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ガイア戦記 ― 歪められた世界の選択  作者: マロン
第一章 それぞれの理由
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第一章 第三節 第二話 揺らぐ海

大会の翌朝、海の神殿は静けさを取り戻していた。


ネレウスは、水の騎士として最初の任を受けるため、長老たちの前に立っていた。


「昨夜の異変は、偶然ではない」

長老のひとりが言う。

「神殿周辺の海域で、生き物の行動に乱れが続いている」


闇の痕跡は見つからない。

穢れも残っていない。

それでも、海は確かに“揺れている”。


「まずは近海を調べる」

「水の騎士であるお前が、指揮を執れ」

ネレウスは頷いた。

「……分かりました」


―――――


出立の準備を進める中、エイリオンが現れた。


「聞いたぞ。近海の調査だってな」

「ああ」

ネレウスは短く答える。


「なら、俺も――」

一歩踏み出しかけたエイリオンを、長老が静かに制した。


「今回の任は、水の騎士のみだ」

淡々とした口調。

そこに、感情はない。


「神殿の名を背負う調査だ。

資格のない者を同行させることはできぬ」

場が、静まり返る。


ネレウスは、その場にいた。

だが、言葉が出なかった。

それは規則であり、これまで疑われることのなかった正しさだったからだ。


「……そうですか」

エイリオンは、それ以上何も言わなかった。


抗議も、怒りも見せず、ただ一礼して身を引いた。


―――――


調査は、神殿周辺の海で行われた。


潮の流れ。

生き物の動き。

水の密度。

ネレウスは一つ一つを確かめていく。


だが、異変の“痕”は掴めなかった。


海は静かで、生き物も落ち着いている。


「……分からない」

調査を終え、神殿へ戻る道すがら、ネレウスは胸に残る違和感を拭えずにいた。


何かを見落としている。

だが、それが何なのか、言葉にできない。


―――――


神殿に戻ると、エイリオンの姿は見当たらなかった。


訓練場にも、

回廊にも、

海辺にも。


「どこへ行った?」

そう尋ねても、はっきりと答える者はいない。


「少し外に出ただけだろう」

そう言われ、話は終わる。


ネレウスは、その言葉に頷きながらも、

胸の奥に小さな引っかかりを覚えた。


調査は失敗に終わった。

原因は分からない。

それでも、海は確かに揺れている。


そして――


神殿の中で、

何かが、静かにずれ始めていた。

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