8話 襲来・岩穿つ怪鳥
「さぁ、腹ごしらえも済んだし今日も元気に仕事するか」
「私は済んでませんよ!?」
俺が朝ごはんを食べ終わり仕事のやる気を出したのにエルメスが水を指してくる。
「何だよ、用意はしたのに食べなかったのはそっちだろ?」
「アレは用意したうちに入りませんからね!?もういいです!お昼いっぱい食べさせてもらいますからね!!」
エルメスはそう言うとギルドの方向へ歩いていった
俺も遅れまいと後ろをついていく
「お〜い、待てよ!昼はあるかわからねぇ〜ぞ!!」
「そこはあってくださいよ!?」
エルメスはすごい勢いで振り返って言った
〜〜〜
「おい〜、またスライムかよ〜」
「仕方ないでしょ!?報酬がいいんですから!!」
「俺の気持ちはどうなんだよ!!俺の!!気持ちは!!どうなんだよ!!」
「知りませんよ!!スライムに負けるのがおかしいんです!!」
俺とエルメスがぎゃぁぎゃぁ言いながら草原へ向かっていると
進行方向から冒険者たちが向かってくる。
そのうちの一人が俺達に気が付き口を開く
「あんたら、今から狩りに行くのか?草原には近寄らないほうがいいぞ。」
「だってよエルメス帰るか。」
俺が冒険者たちの言葉を聞いて速攻回れ右をすると、エルメスに襟を掴まれる
「ちょっと待ってください、理由がわからないと納得できません」
「グエ…、ちょ、襟掴むなって俺は理由とか聞かなくてもいいんだよ、離せ!!猫みたいになってるから!!」
「猫ほど可愛くないなら黙っててください。
それで?どうしてダメなんですか?」
エルメスがそう聞くと親切な冒険者は俺を心配するような素振りを見せつつ理由を話し出す。
「実は、草原にスライムが居ないと思ったら、代わりに地面に大きな爪痕が残されててさ。デケェ魔獣がいる可能性があるんだよ。」
「…なら大丈夫です、私達逃げ足だけは早いので、心配していただきありがとうございます」
「え…?
…ってお、おい!!」
そう言うとエルメスは俺を引きずりながら冒険者たちの奥に進む。
冒険者たちも呆気にとられてしまい、引き留めようとしたときにはもう大分離れてしまってからだった
「おい!?聞いてたか!?でかい魔獣がいるんだぞ?危ないだろ!!ついに自分の脳みそまで食っちまったか!?」
「失礼ですね!?そもそも見晴らしのいい草原なのにその魔獣とやらを見かけないのはおかしいんですよ!どこにも隠れる場所無いでしょう?」
確かにエルメスの言う事には一理ある。
ならばアイツラの言うことは嘘だったというのだろうか
そんな奴らには見えなかったが…
なんとなくモヤモヤしながら俺はエルメスに引きずられながら草原へ向かった。
「いい加減歩いてくださいよ!!」
〜草原〜
「おい、どうすんだよ俺の襟がビヨビヨになって残念なフラフープみたいじゃねぇか。」
「自分で歩かないからでしょ!?」
俺がエルメスを責めているとすんなりと草原についた。
「何もなかったな」
「そうですね、やっぱり嘘だったんでしょう…。あれ?でもほんとにスライムは居ない…」
「マジだ、こないだはあんなに居たのにな…」
周りを見ると、あの冒険者たちが言っていたようにスライムは一匹も居ない
「よし帰ろう、すぐ帰ろう、帰って溝浚いでもするんだ」
「嫌ですよ!ここまで来て無駄足なのも溝浚いも!とにかくあたりを調べてみましょう」
「え〜、俺帰りたいんだけど…」
「文句言わずにほら!!」
俺は嫌な予感がして街に帰ろうとする
しかし、エルメスに引き止められ無理やりあたりを探索させられる。
それから数分後
「なぁ、エルメス。俺な、スライムなんてこの世に居なくていいと思うんだ。誰もベトベトにならない、最高の世界じゃないか。」
「スライムが居なくなると、新しく住居を建てるどころか修復もできなくなりますよ。」
「え」
俺は早々に調査に飽き、真剣なエルメスに軽口を叩いていた。
すると突然あたりが暗くなる。
「なぁ、エルメス急に曇って寒いんだけど」
「まだ季節は冬ですからね、そりゃ冷えますよ」
「でもな、曇ったにしては俺らの周りだけで範囲が狭いんだよ」
「そういうこともありますよ」
俺の言葉にエルメスが少し投げやりに返してくる
サボりすぎて怒ってしまったのだろうか。
これ以上邪魔しないでおこうと考えぼーっと空を見上げた次の瞬間
空飛ぶバカでかい鳥が視界に映る
「なぁ、エルメスあれ何?」
「?、アレはガンカクチですよ。その攻撃は岩をも穿つと言われていて大変危険度が高いんです」
「へぇ、そうなんだな。初めて知ったわ」
「そりゃあ珍しいですからね」
エルメスはわざわざ手を止めて答えてくれる
怒っていないようで安心した
⋯
ぼーっとそう考えていた俺が事態に気が付き顔を青くさせた瞬間
「キェェェエエエ!!」
ガンカクチがすごい勢いで迫ってくる。
「逃げろぉぉおおお!!」
「きゃぁぁああ!!」
ドンッ!!
俺はすぐに走り出すとほぼ同時にエルメスも走り出だす
少しだけ後ろを見てみるとやつが降りたところには大きな凹みができていた。
「キェェェエエエ!!」
「ばかばかばかばかばかばか」
「私は美味しくないですよぉぉおお!!」
命の危機を感じ本気で走っていると、突然エルメスが転びその時に袖を掴まれた俺も巻き込まれて転ぶ
「離せ!!死ぬなら勝手に死ね!!」
「一人は嫌です!!死ぬならカルス様も連れていくんです!!」
シュッ!!
俺達がもみ合っているとその上スレスレをガンカクチが過ぎていく。
「ひぇ…」
「転んでよかったですね…」
しかし、そう言ってられる間も長くはなく
すぐにヤツはこちらに向き直る。
「エルメスはなんで今日に至って鎧着てないんだよ!!」
「だってスライムと戦うだけだと思ってたんですもん!!」
俺は走りながらどうにかエルメスを囮にできないかと考える
「ガァァアアア!!」
幾度目かも分からない咆哮を聞いた俺は我慢の限界に達し直球にエルメスを説得しにかかる
「エルメス、真剣な話をしよう。俺はいつかは世界を救う勇者だ、大してお前は一騎士、どっちが犠牲になるべきかは明白だよな?」
「満場一致でカルス様です!!」
「バカお前!!そんなのお前に決まってるだろ!!」
「女性を守るのか紳士の嗜みですよ!!」
「レディファーストも紳士の嗜みだ!!」
「そんなファーストいりません!!」
「キェェエエエ!!」
「あああぁぁぁぁあああああ!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」
ドンッ!!
なんとかハリウッドダイブで攻撃を避けると──
「グッ、グッ、グゥゥゥ…」
弱々しい鳴き声が聞こえ俺とエルメスは振り返る。
そこにはさっきまでの凶暴さはどこに行ったのか、くちばしが地面に刺さり目をまんまるにさせてこちらを見つめるガンカクチがいた。
「「…」」
「クゥゥゥ…」
「なぁ、エルメスガンカクチって討伐報酬高いのか?」
「はい、強いだけに高いですよ。」
「「…」」
俺はバッグに入っていた布を目隠しとして顔に巻き歩き出す
「カルス様!!もっと右です!!」
「右だな!?こっちか!?」
「クゥゥ…!!」
俺は真っ暗な中エルメスの声を頼りに進む。
「もっと左!!」
「こっちか!?」
「クゥゥゥウウ!!」
鳴き声が今までにないほど大きく聞こえる
「そこです!!」
「おっけぇえ!!」
「クゥゥゥウウッ!!!」
ダンッ!!
俺は剣を振り下ろす。
確かな手応えとともに、鳴き声が聞こえなくなり
鼻に鉄の匂いが香る。
「これで当分は楽できるな!!」
「そうですね!!」
〜〜〜
昼飯を食べ終え、満腹感に包まれながら店で午後のティーを楽しんでいると
突然机に鳩が止まる。
「なんだコイツ、食われたいのか?」
「今食べたばかりでしょ…、ってよく見てください、伝書鳩ですよ手紙持ってます。」
確かにエルメスの言う通り足になにか入れ物がついておりそこには手紙が入っていた
その手紙は王様からで内容は
『聖女を迎えに聖都に行って来い』というもの
俺はその手紙に『嫌だ』
と書いた手紙を箱に詰め鳩を飛ばそうとする
「ちょ、ちょっと何やってるんですか!?やめてください!」
──するとエルメスに止められる。
そこで俺の頭は冷静になったのかある考えを導き出す
聖女と言えば絶対に若く美人だ
俺だって男だ
美人と旅するのが嫌なわけじゃない
むしろウェルカム!!ウェルカァアム!!
手紙を見たときは思わず面倒事かと思って破りそうになったがそうでもないかもしれない…
「エルメス!!聖都に行くぞ!!」
「情緒どうなってるんですか…」
俺が目を輝かせてエルメスに言うと呆れた声が返ってきた




