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ガイア戦記 ― 歪められた世界の選択  作者: マロン
第三章 疑念の世界

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第三章 第一節 第二話 成功の裏で、減らない被害

ギルドへの報告は、

滞りなく終わった。


依頼は達成。

被害はなし。

討伐数も、前回より多い。


数字だけを見れば、

これ以上ない結果だった。


「今回は、

きれいに終わったな」


受付の職員が、

報告書に目を落としたまま言う。


「前回とは、

ずいぶん違う」


「ええ」


リシアが、

短く答えた。


「判断も、連携も、

無駄がありませんでした」


淡々とした口調だったが、

それは事実だった。


フィリアが、

小さくうなずく。


「皆さん、

落ち着いていました」


ドゥリアは、

少し照れたように頭をかく。


「うん。

今回は、ちゃんと出来た」


ネレウスは、

何も言わず、

視線を落としたままだった。


ライナスは、

その様子を横目で見た。


ーーー


報告を終え、

掲示板の前から離れたとき。


リシアが、

足を止めた。


「……おかしいわね」


誰に向けたとも分からない、

小さな呟き。


「何がだ?」


ライナスが聞く。


リシアは、

報告書の控えを広げる。


「今回の討伐地点」


指先で、

いくつかの場所をなぞった。


「前回と、

ほとんど重なっていない」


「被害が出た場所を、

先回りして潰したんだろ?」


ドゥリアが言う。


「ええ。

局所的には、正しい」


リシアは否定しなかった。


「でも」


視線が、

別の紙へ移る。


「全体の被害数は、

減っていない」


その言葉に、

フィリアが眉をひそめる。


「……そんなはずは」


「実際、

数は横ばい」


リシアは、

淡々と数字を読み上げる。


「場所を変えて、

被害が出ている」


「増えてる、

ってことか?」


ドゥリアが、

少し声を落とす。


「ええ」


短い肯定。


ネレウスが、

口を開いた。


「港で、

漁師に聞いた」


全員の視線が、

そちらに向く。


「最近、

魔物の出る場所が変わったって」


「前は、

この辺りじゃなかったらしい」


ネレウスは、

地図を指さした。


「……流れてる」


フィリアが、

ぽつりと言う。


「え?」


ドゥリアが首をかしげる。


「魔力が、

移動しているみたい」


「海流か?」


ライナスが聞く。


フィリアは、

すぐに答えなかった。


「……可能性はあります」


リシアが、

代わりに口を開く。


「自然現象」


「海流や、

魔力の偏り」


「説明は、

つくわね」


ライナスは、

納得しかけていた。


前回より、

上手くやれている。


実際、

被害は抑えられている。


それなら、

原因は自然。


そう考えるのが、

一番合理的だった。


だが。


ネレウスは、

黙ったまま、

地図を見つめていた。


「……妙だな」


小さな声。


「何が?」


ライナスが問う。


「流れにしては、

不自然だ」


ネレウスは、

ゆっくりと言葉を選ぶ。


「ただ動いてる、

って感じじゃない」


「移動先が、

選ばれてる」


部屋の空気が、

わずかに張りつめる。


「選ばれてる?」


ドゥリアが、

聞き返す。


「……うまく言えない」


ネレウスは、

一度言葉を切った。


「でも、

偶然じゃない」


リシアが、

その言葉を拾った。


「人為的、

ということ?」


ネレウスは、

首を横に振る。


「まだ、

そこまでは言えない」


「ただ」


視線が、

地図の端へ移る。


「自然だけじゃ、

説明しきれない気がする」


リシアは、

しばらく黙っていた。


やがて、

静かに言う。


「……もう少し、

調べましょう」


「今の段階では、

断定できない」


「でも、

違和感は無視できない」


ライナスは、

短くうなずいた。


「同感だ」


成功している。


成長も、

実感できる。


それでも。


何かが、

噛み合っていない。


その感覚だけが、

確かに残っていた。


外へ出ると、

潮の匂いが鼻をついた。


港の方角から、

風が吹いてくる。


ライナスは、

その風を感じながら思う。


前より、

上手くやれている。


それなのに。


なぜ、

嫌な予感が消えない。


答えは、

まだ見えなかった。

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