2話 路銀が足りない
ほぼ強制的に勇者にされてしまった。
しかし、なったからには頑張らなくては…
「これにて勇者契約は終わりです。」
神官は一言だけそう言うとそそくさと去っていった。
「しかし、勇者になるにも契約が必要なんだなぁ」
俺はそう言いながら神官がおいていった契約書の控のようなものを見る。
そこで一つ気になる項目を見つけた。
以上、主従契約書
「…、あの野郎ぉぉお!!」
神聖な大聖堂に俺の叫び声が響いた。
その時
「あの…」
後ろから声をかけられる。
感じからして女ということが分かる。
「あ?」
後ろを振り向くと
そこにはいかにも騎士といった風の長髪の女が立っていた。
手にはなんとも言えない大きさの袋を抱えている。
「あ、あなたが勇者様ですか?」
「いえ、国王の下僕です。」
「え!?で、でもここにいるはず…」
何やら彼女は勇者を探しているようだ。
俺が知っているのは耐久テストされかけた挙げ句、主従契約とやらをさせられた可哀想な男だ。
〜数十分後〜
「あの、あなたはカルス様ですか?」
「そうですけど」
「あってるじゃないですかもぉおおお!!」
彼女は俺の答えを聞くと大声で叫ぶ。
なんと賑やかな子なのだろうか。
「それで、俺になにか?」
「はっ…そうでした、国王の命により一緒に旅立つことになりました。エルメス・キッシです。」
彼女は敬礼をしながらそういう。
「あぁ、あんまり固いのはいいよ、よろしく。」
「は、はい、よろしくです。これ、路銀です。」
彼女がそう言って差し出した麻袋を手に取り俺は言う
「じゃあ、まずはそう、そう…くそっ!!漢字がわからん!もういい!ウエポンをバイしに行くぞ!」
俺が意識した爽やか勇者は消滅した。
〜〜〜
「こいつがこの店で一番いい武器だ」
厳つい店主がそう言って剣を持ってくる。
「これはいい武器ですね」
エルメスがそういう
確かになんかこう、ほら、こう…なんというかオーラがすごい!!
「振るってもいいか?」
「もちろんだ」
俺はそれを聞くと剣を両手で持ち、腰のあたりに水平に構えた。
「ちょっと、待ってください!?それは斧じゃないですよ!?」
エルメスはそう言って俺の動きを阻害する。
「じゃぁ、どう振るんだよ。」
「剣についてわからないのでしたら、私が見繕ったこちらを買ってください。」
そう言って、エルメスが装備一式を手渡してくる。
俺はそれを買おうとカウンターに置く。
「毎度、15万と4000だね。」
店主の声を聞き俺は財布を開く。
「…」
「どうしたんですか?」
「ない…」
「え?」
「路銀が足りない!!」
「…」
「えぇええ!!?ど、どうするんですか!?」
エルメスの叫び声を聞きながら俺は頭をフル回転させ、ある1つの最適解を導き出す。
これなら行ける…
「まかせろ、一瞬で倍にしてやる。」
俺はエルメスに向かってシリアスに微笑んだ。
『ラックザバックが後ろから一気に追い込む!!』
「差せぇぇええ!!」
俺は大声で言う。
しかし、俺の声は周りの声に混ざって聞こえていないことだろう。
なぜならここは天下の競馬場
最高のスポーツが開かれる場所なのだから
『アイムバーグが内から差し返す!!アイムバーグが内から差し返す!!交わした!先頭ゴールイン!!』
「おぉぉおおおおい!!!?」
俺のかけた馬が差し返されてハナ差の2着
「おい!ウメールもっとしっかり乗れよ!何がウメールだよ!お前を埋めるぞクソが!!!」
「いや!ギャンブルですか!?」
さっきまで静かだったエルメスが突然大声を出す。
「ギャンブルじゃない、スポーツだ。」
「そんなことより勝ったんですよね!?」
そんなこととは何だと思いつつ余裕の表情で答える。
「いや、負けた」
「ダメじゃないですか!」
エルメスが顔面蒼白になる。
きっと本質を見誤るのがこいつの悪い癖だろう。
「おい、俺がいきなり全額かける馬鹿に見えるか?」
「は…じゃ、じゃあ!!」
エルメスが少し安心したような目でこちらを見る。
「あぁ、8割かけただけだ。」
「あんまり変わりませんけど!?」
「何を言ってるんだ。路銀はまだある。三連単を一発当てれば大儲けだ。」
「よくわかりませんけど危険な匂いがします!!ダメですからね!?」
エルメスの叫びを無視し、何にかけるかを考えながら財布を入れていたケツポケットに手をすべらせる。
スカッ
「?」
「どうしたんですか?」
またもエルメスを無視しながらケツポケットを探るも財布はなく。
ただ、セルフ痴漢をしているだけの変態になってしまっている。
「本当にどうしたんです…か…」
エルメスも流石に異変を感じたのか、俺の後ろを見る。
そして気がついたのだろう。
「スラれた!!」
「何してるんですか!?」
後ろから足音が響く。
俺達2人は走り出した…!!
2話も読んでくださりありがとうございます!
今回は騎士であるエルメスが登場しましたね、どんなキャラになっていくのか、カルスとの空気感も大切になってきそうです。
ぜひ次の話も楽しみにしていてください!




