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ガイア戦記 ― 歪められた世界の選択  作者: マロン
第三章 疑念の世界

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第三章 第一節 第四話 港に残る、人の気配

夕方の港は、

昼間よりも騒がしかった。


漁を終えた船が戻り、

魚の入った木箱が積み上げられていく。


潮と血と油の匂い。


人の生活の匂いが、

強く漂っていた。


「……被害が出てるって感じ、

しないな」


ドゥリアが、

辺りを見回しながら言う。


「ええ」


リシアも、

港を見渡す。


「表向きは、

平穏ね」


「でも、

数字は嘘をつかない」


ライナスが答える。


ここでは被害が少ない。

それなのに、

周辺では魔物が出ている。


違和感は、

消えていなかった。


ネレウスは、

波止場の端に立ち、

海を見つめていた。


水面は、

穏やかだ。


だが、

その下で何が起きているかは、

分からない。


「……港の外れを見たい」


ネレウスが言う。


「人の出入りが少ない場所だ」


リシアは、

一瞬考えてからうなずいた。


「いいわ。

日が落ちる前に行きましょう」


ーーー


港の外れは、

静かだった。


船も少なく、

人影もまばら。


打ち捨てられた杭が、

いくつも並んでいる。


フィリアが、

足を止めた。


「……ここ」


視線の先。


杭の根元に、

砕けた石のようなものが落ちている。


紫がかった色。


「……これ」


ドゥリアが、

しゃがみ込む。


「前に見たやつだ」


一瞬、

視線が集まる。


「あの時の、

魔族のなり損ない」


「倒したあとに、

体の中に残ってた……

あの紫のカスだ」


ライナスは、

無言でうなずいた。


指先で触れず、

距離を保ったまま観察する。


「自然に、

ここにあるものじゃない」


フィリアが、

静かに言う。


「魔力が、

残ってる」


ネレウスが、

周囲を見回した。


「杭が、

壊されてる」


「嵐の跡じゃない」


「人が、

やった」


誰も、

否定しなかった。


ーーー


その夜。


港近くの酒場で、

聞き込みを始めた。


最初は、

誰もが口を閉ざした。


「面倒ごとは、

ごめんだ」


「もう終わった話だ」


そんな言葉ばかり。


だが、

ネレウスが同じ目線で話すと、

空気が少しずつ緩んでいく。


「……前に、

貴族と揉めたことはある」


年嵩の漁師が、

ぽつりと言った。


「港を治めてる、

ロイス・ベルクだ」


名前が出た瞬間、

周囲の空気がわずかに変わる。


「四十過ぎの、

小太りの男でな」


「先代はまともだったが、

今のは……」


言葉は、

そこで止まった。


「漁師頭の娘を、

気に入ってな」


空気が、

重くなる。


「断られてから、

態度が変わった」


「最初は、

露骨だったよ」


「仕事に口出しして、

難癖つけて」


「最近は、

何も言ってこないが……」


漁師は、

声を落とした。


「夜中に、

兵士が来る」


「港を見回ってる、

って感じじゃない」


「何か、

してる」


リシアは、

その言葉を逃さなかった。


「その兵士たち、

ベルクの私兵?」


漁師は、

苦い顔でうなずく。


「……ああ。

あいつの屋敷の紋だ」


ーーー


酒場を出たあと、

誰もすぐには口を開かなかった。


夜の港は、

昼とは別の顔をしている。


波の音が、

妙に大きく聞こえた。


「……自然現象じゃ、

なさそうだな」


ドゥリアが、

ぽつりと言う。


「ええ」


フィリアも、

同意する。


「人が、

関わってる」


ライナスは、

拳を握った。


「兵士が動いてるなら、

命令がある」


「つまり、

上がいる」


リシアは、

一歩引いた視点で言う。


「でも、

まだ断定はできない」


「感情だけで、

貴族を疑うのは危険よ」


正しい判断だった。


だからこそ、

余計に重かった。


ネレウスは、

海を見つめたまま言った。


「……でも、

水は嘘をつかない」


「誰かが、

ここで何かしてる」


「それだけは、

確かだ」


ライナスは、

ゆっくりとうなずく。


「証拠を、

掴もう」


「掴めば、

逃げ道はなくなる」


夜の港に、

静かな決意が落ちた。


この場所には、

まだ何かが残っている。


それを、

見逃すわけにはいかなかった。

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