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固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです  作者: 遠野紫


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18 別行動

 鑑定スキルを手に入れたためか咲を引き寄せる力は消失し、彼女たち三人は無事にダンジョンから出ることが出来たのだった。

 しかし三人の災難はまだ終わらない。


「ここ、どこ……?」


 ダンジョンの外にでた後、変身を解除してから桜を下ろした咲はそこで途方に暮れた。

 彼女の前に広がる風景は全くもって見覚えの無いものだったのだ。


 どうやら入った所とは全く別の出口から出て来てしまった……と言う訳ではもちろん無い。

 そもそも三人は転移トラップに引っかかってしまった訳であり、その時に全く別のダンジョンであるこの鳥人遺跡へと飛ばされていたのだから。

 その事実を改めて突きつけられた桜は今にも泣きそうな顔をすると咲に強く抱き着いた。


「桜……」


 そんな彼女を少しでも安心させようと咲は優しく抱きしめ返す。

 その時、佐上が目を覚ましたのだった。


「……はっ、俺は何を」


「ここはダンジョンの外。仕方ないからアンタも連れてきた」


「咲、お前生きていたのか……!? いやそれよりダンジョンの外って……まさかお前が?」


 佐上は気絶から覚めたばかりで混乱する頭を精一杯使って状況を理解しようとしていたが、上手く飲みこめずにいた。

 何しろ色々なことが一度に起こり過ぎているのだ。

 

 転移トラップによって無理やり転移させられたかと思えば遥か格上の魔物に襲われ、その後は隠し部屋のトラップに殺されかけたかと思えば間一髪で助かった。

 ……かと思えば今度はいるはずの無いカルノライザーが突如現れ、殺されかけたのだ。

 普通の人間が、ましてや高校生である彼がそんな混沌とした情報を処理しきれるはずも無かった。


「そうだ、カルノライザーはどうした!」


 とにかく今一番危険なのはカルノライザーだと言わんばかりに佐上はそう叫ぶ。


「あー……もう行ったんじゃないかな」


「そ、そうか……よかった」


 咲のその言葉を聞いた佐上はホッと胸をなでおろす。

 もっとも咲のその言葉は嘘であり、今目の前にそのカルノライザーがいるのだが、彼がそれを知ることは無い。


「にしてもどうしてこの世界に……それもこのダンジョンにいたんだ。ああ、クソッ……もう少しで桜ちゃんの……」


「もう少しで……何?」


「ぅ゛っ」


 咲が威圧感のあるオーラを纏いながら佐上の前にしゃがみ込む。

 その姿にカルノライザーのそれを重ねてしまった佐上は言葉に詰まり、無意識の内に後退りをしていた。


「な、なんだよ……言っておくが未遂だからな! 指一本も触れてないんだから俺は悪くねえよ!」


「反省してないってこと?」


「うるせえ……外れ勇者のお前が、俺に歯向かうんじゃねえ! ……か、体が動かねえ!? クソッ、なんなんだよ!」


 剣を抜こうとした佐上だったが咲の放つオーラには勝てず、恐怖で体が動かなくなってしまう。


「まあいいや。今後桜に一切手を出さないなら許してあげる。私も出来るなら人は殺したくないし。でももし何かしたら……その時は覚悟してよね」


「はぁ……はぁ……。クソッ……!」


 咲が佐上から視線を逸らすと共に、彼の体は再び動くようになった。

 しかしもう彼は剣を抜こうとは思わなかった。

 ……思えなかったのだ。咲と戦えば間違いなく自分の命は無い。そう本能で理解してしまっていた。


「わかった。お前がそのつもりならもういいさ」


 そう言うと佐上は二人を置いて歩き始める。


「ちょ、ちょっと佐上君……? もしかして、一人で行くつもりなの?」


 あんなことをされたと言うのに桜はまだ佐上の事を心配していた。

 それだけ優しい心の持ち主である彼女の言葉も今の彼には届かなかった。


「お前たちと一緒にいて余計なことに巻き込まれるのはもう散々なんだよ。こんなことなら一人でいた方がずっと良かった」


 振り返った佐上はそう吐き捨てた後、彼女たちの前からその姿を消したのだった。


「佐上君……」


「巻き込まれるって言っても、転移したのも元はと言えば佐上のせいな気が……」


「それはそうかもしれないけど……一人で大丈夫なのかな」


「桜は優しいね。まあそう言う所が好きなんだけど」


「す、好き……!?」


 咲がそう言ったその瞬間、桜が目に見えて動揺し始める。

 その頬は赤く染まり、呼吸もやや荒くなっていた。


「どうしたの?」


「な、なんでもないよ……それより私たちも移動した方がいいんじゃない? またいつ魔物に襲われるかもわからないしさ。」


 それを咲に悟られないように、桜は強引に話題を変えようとしていた。

 とは言えその内容は決して間違ってはいないため、咲も何も疑うことはなく桜の言う事に従うのだった。

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