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マリオン





「マリオンってどんな国なんだ?」


「海に囲まれた島国だよ。だけどファムズと違って人が住める土地はあっても、作物を育てられるような余分な土地はないんだ。引いては家畜を飼える土地も無い」


「なるほど。だから漁で捕れた海産物や、塩とかの加工品が命綱なんだな。野菜や肉が自国生産出来ないから」


「あとはそうだな…、マリオン特有の国民病が流行って大変だそうだよ。歯肉が出血して腫れやすくなったとか、関節が痛んだり…貧血患者も増えたって」


「壊血病じゃん!!」




真琴は叫んだ。

野菜と肉をめったに食べられないために、その症状が出る病気は有名過ぎたからだ。

異世界特有の病気の可能性もあるが、おそらくは真琴が考えている病気でまず間違いない。



「病について詳しく知ってるの?」というカイトの言葉に、真琴は静かに頷いた。解決策もわかっている。

どうにかしてそれを手土産に取引を上手く成立させれば…というところまで考えて、続きの情報を聞いた。





「今はゲートのおかげで色々流通するようにはなったらしいけど、数が圧倒的に足りていない」


「ならやっぱり向こうこそファムズとの取引を望んでるでしょ!必要な物がこっちにあるんだから」


「でもね、周辺から取り寄せれば事足りると言われればおしまいだ」


「……それで本当に足りるの?」


「最低限じゃないかな」


「ファムズの重要性に気づけよマリオン!!」





叫んだところでほら穴に響き渡るだけである。

狐と狸の化かし合いじゃあるまいし、なぜ互いに補い合い助け合うことが出来ないのか。



欲しい物をお互いに取引しましょう、と素直に言えないのは相手がまだファムズのことをよく知らないからだ。

どんな国で、どんな為政者が治めているのか。

取引を行って、どんな利益が得られそれによってどれだけの損を被ることになるのか。




全てが手探り状態なのだから、今回の舞踏会でキッカケを作ったことはまさに好機以外の何物でもなかった。





「ファムズは外交を広く行ってこなかったから、遠い地にあるマリオンが積極的にならないのも仕方ないことなんだ」


「警戒してるわけか。舞踏会に参加することに決めたのも、視察が主な理由ってことだね」


「……初めから皇族がやって来るとは思っていないけど、でも叶うなら皇弟すめいろとが来てくれるといいなとは思っているんだ」


皇弟すめいろと?」


「こちらで言うところの王様の弟のことだよ。マリオンは兄が皇帝で、弟が皇太子なんだ。衣服も変わっていてね、マートの国のキモノ?に似ているけど、えりぐりや袖はゆったりしてる。すそが長くて足を出さないんだ」


「漢服…かな?王族の呼称もそれっぽいし、中華な文化なのかも」


「初めての舞踏会で、皇帝自らが参加するとはさすがに思わない。だけどせめて皇族が来てくれれば、その日の内に取引の話を進められる。なるべく早く、ソルートに口を挟む隙なんて与えないままこの国にとって良い結果をもたらしたいんだ」




焦る気持ちはわかる。

聞いただけでもろくでもないソルートの人間がファムズにやって来て、下手に引っかき回す前により良い取引を結びたいと願うのは間違っていない。


だけど今までろくに外交を行なえなかったのは、それをする為の材料が無かったからだ。

自国を整えるだけで精一杯だったのが、今回ようやく外に目を向けることが出来るようになったのだから。




それはマリオンも同じだと真琴は思った。

圧倒的な食料などの不足はなんとかしたいに違いない。

それを一気に解決出来るファムズ王家が、取引をするに値する意味があると思わせないといけないのだ。





「舞踏会の1週間前にはマジェスタの一団がファムズを訪れて、ゲートの設置をしてくれる手筈てはずになってるんだ。安全が確認出来たらまずマリオンの特使とくしがやって来て、それから皇族が来るかどうかが決まるだろうね」


「つまり、その特使を納得させられるかどうかで皇族が舞踏会に参加=取引をするか否かが決まるってことか……」


「母上に余計なことを言われる前に、なんとかして純粋な取引に持ち込みたい!!」


「だよね〜……」




そもそもが、カイトの嫁入り話に持ち込まれるのを阻止する為の取引だ。

その上でうまく塩のが取引されるようになれば、ソルートの姫が輿入れすることは絶対に出来なくなる。

なにせファムズの王子たちは、カイトを除けば2人とも妻や婚約者がいるのだ。




それに、ファムズの産業の要は『カイト』だ。

下手に嫁がせられないし、伴侶は迎えられない。

それに兄たちとのバランスも取らなければならなかった。




「そこでマートの出番だ!」


「どこに私の出番があった??」


「私自身が国の要であることは間違いようのない事実で、それは兄たちもわかってる。だけど私は王には絶対にならない」


「………………つまり、家臣の中でカイトを持ち上げてるやつがいるわけ」


「ちなみに王太子の兄上派閥の連中が、私をマリオンに嫁がせたいと考えてる」


「後継者問題ぃー」



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