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ガイア戦記 ― 歪められた世界の選択  作者: マロン
第二章 選ばれない者たち

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第二章 第五節 第一話 調査先での遭遇

ギルドに呼ばれたのは、

昼を少し過ぎた頃だった。


忙しい時間帯を外した、

意図のある呼び出し。

ライナスは、

扉を開ける前から察していた。


部屋に入ると、

ギルド長は腕を組んで待っていた。


机の上には、

地図が広げられている。

港町とその周辺。

いくつかの地点に、

赤い印が打たれていた。


「最近、

妙な報告が増えている」


ギルド長は、

低い声で切り出す。


「魔族になりきれなかった者。

完全な魔族ではないが、

負の力に侵食されていた存在だ」


フィリアが、

眉をひそめる。


「……でき損ないの魔族、ですね」


「そう呼ばれている」


ギルド長は、

視線をライナスに向けた。


「お前たちは、

以前に一度、

それを討伐している」


ネレウスが、

目を見開く。


「……俺は、

聞いてない」


「当然だ」


ギルド長は即答した。


「その場にいたのは、

ライナスとドゥリアだけだ」


ドゥリアが、

少しだけ照れたように肩をすくめる。


「うん。

二人だった」


「討伐の決め手は、

ゴーレムの覚醒」


ギルド長は続ける。


「正直、

想定外だった」


「だが結果として、

被害はそこで止まった」


部屋が、

静まり返る。


「通常なら、

即時討伐が正解だ」


「だが、

あれは魔族として不完全だった」


「判断を誤れば、

街一つ吹き飛んでいてもおかしくない」


ギルド長は、

一度言葉を切る。


「それを倒し、

生きて戻った」


「だから、

今回の調査を頼みたい」


「極秘だ。

貴族が絡んでいる可能性が高い」


ライナスは、

短くうなずいた。


「調べる」


迷いはなかった。


調査は、

街の外れから始まった。


表向きは、

放棄された貴族屋敷の確認。

実際は、

周辺で起きている異変の裏取りだった。


「……嫌な感じだな」


ネレウスが、

低くつぶやく。


空気が澱んでいる。

魔力の流れが、

歪んでいた。


フィリアが、

目を閉じ、

集中する。


「……似てる」


「以前、

報告にあった魔力反応と、

質が近い」


ライナスは、

何も言わなかった。


屋敷の中は荒れていた。

家具は壊れ、

床には引きずられた跡。


だが、

戦闘の形跡はない。


「抵抗した様子がないな」


「連れて行かれた、

って感じだ」


地下へ続く扉があった。

鍵は壊されている。


奥から、

微かな魔力反応。


「行くぞ」


階段を下りた瞬間、

空気が張りつめた。


「そこまで」


低く、

鋭い声。


奥の通路から、

一人の魔法使いが姿を現した。


フードを深く被り、

杖を構えている。


距離も角度も、

完全に抑えられていた。


「……先客か」


ライナスが、

一歩前に出る。


「ここは、

あなたたちが踏み込む場所じゃない」


冷たい口調だった。


ドゥリアが、

一瞬だけ目を見開く。


「……リシア」


その名に、

女の視線が動く。


「久しぶりね、

ドゥリア」


それだけだった。

懐かしさも、

安堵もない。


「調査中よ」


リシアは、

地下の奥を一瞥する。


「魔族化に関わる、

かなり危険な案件」


「同じだな」


ライナスが言う。


「俺たちも、

それを追ってる」


リシアは、

ライナスを見る。


評価するような、

値踏みするような視線。


「……聞いてる」


「でき損ないとはいえ、

魔族を倒した冒険者がいるって」


ドゥリアが、

わずかに目を逸らす。


「その判断、

正しいと思ってる?」


リシアの声は、

鋭かった。


「現場で選んだ」


ライナスは、

それだけ答える。


「……まだ、

深入りする段階じゃない」


リシアは、

視線を外す。


「ここから先は、

判断を誤れば、

取り返しがつかなくなる」


「それでも調べる」


即答だった。


リシアは、

小さく息を吐く。


「相変わらず、

厄介な正義ね」


「お前もな」


短いやり取りだった。


「ここは、

私が押さえる」


リシアは、

地下の奥へ視線を向ける。


「あなたたちは、

別方向から調べなさい」


命令ではない。

だが、

譲歩でもない。


「……分かった」


ライナスは、

一瞬考えてから答えた。


リシアは、

踵を返す。


「これ以上、

踏み込みすぎないで」


そう言い残し、

地下の闇に消える。


重たい沈黙が残る。


「……倒したから、

選ばれたってわけか」


ネレウスが、

低く言う。


「違う」


ライナスは、

地下の奥を見つめたまま答えた。


「倒しても、

終わってないからだ」


その言葉の意味を、

誰もまだ理解していなかった。

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