1.5話 魔獣四王が集う少し前の話 中編
目に光が差し込んできたのを感じた。
いったい何が起こったのか。
あの恐怖は夢だったのか、いまいち定かではない。
そうアーグは寝起きと同時に思った。
「おい、目が覚めたか」
俺が目覚めた時、団長がはなしかけてきた。
そうだ、俺たちは団長があの化け物に捕まって、死んでいるのを見て。
「ってなんで生きてるんですか!?団長てっきり死んだのかと」
確かにあの時、天井から落ちてきた血は団長のものだったはずだ。
一体なぜ、まさか幽霊!?
思わず悲鳴をあげそうになった。
「勝手に殺すな…といいたいところだが、俺もなぜ生きてるのか分からん。完全に死んだものだと思っていた。それに」
横を見ると、大量に酒を飲んで寝こけていた仲間もいる。
あんな化け物の隣で寝ていたんだ。
とっくに食われていたものと思ったが。
「こいつまでご丁寧に運んでくれたようだ」
「何のために!?」
「さぁな。だがみろ。お前の体に巻き付いているものを」
よく見ると体中に蜘蛛の糸が巻き付いていた。身動きが取れない。
「ここで蒸し焼きにでもして俺たちを食うつもりか?」
「いえ、この周囲には城が見えない。食うつもりならこんな離れた所には置かないでしょう。城のそばでいいはずだ。となると考えられるのは」
「放置されて苦しみながら死に絶える。俺たちみたいな盗賊にはお似合いの末路ってわけか。はっ、笑えんな。むくいかもしれんが、な」
団長が自虐気味に笑う。
「あの化け物が俺たちをそんなカテゴリーで見ていたのかは疑問ですがね」
確かにアーグたちは好んで盗賊になったわけではなかった。盗賊には農民や孤児出身が多い。貴族たちの無理難題や過剰なまでの搾取に耐えかねて、そう生きるしかなかったからだ。
団長やアーグ、そしてほかの団員も同様だった。だから、生きる為に!、を免罪符にして悪行を行ってきたのだ。
人殺しだってしたことがある。だが、先程の恐怖で心が折れた。もうそこまでして生きていたくない。
「このまま餓死するのも、良いかもしれないな」
そう思った時、何かとてつもなく大きな影が太陽の光を遮る。
そして、見たこともない怪鳥がアーグたちの前に降り立ったのだった。
「・・・・・・・・・・・!!!!??」
ズシンッとその鳥が地面に降り立つ音がし、風が吹き荒れる。
その時起きていた団員は全員目の前の現実を受け入れられず、ただ目と口をあんぐり開けて呆然とすることしかできなかった。
「あなた達、どうしたのかしら?こんなところで」
「こ、こいつは…」
盗賊団の団長には一匹だけ心あたりがいた。これだけでかい鳥のモンスターは他にいない。
「怪鳥王フェルミナ!」
「団長、フェルミナってまさか魔獣四王の」
それは伝説の四匹の魔獣の名前。竜王、蜘蛛の王、怪鳥王、スライム王の四匹だ。
ランクは魔獣の中でも危険度最高位、ランクSオーバーに設定されている。
他にランクSオーバーの魔獣の存在は、アーグが知る限りでは現魔王パンドラ含む歴代魔王しか知らなかった。
そもそもランクSオーバーとは、Sランクを超越した存在、魔王につけるために生まれた危険度だ。
それが近年急に頭角を現してきてこいつら四王にも適用されたのだ。
だからランクSオーバーは魔王と四王以外にいない。
そう考えていて思い出したが、 四王には蜘蛛の王もいたな。
四王で有名なのは人間とも交流しているという異質な存在、怪鳥王とスライム王の二匹だ。
だが、人間とは関わらず遠いどこかの地で独自の文化と国を生み出した蜘蛛の王がいるという。
存在が確認されることが少なく、あまり知られていない。
まさか昨日の蜘蛛の化け物は。
「どうしたのかしら。こんなところで」
思ったより怪鳥王が気さくに話しかけてきたことに皆が驚いた。だが、それならば交渉の余地があるかもしれないと全員が考える。
勝手に王国を作り、人間とも商売をしている怪鳥王だ。
フェルミナは思ったより人間にやさしいのかもしれない。
頼むぞ団長、と皆が期待の目を向ける。
団長も頷いた。
「じ、実は昨日、ここから離れたところにある廃城で蜘蛛の化け物に襲われたのです。それはもう恐ろしい化け物でした。奴に追い掛け回されて、捕まり、ここに放り捨てられてしまったのです」
「あらま!蜘蛛の化け物ってあの娘かしら。それは貴方たちさぞ怖い思いをしたのではない?」
「ええ、まさに。本当に恐ろしかった。ところで貴方はかの怪鳥王、フェルミナ様ではないでしょうか」
「あら、わたしをご存じなの?」
「もちろん。その栄光は我ら下民の耳にも届いておりました」
「あらあらあら、私、有名人みたいねぇ。私は貴方たちのことは知らないけど」
「それは当然でございます。ところでフェルミナさま。お願いがあるのですが…」
「何かしら?」
「この蜘蛛の糸を解いて我々を助けてくださりませんか。もちろんお礼は如何様にも」
まるでどこか名家の生まれのような態度で話す団長を見てすごい、と周りが尊敬の目で彼を見た。もしかしたら、突破口が、
微かながら希望が見えたたような気がした。
「それは構わないのだけれども、ところで一つ聞かせてもらっていいかしら。その恰好、貴方たちはもしかして盗賊?」
「そ、それは」
団長が口ごもる。
団長が言葉に詰もり、アーグの心にも緊迫感が生じる。
むやみに自分たちが悪党だと伝えない方がいい。相手の思想もまだ何も分かってはいないのだ。
とは言えどう偽ったものか、とアーグも頭を悩ませた。
だが、早く答えた方がいいと思ったのか、魔獣だから問題がないと思ったのか団員の一人が横から口を出した。
「はい、俺たちは盗賊団、ランビリオンっす。な、団長」
団長とアーグは青ざめた。他の団員も何人かは迂闊な発言をした奴を恨みのこもった目で睨みつける。
「な、なんすか。おれなんかやっちゃいました?」
と口を滑らせた団員は口ごもるように言った。
フェルミナの目つきが何か変わった気がした。
「…そう。分かったわ。答えてくれてありがと。ところでその糸の話だったわね。心配ないわ。みたところあと一時間もすれば溶けるようになってるみたい。その蜘蛛の化け物はずいぶん優しかったみたいね」
団の皆が、団長さえもホッと一息ついた。どうやら琴線には触れなかったようだと。
だが、アーグだけはまたしても微妙な空気の違いを感じ取っていた。なにか、フェルミナが
俺たちが盗賊だと知ってから様子が変わった。まるで
ゴミを見るような目でみられているような。
「団長っ、逃げ」
「私、盗賊とか山賊とか海賊って大嫌いなの。正々堂々とも誇りともかけ離れた人種!
ただ、相手の尊厳や名誉を傷つけ、誰かの大事なものを奪って、笑って暮らしてる反吐が出る奴ら!!」
そう言うとフェルミナは足を後ろ大きく振りかぶると、俺たちを蹴り飛ばす。
体が宙に大きく舞った。今度こそ、死んだな。
ああ、俺たちが、盗賊でなかったら、何か結果が変わったのだろうか、
とアーグは空に吹き飛ばされながらそんなことを思った。
「心配しないで。命はとらないわ。貴方たちの言う蜘蛛の化け物、マクラが貴方たちを殺さなかった意味を考えたらね。それにしてもセレーネ。本当にあんな奴らでも殺さない意味なんてあるのかしら?」
フェルミナ様、お戯れはその辺でそろそろ行きましょう、と上空からフェルミナの配下らしき魔獣が告げる。
ええ、待たせたわね今行くわ、と答え、フェルミナは翼をはためかせて、目的地の古城へと飛び立った。
その様子をアーグは吹き飛ばされながら見ていた。
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次話は盗賊団の毛根が大ピンチです
(どうでもいい)
見てください。




