身内問題
「カイトのお父さんって、国王として権力だけ持ってる感じ?」
「ハッキリ聞いてくるね」
「だってさ、話で聞く限りカイトたち王子がこの国を動かしている風に聞こえて」
かなり突っ込み過ぎた質問だったが、それでもいずれ伴侶になる前提の婚約者(仮)になるのだから詳しく知っておかなければならなかった。
カイトの周囲は複雑すぎて、情報不足は真琴のみならず最終的にはカイトの味方にまで被害が及ぶことになる。
出来るだけ情報を聞いて整理し、対応策を考えなければ真琴の安定した衣食住の保証は無い。
食べること安心して眠ること、身だしなみを整えることができなければストレスで死んでしまう。
それを身を持って知っていた真琴は、わりと必死にカイトから情報を引き出した。
今のうちでなければ、こんなに詳しく話を聞けないとわかっているからだ。
そして現在のファムズの政の形態を聞けば、王様は無能ではないのだろうが働けよと言いたくなる有り様だった。
まず始まりは、カイトが新たな作物を生み出し増やすところからだったそうだ。
魔法は一般的ではないとは言っていたが、カイトは才能があったのかと真琴が尋ねれば君のおかげだと言葉が返ってくる。
なんでも、真琴の世界に行ってこちらに帰ってきた際に作物生成の魔法が使えるようになったというのだ。
だけど作れる作物はそこまで多くなく、せいぜい10種類ほどらしい。
キャベツ・タマネギ・ニンジン・ジャガイモ・レタス・トマト・ピーマン・キュウリ・リンゴ・ブドウの作物だ。
「もう少し種類増やしたいところだけど、増やせないの?」
「君の世界で育てている作物に比べたら圧倒的に少ないからね、私も増やしたいと思っているんだけど……」
「出来なかった?」
「この17年間、出来るだけのことはやったけれど変化はなかった。条件がなんなのかまるでわからなくて……」
しかし真琴の世界に行って帰ってきてからこの魔法に目覚めたのだから、おそらく世界を行き来するという行為……もしくは異世界に関わるものと接触したらいいんじゃないかと考えられる。
すなわち、異世界からやって来た真琴となにかしらのことを行えば作れる物が増えるかもしれない。
そこまで考えて、カイトから話の続きを聞いた。
「だけどひどい天候不良の時や、作物の病気が蔓延した時ですら私が新たに生み出すことが出来たからね。……そのせいで、私は絶対に必要だけど国王はいてもいなくても同じという印象を民に強く与えてしまったんだ」
先ほど言った天災の時に、カイトは自身の有用性を強く示してしまった。
だけど作物を生み出すだけでは国の政は回らない。
そこで国王自らが積極的に動けば良かったんだろうが、すでに内務を王太子が、外務を第2王子が効率よく回していたそうだ。
だが仮にも国王だからという理由で国の事業代表者の王太子は事業内容を詳しく説明し、認可を求める。
しかし自らがまったく関われなかった事業のことを説明されても、8割型理解出来ず。
最近では詳しく話を聞かず、認可のハンコのみ押す形になっているそうだ。
「……なんか、引きこもりのイメージが強い王様だね」
「あながち間違ってないかな。父上は、未だに貧乏なファムズの世界で生きているんだよ」
「どういうこと?」
「貧乏だけど互いに支え合って助け合って、親しく身分上下の区別なく国の全ての人々と付き合って。近しい国はソルートぐらいで、他の国は遠い遠い……まるで物語の中のことで現実じゃない。夢を見てるんだ」
「置いてかれてるんだ、現実と未来に」
「向き合ってほしいんだけどね。それが無理なら早く王太子の兄上に王位を渡してほしい」
「王太子のお兄さんっていくつ?」
「27歳になる。子供も2人いてね、どちらも男。5歳と3歳」
「可愛いんだろうね〜!」
「可愛いよ。……私を好きになってくれたら、もっと可愛いって思う」