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ガイア戦記 ― 歪められた世界の選択  作者: マロン
第三章 疑念の世界

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第三章 第四節 第四話 沈黙する炉

炉の間には、

重い沈黙が落ちていた。


中央の炉は、

変わらず燃えている。


だがその炎は、

先ほどまでとは違って見えた。


火守が、

低く口を開いた。


「……報告を」


ライナスは、

一歩前へ出た。


「封鎖地区にて、

無人のゴーレムと遭遇しました」


空気が、

わずかに張り詰める。


「交戦し、

撃退は可能でした」


「ですが、

破壊には至っていません」


鋼守の視線が、

鋭くなる。


「破壊できなかった、

ということか」


「はい」


ライナスは、

はっきりと答える。


「通常のゴーレムであれば、

中枢を断てば停止します」


「ですが今回の個体には、

それが確認できませんでした」


鉱守が、

わずかに眉をひそめる。


「中枢が、

なかったと?」


「断定はできません」


ライナスは、

言葉を選ぶ。


「ですが、

構造に違和感がありました」


リシアが、

続ける。


「魔力の流れが、

一定ではなかったの」


「核から外へ流れるのではなく、

全体に染み込んでいるような状態」


「普通の構造とは、

明らかに異なる」


古炉守の目が、

わずかに細くなる。


「……操縦者は」


ネレウスが、

静かに答える。


「感じられなかった」


「周囲にも、

反応はない」


「遠隔操作の痕跡も、

確認できなかった」


火守の拳が、

ゆっくりと握られる。


「……そうか」


その声は、

重かった。


ドゥリアは、

ずっと黙っていた。


視線は、

炉ではなく床へ向いている。


「……変だよ」


小さな声。


全員の視線が、

彼女へ向く。


「ゴーレムは、

誰かが動かすもの」


「完全に自律することは、

ない」


言葉を切り、

少し考える。


「少なくとも、

この国では」


鋼守が、

低く言う。


「同意する」


「我らの知る限り、

そのような技術は存在しない」


沈黙が、

再び落ちる。


炎の音だけが、

わずかに響く。


古炉守が、

ゆっくりと口を開いた。


「……いつからだ」


火守が、

視線を向ける。


「何がだ」


「違和感だ」


古炉守は、

炎を見たまま言う。


「炉の流れが、

変わり始めたのは」


答えは、

すぐには返らない。


だが、

誰も否定しない。


ライナスは、

静かに聞いていた。


胸の奥に、

言葉にならない引っかかりが残る。


だが、

それが何かはまだ分からない。


火守が、

ライナスを見る。


「お前は、

どう見る」


試すような視線。


ライナスは、

少しだけ考えた。


「偶然ではないと、

思います」


短い答え。


だが、

十分だった。


古炉守が、

わずかに頷く。


「……ならば」


言葉を、

途中で止める。


炎が、

揺れる。


その揺れを、

見つめたまま。


「確認する必要がある」


火守が、

ゆっくりと頷く。


「同意する」


鋼守も、

続く。


「このままでは、

被害は止まらん」


鉱守も、

沈黙のまま肯定する。


火脈会の意思が、

ひとつにまとまる。


ドゥリアが、

顔を上げた。


不安と、

決意が混じった目。


古炉守が、

彼女を見る。


ほんの一瞬。


だが、

すぐに視線を外す。


「案内しよう」


その言葉は、

静かだった。


だが、

重かった。


ライナスは、

問い返さない。


どこへ向かうのか。


それは、

すでに理解していた。


炉の炎が、

わずかに強く燃え上がる。


それはまるで。


この国の奥底にある何かが、

目を覚まし始めたかのようだった。


誰も、

その正体を口にしない。


だが。


確実に、

近づいていた。


禁じられた何かへと。

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