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厄介




結婚の申し込みは阻止出来たが、ファムズが開催する初めての舞踏会にマリオンの王を招待したそうだ。

万が一にも公の場で結婚の話をファムズ側から持ち出したりでもしたら、いよいよ取り返しがつかなくなる。

それにソルートの姫とのことも、なんとか穏便に王妃に刺激を与えない形で収束させたいとカイトは言った。




「母上を納得させて、マリオンの王との結婚話を諦めさせると共にアサナシアを撃退する方法は1つしかないとマートと再会して思いついたんだ」


「1つだけじゃないと思うな」


「マートを男として、女としての私の婚約者にすれば少なくとも想う相手がいるのに政略結婚を強行する必要が無くなる」


「普通に男のカイトの婚約者になる、じゃダメなのか?万が一にも婚約者とか無理だけど」


「母上は私を女と思っているし、アサナシアには結婚対象は男なんだと思わせたい。正攻法で結婚を拒否出来ないなら、相手から断らせる方法を行わないと話が通じないからね」


「そりゃそうだろうけどさ〜………………今なんて言った?」




聴き逃がせない爆弾発言を聞いて、真琴は頭を抱えた。

問題ばかりのところにさらに問題があるなんて聞いてない。

恐る恐る聞き返せば、どこか陰りのある満面の笑みで重大な事実を告げた。




「母上は私を、女として育てたんだ。生まれた時から今この瞬間までずっと」


「……理由を聞いてもいい?」



言いづらいことだろうに、カイトは間を開けることなく話すことを了承した。

いわく、王妃は女の子供を熱望していたらしい。

跡継ぎの男子を最初に産み、万が一の為の次男も産んだ。

だからこそ、次に生まれてくる子こそは女の子を産もうと決意するも。

次で出産を終わりにしなければ、命の保証が出来ないと医者に言われたそうだ。




「来る日も来る日も願い続けて妊娠し、待望の子供は産まれた。双子だった。最初に産まれた子は男、次に産まれた子は女ーーーー死産だった」


「…………………………ごめん」


「マートが謝ることじゃないよ」




せっかく産まれた女の子が死んでしまったショックに耐えきれず、王妃は双子であるカイトを女だと思いこんでしまった。

死んだのは男、生き残ったのは女。

だからカイトは今日に至るまで『姫』として育てられたのだ。




「なんでそんなに女の子が欲しかったの?」


「当時のファムズは酷い貧乏な国だったから、母上はなんとかして豊かな国にしたかった。居場所が無くて半ば捨てられた自分を救ってくれた国の為に、自分と同じことをしようと考えたんだよ」




豊かな国に娘を嫁がせることで、ソルートに頼らずにファムズを豊かにすることを夢見た。

自分がそうしたように、なにかしらの利益を生ませたいと考えたのだろう。



娘にしても、立派な国の王族に嫁ぐのだから幸せになるに決まってる。

自分自身が、幸せになったのだから。




「健気というか、厄介というか……」


「父上は前者で、兄上たちと私は後者の考えだよ。臣下の者たちも意見はバラバラだ」


「少なからずカイトを嫁がせてもいいって考えてる臣下がいるの!?」


「……恥ずかしながら」




真琴はあらためてカイトの顔をじーっと見つめる。

今でこそ半裸になっているおかげで男だと認識出来るが…。

これで豊かな黒髪を綺麗に結い上げて化粧もほどこし、美しい宝石を飾った素晴らしいドレスを身にまとえば眩いばかりの美女になるだろう。



真琴は自分よりはるかに輝く美しさを見せる美女のカイトの姿を簡単に想像出来てしまい、一気に気分が沈みその場に倒れた。

いきなり倒れた真琴を心配して声をかけるが、今はその優しさすら辛い。

平気だと言いながら起きあがると、あらためて考えをまとめることにした。




カイトを含めファムズはソルートとの縁を切って、新たにマリオンと交易を結びたいと思っている。

その為にはファムズ側も、なにかしらの取引材料を用意しなければならない。



その材料が、国王夫妻と王子たちで意見が真っ二つに割れている状態だ。



国王は最愛の妻の為なら、息子を娘にして嫁がせてもいいと考えていて。

王太子を筆頭にした息子たちは、そんなことをしても男だったことがすぐにバレて下手したら戦争になると危惧している。

マリオンの王は、根っからの女好きと情報を入手しているのだ。



それゆえに、ファムズで収穫出来る作物でも加工品でも取引の材料に出来ないかとカイトたちは考えていた。



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