表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イケメンになった俺、中学でフッた女の子が美少女になって隣の席から睨んでくるんだが!?  作者: なぐもん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/72

47話 隣の人たちは浮かれてる

 ――朝の日課のトレーニング中。


 俺はいつものようにスミスマシンにバーベルをセットしてベンチプレスを行っていた。しかし、いつもと違うことがある。


 それは、やたらバーベルが軽いことだ。


 いつもなら持ち上がらない一三〇キロのバーベルでさえも今日は上がってしまった。もちろん身体に大きな変化があった訳じゃない。


 やっぱり……あれだよな……。昨日、月城さんに告白して俺たちは恋人同士になった。


 変なホルモンでも出てるんだろうか……そんなことを考えていたら、いきなり? いや、いつものように筋肉部屋の扉が吹っ飛ぶように開いた。


 中に入ってきたのはもちろんあの人――。


「翼ぁあああ! やってるかー!」


 今日も元気な筋肉の化身、我が父、神崎剛十郎である。

夏を迎えた父さんの肉体はさらにビルドアップを重ねている。着ている白いタンクトップが「もう限界っ!」と言わんばかりにはち切れそうになっていた。


「おはよう、父さん。今日も元気だね」


「当たり前だ。筋肉は怠惰を許さない! 休むのは壊れてからだ! これが俺のモットーだからな」


 父さんはブラック企業のスローガンみたいな文句を叫びながら、プロテインが入ったシェーカーを俺にぶん投げる。


 俺は片手でそれを受け取って飲み始めた。


「しかし、驚いたぞ翼。お前、月城さんと付き合いだしたんだろ。目標が叶って良かったじゃないか」


「ぶふっ!」


 まだ言ってなかったのに、どうせ父さんは「お前の筋肉が語っている」とか言うのだろう。


「まぁ……ね」


 いぶかしむような目で父さんを見ると、太陽みたいな眩しい笑顔で真っ白な歯を浮かべていた。


「見放されないように、これからもしっかりと励めよ」


「わかってるよ」


 俺は再びスミスマシンのベンチに座りベンチプレスを始めた。


「ところで月城さん、次はいつ来るんだ?」


「明日、来ると思うよ。……フッ! チートデイだから……フッ! テスト前だから……わかんないけど……」


「よし、今日は二人が付き合った記念だ。美味い肉でも買ってこよう」


「父さん、なんか俺より浮かれてない?」


「当たり前だ! 愛する息子に初めて彼女ができたんだぞ! お前も子どもができたら分かる。……孫か……」


「気が早すぎる!」


 妄想に耽る父さんをなんとか現実に引き戻し、俺は登校した。あんな父さん初めて見たな……。





 ――始業前の教室。


 俺が教室のドアをガラガラ開けるとクラスメートが一斉に俺を見た。特に男子からは殺気立つような視線が送られる。


「翼。おはよう」


「神崎、おはよう」


 頭が働いていない俺に駿とバレー部の津田がニヤニヤしながら近づいてきた。


「二人ともおはよう。なんか俺、みんなにすごい見られてるんだけど、なにかしたか?」


 すると、二人は気まずそうに顔を合わせて、俺を見る。


「お前、昨日月城さんに告白したんだろ?」


 駿の言っていることに俺は驚いて心臓が飛んでいきそうになる。


「な、なんで知ってるんだ?」


 津田が申し訳なさそうに頭を引きつりながら答えてくれた。


「月城さんが嬉しそうに、みんなに教えてくれてたよ」


「えぇっ!?」


 津田は苦笑しながら続ける。


「朝イチで女子が集まっててさ。『どうしたの?」って聞いたら、月城さんがめっちゃ照れながら──『昨日……神崎くんに告白されました……』って」


 ここにも、浮かれてるやつがいる! 俺は頭を抱えた。

よりによってあの学年一の美少女が、そんな恥ずかしいセリフをクラス全員の前で……。


「てか月城さん、今あっちで女子に囲まれてるぞ。愛が『どこで告白されたの?』とか『なんて言われたの?』とか、めっちゃ質問攻めにしてる」


「な……!?」


 怒り任せに首を振って高瀬を探すと、月城さんの席辺りに女子の輪ができていた。輪の中心にいるのはもちろん月城さんだ。それと、高瀬の金髪ポニーテールが忙しなく揺れているのが見える。


「それで!? 翼はそのときなんて言ったの!?」


「えっと……『好きです。俺と付き合って下さい』だったかな……」


「「「きゃ〜〜〜〜〜」」」


 月城さんが真っ赤になって身を縮めている。完全に高瀬が中心になって、月城さんをいじっていた。


 あいつには一発ガツンと言う必要がある。


「高瀬ぇぇぇ……!!」


 渾身の怒り声で名前を呼んだが、高瀬はとくに悪びれもせず、いつものように明るく笑っていた。


「おっはよー、翼! そんで、おめでとう! 麗と付き合えて良かったね」


 月城さんが、俺のほうへパタパタと寄ってきて、ぎゅっと制服の袖をつまむ。


「あ、あの……ごめんね……。私が、調子に乗って、みんなに話しちゃったから……」


 上目遣いでそんなことを言われるものだから、怒りゲージが一気に溶けていく。


「い、いや月城さんは悪くないよ……違うんだ、俺はその……」


 口ごもる俺に、高瀬が俺の背中をバシバシ叩きながら言った。


「いっぱい特訓してよかったね翼」


「特訓ってなに?」


 月城さんは少し前のめりになって、高瀬の話に耳を傾けていた。


「翼はね。麗のためにウチといっぱい練習したんだよ!? 最初は、ほんっと下手っぴで、ウチがフォローしないと全然できないくらいでさ。――でもね、何回もやってたらどんどん上手になって……今じゃもう、うちが押されるくらい大きくてたくましい男になってるんだよ?」


「…………え?」


 ピタリ、と月城さんの動きが止まった。笑顔がすぅっと消え──ゆっくり俺のほうへ振り返る。


「……神崎君。どういう……ことかな……?」


 その目は、入学した頃、俺を睨みつけていたときのあの鋭い眼光を放っていた。


 こ、こわっ!


「ち、違うっ!! 高瀬! お前言い方!!」


「えー? 事実でしょ? ほら、あの夕暮れの屋上でいっぱいしたじゃん」


「お、屋上で……?」


「ああああああ!! もう黙ってろ!!」


 そこでHRを告げる予鈴がなってしまい、高瀬のモテ会話マスター講座のことを説明できなかった。


 次の休み時間、俺は全力土下座の勢いで事情を説明し、なんとか機嫌を直してもらったのだ。直ったよな!?


 しかし、その日はもうずっと彼女から睨まれ続け、なんとも前途多難な恋人生活の一日目であった。


 ……まあ、隣で頬をふくらませている月城さんも、どこか嬉しそうに見えたんだけど。

会社員のため、執筆・投稿は週末が中心となります。感想・ブックマーク・評価が大きな励みになりますので、応援いただけますと幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ニヤニヤ いい感じに浮かれてるねえ 公認カップル化したら多少イジられるのはね…必要経費っていうか… でも高瀬それはラインギリギリだぞ
つきあい始めが一番楽しい時間ですよね。 よくわかります。 この二人がどうなるか、そしてトラブルはあるのか、それをどう乗り越えるのか。 とても楽しみです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ