52話 隣の美少女と図書館へ行く
週明けから、期末テストが始まる。その事実が、ようやく現実として迫ってきた週末――。
俺と月城さんは最後の追い込みをかけようと、駅前にある市営図書館に来ている。
小学生の頃によく通っていた場所だが、いつの間にか建て替えられ、今はやけに綺麗で落ち着いた空間になっていた。
「うわー、すごい……! 新しくなってるー!」
目を輝かせて声を上げる月城さんを見て、俺はふと思った。
少し見ない間に、見覚えのある景色が変わっていることはよくある。
それは建物だけじゃなくて――人も、同じだ。
隣で無邪気に感動している彼女を見ていると、そう実感せずにはいられない。
月城さんは到着するなり、どんな本があるのか気になったらしく、棚と棚のあいだを行ったり来たりしていた。
背伸びして背表紙を覗き込んだり、気になる本を見つけては立ち止まり、ページをめくったり。
「月城さん、勉強はいいの?」
そう声をかけると、彼女はびくっと肩を跳ねさせて振り返った。
「あっ……忘れてた」
本に夢中になっているその姿を見ていると、頭に浮かぶのは結局、いつもと同じ感想で。
――ああ、かわいいな。
それ以上の言葉が、どうしても見つからなかった。
だが、勉強を始めた月城さんは、まるで別人だった。
さっきまで棚の前をうろうろしていたのが嘘みたいに、ペン先だけが紙の上を静かに走っている。
声をかけようとして、やっぱりやめた。
……すごい集中力だ。
その横顔を見ていると、自然と背筋が伸びる気がして――俺も、ちゃんと勉強しよう。
そんな当たり前のことを、今さら思った。
図書館を出ると、昼下がりの熱気が肌にまとわりついた。冷房の効いた室内にいたせいか、外の暑さが一段と押し寄せてくる。
「……暑いね」
月城さんが空を見上げて言う。
「もう、すっかり夏だね」
「夏っていいよね。なんだか元気が出る気がする」
高い空に浮かぶ雲を並んで見上げていると、俺も不思議と同じ気分になった。
スマホの時計を見ると、正午を少し過ぎている。
「……とうぶん」
「今、心の声が出てたよね?」
「うっ……出ちゃったね」
月城さんは少し照れたように笑って、俺の袖を軽く引いた。
「なにか食べに行こうよ。頑張ったご褒美に!」
「じゃあ、なにか探しに行こう」
そう答えながら歩き出すと、月城さんは俺の顔を覗き込んでくる。
「神崎君、すごい集中してたね」
月城さんが、少し嬉しそうに言った。
「……そうかな?」
「うん。途中から、全然顔上げなかった」
そんなに必死だったのだろうか。自分ではあまり自覚がない。
「月城さんこそ、すごい集中してたよね」
そう言うと、彼女は小さく胸を張る。
「このテスト、すごく気合い入れてるんだ」
「どうして?」
少しだけ間を置いてから、月城さんは答えた。
「……これが終わったら、夏休みだから」
一瞬だけ、視線が逸れる。
「今年の夏休みは、神崎君と一緒だし……楽しみなんだ」
ほんのり頬を赤く染めて、そう言われた瞬間。俺の頭は、パンクする。
「……俺も、楽しみだよ」
緊張でそれ以上、言葉が続かなかった。
内心ではもう大変なことになっている。
――Oh my angel. だ。
口に出さなかった自分を、心の底から褒めてやりたい。
「だ……だからね」
月城さんは指先をもじもじさせて、続けた。
「テスト頑張るから……夏休み、いっぱいお出かけしたいな」
言い終えたあと、恥ずかしくなったのか視線を落とす。
……だめだ。
テスト前だというのに、頭に浮かぶのは月城さんと過ごす幸せな夏休み。
「……いいね」
俺はできるだけ平静を装って頷く。
「海とか、花火大会とか……映画も楽しみだね」
「うん!」
小さく頷く声が、やけに柔らかい。
「行こう、二人で」
そう言うと、月城さんが顔を上げた。
「……ほんと?」
「ほんと」
迷わず答えると、彼女は安心したみたいに笑った。
夏は、これからだ――。と思っていたら、
「やいやいやい! そこのカップル〜、見せつけてくれるじゃねぇか!」
背後から、聞いたことがあるキンキン声が聞こえて、月城さんは驚き、俺はげんなりした。
最近、仕事が忙しすぎて平日の執筆があまり進んでおりません。読者の方々には申し訳ありません。
(だって一日12時間労働なんだもん……)
と、言い訳しておりますが、頑張って完結させますので応援よろしくお願いします。
そういえば本作、累計で14万PVを超えました。1万PVも超えたことがなかった私が……感謝しかありません。
誤字報告も毎度ありがとうございます。
作者、頭が狂いだしているので、大変助かります泣
次話も9割書けているので、早く投稿できるように急ぎます!




