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過去に思いを馳せる





「ごめんなさい。まさかこんな形で再会出来るなんて思ってもいなかったから、つい興奮してしまって…」


「いや、私も再会出来て嬉しいけどね。だけどまさかあの絶世の美少女だったオルちゃんが男だったなんて……」




世の中、何を信じればいいんだ…と切なげに言った真琴に。

はにかみながら微笑む顔を見せたその表情は、幼い頃の面影が確かにあった。

天使より可愛い女の子と信じていたオルちゃんが、斜め上どころか逆回転トルネード成長して目の前にいる。

しかしたとえ性別が男だったとしても、どこから見ても麗しい美貌に育っている事実に……これが格差かと真琴は血反吐ちへどを吐きそうだった。



オルちゃんと出会ったのは、真琴が祖父母が住まう田舎に遊びに行った時のことだ。

当時の真琴は狭々しい街中よりも、広大な山や森を自由に駆け回れる田舎で遊ぶ方が好きだった。



だから長期の休みの際には積極的に遊びに行って、祖父と一緒に家から比較的近い林の中へ散歩をしていた時にオルちゃんを見つけたのだ。

たった1人でポツンと立っていて、シンプルな真っ白のドレスを着ていたこともあって真琴は祖父に「天使捕ったどー!!」と叫ぶと同時にオルちゃんに思いきり抱きついた。



その場に駆けつけた祖父は、孫に抱きつかれたまま泣きながら気絶した子供を見て瞬時に何があったのかを悟る。

そして真琴に特大のゲンコツを落とした。



それからこのままではいけないと家に連れ帰り、すぐに訳ありと察しておよそ2週間ほど祖父母の家で一緒に過ごすことになる。

そしてある朝、オルちゃんはいなくなった。

あまりに突然だったのと、痕跡を何一つ残していなかったゆえに唐突に寂しさが真琴を襲う。

そのせいで、祖父母が驚くほど泣き叫んだ真琴は三日三晩高熱を出して寝込んでしまった。



おかげで当時の記憶は曖昧なのだが、今こうして色々と思い出したのだから結果オーライだろう。




だけど思い返してみれば、当時オルちゃんは1人では着換えが出来ないからと祖母が率先して手伝っていたし。

風呂もなんだかんだ別だったので、これでは今の今までオルちゃんは女の子だと信じてしまっても仕方ない。

誰も目が潰れそうになるほどの美青年になるなんて、想像出来ないだろう。



……真琴は祖母が大笑いしながら自分を指さしている幻覚が見えた気がした。




「色々、事情があるんだ。子供の頃もそうだけど、今もそれは続いてて……」


「え」


「そのせいで、本当にマズイことになっているんだよ。下手したらーーーーーー戦争になるかもしれない」




穏やかじゃない単語が出てきて、さすがに顔が引きつってしまった真琴に追い打ちをかけるように。

カイトは真琴の両手を包み込むようにして強く握り、まっすぐに見つめながらこう言った。




「お願い。男として、私の伴侶になってくれないか?」





カイトは真琴に現状起こっている、わりとシャレにならない問題について話しはじめた。

カイトが住んでいる国は農業大国と呼ばれる、ファムズと言うのだが。

17年前までは、荒れ果てた広大な土地を持て余していた貧乏な国だったらしい。



そこへ当時8歳だったカイトが、画期的なアイデアを持って革命を起こしたのだ。

領民と協力して土地を開墾し、痩せた土地を肥えた土地に改良して女神より与えられたという作物を育てはじめた。



そこから大量の作物が採れるようになり、高品質な野菜や果物を輸出するようになってからは近隣諸国から一目置かれるようになったそうだ。

そこから牛や鶏などの動物を他国から買って、畜産にも力を注ぐようになり今に至るという。



話を聞いた限り、最初こそ苦労があったにしろ何か大きな問題が起こるようなことがあるとは思えない。

国の跡継ぎ問題や、酷い伝染病が流行っているとか。



貧乏だった国が裕福な大国になったことが許せないと思っている国の嫌がらせが続いているとかいう話なら、真琴は手に余ると正直に話すしかない。

だけどやはりお人好しなところがあるので、話『だけ』は聞いてみることにした。




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