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ガイア戦記 ― 歪められた世界の選択  作者: マロン
第三章 疑念の世界

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第三章 第四節 第二話 火脈会

炉の火が、静かに揺れていた。


円形の部屋の中央に据えられたそれは、都市の中心にある大炉とは違う。

だが同じ火だった。


熱ではなく、

意思を持つ火。


その周囲に、

四つの席。


すでに、

四人のドワーフが座していた。


先ほど案内していた男が、

そのうちの一席へ歩み寄る。


重い足取りではない。

だが迷いのない動きだった。


席に着く。


それで初めて、

彼が何者かを理解した。


鋼守。


鋼を統べる者。

工房と職人すべてを管理する存在。


火守が、

低く口を開いた。


「火脈会へようこそ、外の者よ」


声は低いが、

拒絶はない。


ただ測っている。


鉱守が続く。


「ここは、ドワーフの国の意思を決める場だ」


「火守は炉を守り、

鉱守は鉱脈を守り、

鋼守は工房を守り、

古炉守は歴史を守る」


最後の一人、

古炉守が静かに目を開いた。


「そして今、

守るべきものが崩れ始めている」


沈黙が落ちた。


ライナスは、

一歩前へ出る。


「異変について、

話を聞かせていただきたい」


鋼守が頷く。


「失踪者は七人」


短く、

そう告げた。


「すべて職人だ」


ドゥリアの指が、

わずかに動く。


鋼守は続ける。


「最初は三ヶ月前」


「一人が、

姿を消した」


「事故かと思った」


「だが、

違った」


火守が、

低く言葉を継ぐ。


「消える前、

目撃されている」


「夜だ」


「ふらふらと歩いていた」


ネレウスが、

眉をわずかに動かす。


「正気は?」


鉱守が答える。


「声をかけると、

正気に戻る」


「『大丈夫だ』と答える」


「だが、

また歩き出す」


古炉守が、

静かに言った。


「封鎖地区へ向かってな」


その言葉に、

ドゥリアの肩がわずかに強張る。


フィリアが、

小さく息を呑む。


ライナスは、

視線を動かさない。


鋼守が続ける。


「封鎖地区は、

工房地区の一部だ」


「現在は立ち入りを禁じている」


「理由は単純だ」


「近づいた者が、

戻らなくなる」


沈黙。


炉の火が、

小さく鳴った。


リシアが、

静かに問う。


「七人すべて、

そこへ?」


鋼守が頷く。


「確認できている限りはな」


ネレウスが続ける。


「ゴーレムの件は?」


火守が答えた。


「二ヶ月前だ」


「封鎖地区から、

無人のゴーレムが出てきた」


「職人を襲った」


鋼守が補足する。


「三名負傷」


「撃退はできている」


「だが破壊には至っていない」


「力が異常だった」


ライナスの脳裏に、

港で見たなり損ないの姿がよぎる。


同じ匂いがする。


鋼守が、

ライナスを見た。


「貴様らを呼んだ理由は、

それだ」


「これは、

我らだけの問題ではない」


その時だった。


外から、

鈍い衝撃音が響いた。


次いで、

悲鳴。


全員の視線が、

扉へ向く。


鋼守が、

即座に立ち上がった。


「来たか」


短く、

そう言った。


扉が開く。


若いドワーフが、

息を切らして飛び込んでくる。


「封鎖地区です!」


「また出ました!」


「ゴーレムが――」


鋼守の視線が、

ドゥリアへ向いた。


一瞬。


ほんの一瞬だけ、

気まずそうに。


ライナスは、

それを見逃さなかった。


「場所は」


ライナスが問う。


鋼守は、

答えない。


代わりに、

ドゥリアを見る。


沈黙。


ドゥリアは、

ゆっくりと口を開いた。


「……わかるよ」


全員の視線が、

彼女に向く。


ドゥリアは、

まっすぐ前を見ていた。


逃げない目。


「封鎖地区は」


一拍。


「私の家があったところだから」


空気が、

止まった。


誰も、

すぐには言葉を出せなかった。


鋼守が、

目を閉じる。


古炉守の火が、

わずかに揺れた。


ライナスは、

ドゥリアを見る。


その横顔は、

震えていなかった。


だが、

強く握られた拳だけが、


すべてを語っていた。

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