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固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです  作者: 遠野紫


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79 温泉旅館

 その少女はツバキと言うドワーフの少女であった。

 そしてどうやら彼女の家族はここカタリスで温泉宿を営んでいるらしく、咲と桜の二人をそこへ案内するのだった。


「おし、着いたな」


「これ……旅館?」


 ツバキに案内された二人の目に飛び込んできたのはザ・旅館と言った和風建築であった。

 異世界の文明とは大きくかけ離れたそれを見た瞬間、二人の脳内に蘇ったのは日本の記憶……。


「……おい、大丈夫か?」


 心ここにあらずと言った様子の二人を見たツバキは心配そうにそう言う。


「あ、えっと、この建物は一体……?」


「ま、やっぱり気になるよな。話すとちと長くなるが……」


 ツバキは二人に自身の家系について説明を行い始めた。

 彼女曰く、彼女の家系はかつて召喚された勇者である日本人の男とドワーフの少女が恋に落ちた結果生まれたものであるようだ。

 そしてその男はどうしても和風の温泉旅館を作りたかったらしく、なんと一代にしてこの温泉宿を築き上げたのだった。


「なるほど……それでツバキさんは黒髪なんですね」


 この世界において黒髪は全くいない訳では無いものの、ほぼ見かけない程に少数である。

 そのためツバキが黒髪であることや彼女の名前が日本風であることも、彼女自身のその説明によって二人は納得したのだった。


 その後、説明を終えたツバキに案内されるがままに二人は温泉宿の中へと入る。


「おぉ……」


 まず二人の目に入ってきたのはロビーにあたる部屋だ。

 そこは落ち着きがありつつもしっかりと見栄えのある造りをしていて、まさに老舗の温泉旅館と言った風味であった。

 そんな光景を異世界で見ることが出来たのだ。

 当然のように二人の感情は激しく揺らぎ、言葉を失ってしまっていた。


「その感じ、もしかして二人はニホンジンってやつだったりするのか?」


 二人の様子がおかしいことに気付いたツバキはそう尋ねる。


「……え? あ、はい、その通りです」


「そうだったのか。それならいつも以上に頑張らないとな!」


 ツバキはそう言うと受付の奥へと入って行く。

 その後、咲と桜の二人は受付を済ませて早速部屋へと向かうのだった。


「ああ……召喚されてからまだ一ヵ月も経ってないはずなのに、なんだか凄い懐かしい……」

 

 部屋へと入った咲はそう言って畳の上に寝転がる。

 床は全て畳張りであり、そこだけ見れば異世界だと言うのが嘘かのような光景であった。


「確かに、この数週間だけで色々あったもんね」


 桜の言うように、二人がこの世界に召喚されてから本当に色々な事が起こっているのだ。

 初っ端から魔龍王に襲われたかと思えばダンジョンで転移トラップに引っかかり、その先でさらに追加で魔将二体と戦ったかと思えば今度はアルタリアでももう一体の魔将が現れたのだ。

 もはや「濃い」だとか「色々あった」だとか、そんな優しい言葉で言い表せるものでは無かった。

 

 それだけの事が起これば嫌でも強く印象に残ってしまうものである。

 その結果、長いことこの世界で生きてきたのではないかと言う錯覚を覚えていた二人。


「どうせだし、もう温泉いっちゃおうか」


 このままでは感傷に浸ってしまって動けなくなりそうだと思った咲はそう言って桜を温泉へと誘った。

 

「……そうだね。えへへ、楽しみだな」


 一方で桜も咲のその誘いを否定する理由は特に無いため、快く受け入れたのだった。


 そうして温泉へと向かう咲と桜はその道中で一人の少女と出会った。

 

「ツバキさん……?」


 それは紛れもなくツバキであったのだが、纏う雰囲気が先程とは全く違っていた。

 ドワーフだと言う事を考慮しても見た目相応の無邪気さを感じさせた先程までのツバキの姿とは打って変わって、今の彼女は高級そうな着物を纏い、おしとやかな雰囲気に包まれている。

 それどころか見た目は小学生くらいの少女であるのにも関わらず、どこか色気すらも感じさせていた。


「はい、ツバキです。お部屋の方はいかがでしょうか」


「……凄くよかったです」


 ツバキの驚くほどの印象の変化と和風な旅館への感動で、咲の感情はぐちゃぐちゃになっていた。

 その結果何とも言えない返しをしてしまったのだが、ツバキはそれを聞いて嬉しそうに微笑む。


「……」


 その艶めかしい表情を見た咲は思わず言葉を失っていた。


「咲ちゃん……?」


 そんな目の前の少女に見惚れている咲を、桜はジトっとした目で見ながらそう言う。


「えっ、あっちが、違うの桜」


 桜の視線に気付いたのか咲は慌てて弁明しようとするものの、上手く口が回らない様子である。

 結局、二人は妙な空気のまま温泉に入ることになるのだった。

本作をお読みいただき誠にありがとうございます。

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