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固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです  作者: 遠野紫


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78 温泉都市カタリス

 中央都市アルタリアを出発した咲と桜の二人は地図を広げて次の目的地を探していた。

 ひとまず国境を越えようとしていたのだが、国境まではそれなりの距離があるのだ。

 このまま一直線に向かったとしても何泊も野宿をすることになってしまうだろう。


「咲ちゃん、これ……」


 そんな中、桜は地図上のとある街を指差しながらそう言った。


「温泉都市……?」


 そこは「温泉都市カタリス」と言う街であった。

 

 何故そう呼ばれているのか。

 簡単な話である。カタリスの近くには大きな活火山があるため、近くには数多くの温泉が存在しているのだ。

 当然それを目当てにやってくる観光客も多く、そのための温泉宿も発展していった。

 その結果、今ではアルタリア王国の中でもかなり栄えている街となっているのである。


「温泉……」


 咲は無意識の内にそう呟いていた。

 それだけ温泉と言うワードは二人を惹きつけたのだ。


「行くしかない」


 咲は速攻で判断をくだす。

 日本人である彼女が温泉に勝てる訳が無いのである。

 

「でもこの街って結構遠いよ? 歩いて行ったらいつになるか……」


「そっか……」


 カタリスは中央都市からは結構な距離があり、それこそ直線で行こうものなら道中の旅は辛いものとなるだろう。

 しかしその時、咲は何か思いついたかのように口を開く。


「私にいい考えがある」


 そう言うと咲はそそくさとベルトを呼び出し、ケツァルリングを取り出すやいなやそれをベルトに装着してケツァライザーへと変身した。


「えっ、もしかして……」


 桜の中に嫌な記憶がよみがえる。

 魔霊王と戦った時、ケツァライザーとなった咲に抱え上げられたまま遥か上空へと飛んだ時のあの恐怖が彼女の中で鮮明に蘇ってしまった。


「ごめんね桜。……でもこうでもしないと街に着くのがいつになるのかわからないから」


「ま、待って咲ちゃ」


 咲は謝りながらも一切躊躇うこと無く桜を抱え上げた。

 そして桜が抵抗の意思を見せる中、容赦なく空へと飛びたつのだった。


 それからしばらくの間飛び続けた咲は、馬車なんかで移動するよりも遥かに速くカタリスへとたどり着くことに成功した。


「着いたよ、桜」


「ふぇ……つ、着いたの……?」


 出来る限り下を見ないようにしていたものの、飛翔による独特な浮遊感と強く吹き付ける風のせいで桜は限界間際となっていた。


「はぁ……はぁ……」


 たった数分飛んでいただけなのにも関わらず、桜は物凄く久しぶりに地面に立ったかのような感覚に襲われる。

 それだけ飛翔による恐怖が大きかったのである。


「ご、ごめんね……?」


 その様子を見た咲は流石にやり過ぎたかと思い謝罪する。

 とにもかくにも、こうして二人はカタリスへとたどり着いたのである。


 その後、咲は桜を少し休ませて一旦落ち着かせてから街へと入った。


「こ、これって……!」


 そんな二人の前に現れたのは、どこを見ても温泉だらけな街の姿であった。

 そこかしこに温泉が流れており、常に湯気が立ち上っているその光景は圧巻と言う他無いだろう。


「凄いよ咲ちゃん!」


 先程のグロッキー状態はどこへ行ったのやら。温泉を前にして桜はテンション高めではしゃぎ始めていた。


「それにしても本当に温泉宿だらけだね」


 咲は周囲を見渡しながらそう言う。

 そこかしこに温泉が流れていることからもわかるように、ここカタリスには温泉宿だらけなのだ。

 全く事前情報の無い二人にとってはどこへ行けば良いのかもわからなかったのである。


 そこで咲はおすすめの温泉宿について街の人に聞こうと思い、たまたま近くにいた黒髪の少女に声をかける。


「すみません、少しいいでしょうか」


「うん? 私に何か用かい?」


「突然ごめんない。私たちこの街について全然知らなくて、おすすめの温泉宿を教えていただければな……と」

 

 咲がそう言うなり、その少女はにやりと笑った。


「おお! それなら是非、私の所に来るといいよ!」


「それってどういう……」


 少女の言っている意味がよくわからなかった咲はそう返す。

 するとその少女は「ああ、そういうことね」とでも言いたそうな表情を浮かべるやいなや、二人に向けて自己紹介を行った。


「私はドワーフのツバキ。私の家系は代々この街で温泉宿を営んでいるんだよ」


 それを聞いた咲はそこでやっと先程の彼女の言葉の意味を理解するのだった。

本作をお読みいただき誠にありがとうございます。

今回から温泉都市カタリス編が開始です。


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