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ガイア戦記 ― 歪められた世界の選択  作者: マロン
第二章 選ばれない者たち

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第二章 第四節 第四話 疑念の芽

違和感は、

一度芽生えると、

簡単には消えなかった。


ネレウスは、

集団の動きを以前より注意深く見るようになっていた。


準備の手際。

物資の量。

説明の仕方。


どれも、

表向きは問題ない。


だが、

どこか噛み合っていない。


「今日は、

ちょっと急ぎだ」


そう言われた依頼の日。


行き先は、

港のさらに外れ。

立ち入りを嫌われる場所だった。


「何を運ぶんだ?」


ネレウスが尋ねると、

男は一瞬だけ言葉を詰まらせた。


「……細かいことは、

気にするな」


その返答が、

胸に引っかかる。


以前なら、

それで終わっていた。


だが、

今は違った。


現場に着くと、

箱が積まれていた。


封はされている。

だが、

重さが不自然だ。


「……魚だな」


思わず、

口をついて出る。


男たちは、

一瞬だけ黙った。


「さすがだな」


軽い笑い。


「密漁か?」


問いかけると、

今度は否定しなかった。


「まあ、

そうなるな」


あっさりとした返答だった。


「禁制区域だぞ」


「だから、

金になる」


その言葉に、

胸の奥が冷える。


「俺は、

戦ってるだけだ」


そう言いかけて、

言葉が止まる。


今回は、

戦っていない。


守っているだけだ。

運ぶのを、

見張っているだけだ。


それでも、

加担している。


「……誰かに、

被害は出ていない」


自分に言い聞かせる。


男の一人が、

肩をすくめる。


「真面目だな。

魚人は」


その言葉に、

悪意はない。

だが、

軽かった。


作業が進む中、

ネレウスは気づく。


箱の数が、

申告より多い。


「聞いてない」


そう言うと、

男は笑った。


「あとで、

説明する」


説明は、

なかった。


作業が終わり、

解散の流れになったとき、

別の話が出る。


「次は、

もう少し大きいのをやる」


「見張りだけじゃなく、

動いてもらうぞ」


ネレウスの胸が、

ざわつく。


「何をする?」


「詳しくは、

そのときだ」


その言葉に、

はっきりとした嫌悪感が湧いた。


夜、

一人で港を歩く。


波の音が、

やけに大きい。


「……おかしい」


小さく、

つぶやく。


今まで、

考えなかったこと。


考えなくて済むように、

目を逸らしていたこと。


自分は、

選んでいない。


選ばされているだけだ。


「……俺は」


足を止める。


頭に浮かぶのは、

ライナスの言葉。


危ない。


理由は、

言われなかった。

だが、

今なら分かる。


これは、

正しくない。


翌日、

ネレウスは一人で動いた。


集団には、

体調が悪いと伝える。


嘘だった。

だが、

今は必要だった。


港の記録所。

立ち入りを嫌われる場所。


それでも、

顔を覚えられていた。


「……何の用だ」


「調べたいことがある」


魚人だと分かると、

訝しげな目を向けられる。


それでも、

追い返されなかった。


禁制区域。

密漁の記録。

過去の摘発例。


目に入る文字が、

胸を締めつける。


被害額。

処罰内容。

責任者。


「……俺は」


知らなかった。

では、

済まされない。


戻る途中、

さらに嫌な事実を知る。


罪を擦り付けるための手口。

見張り役を前に出す方法。


「……使われてる」


はっきりと、

そう理解した。


夜、

集団の溜まり場へ向かう。


まだ、

決めきれない。


仲間を売るのか。

黙って、

関わり続けるのか。


どちらも、

簡単じゃない。


扉の前で、

立ち止まる。


拳を握り、

開こうとして、

止めた。


胸の奥で、

何かが軋む。


「……」


答えは、

まだ出ない。


だが、

一つだけ確かなことがある。


もう、

戻る前の自分ではいられない。


その事実だけが、

重く、

静かに胸に残っていた。

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