膝をついた。


指で、

床をなぞる。


「完全に消していない」


「急いでいたのか、

隠す必要がないと思ったのか」


フィリアが、

奥を見る。


「何を、

探していたのでしょう」


答えは、

誰も持たない。


ドゥリアは、

動かなかった。


入口の近くで、

立ったまま。


視線は、

工房の奥。


「……お兄ちゃん」


小さな声だった。


誰にも、

聞かれないほど。


だが、

ライナスには聞こえた。


作業台の上に、

古い設計図があった。


開かれている。


古炉守が、

息を止めた。


「……触れられている」


本来、

封印されていたもの。


誰にも、

見られるはずのないもの。


鋼守が、

低く言う。


「封印は、

破られていない」


「だが、

開かれている」


矛盾。


だが、

現実だった。


リシアが、

設計図を見つめる。


「……これは」


言葉を、

止めた。


理解しかけている。


だが、

確信には至らない。


火守が、

拳を握る。


「場所を知っていた、

ということか」


古炉守は、

答えない。


ただ、

炎のない炉を見ている。


ライナスは、

工房の奥へ進んだ。


そこに、

もう一つの痕跡。


足跡。


一つだけではない。


何度も、

出入りしている。


「繰り返し来ている」


ライナスが言う。


鋼守が、

目を細める。


「誰が」


その問いに、

答えはない。


だが。


ドゥリアは、

知っていた。


言葉には、

しない。


できない。


ライナスは、

設計図へ戻る。


そこに描かれているのは、

ゴーレム。


だが。


見慣れた構造とは、

違っていた。


より深く。


より密接に。


繋がる構造。


リシアが、

小さく言った。


「……同調を、

前提にしている」


「操縦ではない」


「繋がる構造」


ネレウスが、

静かに続ける。


「完全な支配ではない」


「共存だ」


その言葉が、

空間に落ちる。


古炉守が、

目を閉じた。


「……禁忌の技術だ」


誰も、

続けない。


沈黙。


ドゥリアが、

ゆっくりと歩み寄る。


設計図を、

見つめる。


触れない。


ただ、

見ている。


「……」


その目にあるのは、

恐れと。


確信。


ライナスは、

何も聞かない。


まだ、

言う時ではない。


だが。


侵入者は、

確実に存在する。


そして。


ここで何かを、

手に入れた。


工房の空気は、

重かった。


まるで。


過去そのものが、

まだここに残っているかのように。


火守が、

静かに言った。


「……戻るぞ」


これ以上は、

ここで話すことではない。


一行は、

工房を後にした。


背後で。


封じられたはずの場所は、

何も語らず。


ただ、

沈黙していた。

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