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固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです  作者: 遠野紫


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51 別れ

 直接国王に殴り込みをかける。そんな咲のぶっとんだ案を聞いた桜は困惑を隠せずにいた。


「国王を相手にするってこと……? でもそれじゃ最悪、アルタリアどころか他の国まで敵に回すことになるんじゃ……」


「でもやるしかないよ。アルタリアから離れるように逃げたところで、いつまでも逃げ続けられる訳じゃ無いだろうし。それなら国王に直接撤回させる方が速いし確実」


 桜は咲を心配していたが、彼女の決意は決して揺るがなかった。

 そのため、その日の内にフェーレニアを出ることにした二人はレイナに挨拶をすることにしたのだった。


「そうですか……もう行ってしまわれるのですね」


 二人がフェーレニアを出ると言う話を聞いたレイナは悲しそうな表情でそう言う。


「あ、あの……!」


 そんな時、咲の元にエレナが駆け寄ってきた。


「エレナさん? お体の方はもう大丈夫なんですか?」


「は、はい! おかげさまで……って、そうじゃなくて! えっと、その……また来てくれるのよね……?」


「ええ、問題が片付いたら必ずまた会いにきますよ」


 咲はそう言ってエレナの前にしゃがみ込み、彼女の頭を撫でる。


「えへへっ、それならよかったわ……あっいや、良かったです」


 それが嬉しかったのかエレナはその表情を緩ませる。

 しかしその後、咲が真剣な顔になったのを見た彼女は自身も同様に真剣なまなざしで咲を見るのだった。


「そのためにも、あの時みたいに自分勝手に魔物の討伐に出ては駄目ですよ。想定外の事態で理不尽に命を落とすことだってあるんですから」


「……わかってます。ごめんなさい」


 咲にそう言われ、エレナはしょんぼりとした様子で謝る。


「……聞いてもいいかな。どうしてあんなことを?」


 その様子を見た咲は何か訳があるんじゃないかと思い、彼女にあの時の危険行為の理由を尋ねた。


「私は……ブルーローズ家の次女として武勲を立てなければいけなかったんです。いつまでもお姉さまに任せっきりな訳にもいかなかったから……」


 エレナは徐々にその力を失っていくレイナ陣営の事を思い、あのような強引な手段に出ていたのだった。

 だがその行動の結果多くの騎士を失ってしまい、あと少し咲が助けに来るのが遅ければ自身も命を落としていたことだろう。

 決して褒めれらた行動では無かった。


「そうだったんですか。エレナさんもブルーローズ家のために色々と考えているのですね」


 だがそんな自分勝手な行動をしたエレナを咲は責めるでもなく、むしろ優しく抱擁するのだった。


「咲さん……?」


 てっきり責められると思っていたエレナは咲のその行動に驚いていた。


「それでも、やっぱり自分の命は大切にしないと駄目です。貴方の事を大事に思う方もいるのですから」


 咲はそう言いながらレイナの方を見る。

 彼女だけでは無い。ブルーローズ騎士団の皆もエレナの事を慕い、同時に彼女のことを大事に思っていた。

 

「そう……ね。こんなことに気付けなかったなんて」


 エレナは目に涙を浮かべ、改めて自分の行動を悔いると共に、もう二度とこのようなことはしないと心に決めたのだった。


 そうしてレイナとエレナとの挨拶を終えた二人は今度はアルタリアへと向かう方法を探すのだった。

 とは言え今彼女たちがいるフェーレニアとアルタリアは普通に歩いて行けば数週間はかかる距離である。

 少なくとも馬車などの移動手段が欲しい所であった。


 そんな時、アルタリアへと向かう行商人が護衛を探しているという情報を得た咲はすぐさまその護衛を受けることを選んだ。


「……なので、護衛をするかわりにアルタリアまで送ってもらいたいんです」


「ちょ、超位冒険者様がうちらなんかの護衛を受けてくれるのかい!? それは助かるけど……そんな高い報酬、うちらは払えないぜ?」


 行商人は超位冒険者である咲に護衛を引き受けてもらえることになり、思わずそう叫んでしまっていた。

 普通、護衛任務などの雑用に近い依頼は下位冒険者などの最低限戦闘力はあるがどこかパッとしない者たちが受けるものなのだ。

 超位冒険者ともなればその依頼料は青天井となり、そこらあたりの行商人が払えるものでは無かった。


「いえ、報酬はいりません。私たちはアルタリアまで行ければそれでいいんです」


 だが二人の目的はあくまでアルタリアへと向かうこと。護衛としての報酬は最悪無くてもいい訳であり、とにかく馬車に乗せてもらうことを最優先にしていた。


「こりゃ驚いたな……。報酬がいらないって、後でやっぱりとか言われても無理だかんな……?」


 行商人は本当に驚いた様子でそう言う。商売を行う者だからこそ、お金の持つ力や意味を痛い程知っているのだ。

 そのため、咲による報酬という対価の無い護衛に少々不信感を抱いていた。


「……まあ、ここ最近魔物が活発化してるからな。超位冒険者程の実力者が護衛になってくれるんなら安心だ」


 しかしここ最近は魔物が活発化していることもあり、最終的に行商人は咲に護衛を任せることを選ぶのだった。

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